前(節)へ 次(節)へ

第1編 ≪人事行政≫

第2部 平成14年度業務状況

第3章 職員の給与

第2節 給与法等の実施


1  給与勧告に伴う給与法の改正
(1)  給与法の改正

給与勧告を実施するための給与法の改正は、前記の「公務員の給与改定に関する取扱い」(閣議決定)に基づき、「一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案」として平成14年10月18日に閣議決定され、同日、第155回国会に提出された。同法案は、衆議院総務委員会、参議院総務委員会における審議を経て、11月15日の参議院本会議で可決成立し、同月22日に公布された(法律第106号)。

なお、衆議院総務委員会の採決(11月7日)及び参議院総務委員会の採決(11月14日)に当たって、次のような附帯決議が採択された。

衆議院総務委員会附帯決議(11月7日)

1 今回の月例給与のマイナスが公務員の士気に与える影響、民間賃金・経済に与える影響等を重く受けとめ、政府は一刻も早くデフレ克服のための総合施策を実施すること。

2 今回の減額調整措置は、公務員給与の改定時期が民間と乖離している人事院勧告制度特有のあり方に起因していることに、政府は十分留意すること。

3 政府及び人事院は、年間における官民給与を均衡させる方法等を決定するに当たっては、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限の努力を払うこと。

4 政府は、人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることにかんがみ、公務員制度改革に当たっては、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限の努力を払うこと。

参議院総務委員会附帯決議(11月14日)

1 今回の月例給の引下げが公務員の士気や民間給与・経済に与える影響等を重く受けとめ、公務員の適正な処遇の確保に努めるとともに、デフレ克服のための積極的な総合施策を一刻も早く実施すること。

2 年間における官民給与を均衡させる方法等を決定するに当たっては、職員団体等の意見を十分聴取し、納得を得るよう最大限の努力をすること。

3 今回の給与の減額調整措置は、公務員給与の改定時期が民間と乖離している人事院勧告制度特有の在り方に起因していることから、民間等へ影響を及ぼさないよう十分留意すること。

4 公務員制度改革に当たっては、人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることにかんがみ、職員団体等の意見を十分聴取し、納得を得るよう最大限の努力をすること。

平成14年の給与法の改正は、俸給を引き下げる内容であり、法的安定性の尊重等の観点から同年4月に遡及して適用せず、本法公布後の同年12月1日に施行された。また、平成14年4月からの年間給与で実質的な官民均衡を図るため、同年12月に支給する期末手当及び期末特別手当の額を、同年4月1日から本法の施行日の前日(11月30日)までについて支給される給与に基づき調整する措置が講じられた。

(2)  規則の改正等

給与法等の改正に伴う関連規則は、改正法の公布に合わせて平成14年11月22日に公布、同年12月1日に施行された(期末手当等の改正については、平成15年4月1日施行)。

改正の内容の主要なものは、次のとおりである。

ア 初任給、昇格、昇給等の基準

俸給月額が改正されたことに伴い、規則9-8の特定号俸表を改正した。

イ 俸給の切替え

俸給月額が改正されたことに伴い、最高号俸を超える俸給月額を受ける職員の俸給の切替えに関し、新たに規則9-111(平成14年改正法附則第2項の規定による職務の級における最高の号俸を超える俸給月額等を受ける職員の俸給の切替え等)を制定した。

ウ 平成14年12月に支給する期末手当等の特例措置

改正給与法の附則に規定する平成14年12月に支給する期末手当及び期末特別手当に関する特例措置の実施に関し、人事交流等により再び職員となった者の引き続き在職した期間に含まれる期間など人事院規則で定めることとされている事項に関する所要の定め等を行うため、新たに規則9-112(平成14年12月に支給する期末手当及び期末特別手当に関する特例措置)を制定した。

エ 俸給の調整額

俸給表の改定に伴い、調整基本額表を改めるとともに、平成8年改正に係る経過措置を見直し、平成17年度をもって解消する新たな方式とするため、規則9-6等の一部を改正した。

オ 初任給調整手当

医師及び歯科医師等の初任給調整手当の最高支給限度額が引き下げられたことに伴い、同手当の職員区分別、支給期間区分別の手当月額について、それぞれ所要の改正を行うため、規則9-34の一部を改正した。

カ 特地勤務手当及び特地勤務手当に準ずる手当

平成14年4月1日から11月30日までの間に特地官署等への異動等があった職員について、その算定基礎である「特地官署等への異動日等に受けていた俸給及び扶養手当の月額」について、改正給与法による改正後の俸給及び扶養手当の月額とする旨の規定を設けるため、規則9-55の一部を改正した。

キ 期末手当、勤勉手当及び期末特別手当

給与法の改正により期末手当及び期末特別手当の年間支給回数が2回となるとともに、勤勉手当の支給割合が拡大されたことに伴い、期末手当等の算定基礎となる在職期間を6か月に統一するとともに、成績率の上限を引き上げる等のため、規則9-40の一部を改正した。

ク 非常勤職員の給与

委員、顧問、参与等の手当について、人事院の承認を得たものとみなされる額を1日につき「29,600円未満」に引き下げるとともに、特別の事情があるとして特例的に10万円まで支払うことができる場合の規定を新設するため、規則9-1の一部を改正した。

2  給与制度に関する個別承認の基準化

人事院は、公務員人事管理に関し、事前の承認・協議等の形で関与してきたものについて、各府省の主体的・機動的な人事管理を進める観点から、その基準化、事後チェック化を推進する方向で見直しを行った。給与制度においても、職員の職務の級、俸給月額の決定等に関し、人事院による承認等を要することとしていた事項について、これまでの実績等に基づき基準化を図ることとし、人事院規則等について所要の改正を行った(平成14年6月20日公布・施行)。主な改正内容は、次のとおりである。

(1)  指定職俸給表の適用及び同俸給表適用職員の号俸決定に関する基準の設定

指定職俸給表を適用する官職及び号俸決定についての基準を人事院指令により明示し、原則として各府省限りで号俸決定ができることとした(独立行政法人に移行することが予定されている国立大学、国立病院等の機関の官職を除く。)。

(2)  行政職俸給表(一)9級以上等の上位級への決定

本省の課長、室長、管区機関の部長等が格付けされている行政職俸給表(一)9級以上等の上位級に決定する場合には、人事院の個別の承認が必要とされていた(一部について包括承認を行っていた)ものを、人事院の定める基準に従って各府省が決定できるように改めた。その際、本省課長に就いた者及び本省室長・企画官に就いた者については、経験年数等にかかわらずそれぞれ行政職俸給表(一)10級及び9級に決定できることとした。

(3)  選考採用者を給与決定上試験採用者と同等とする場合の取扱い

選考採用者を給与決定上試験採用者と同等に取り扱う際には人事院の個別の承認が必要とされていた(一部について包括承認を行っていた)が、その者の知識経験、学歴免許等の資格に照らして、正規の試験の結果により採用された者に相当すると各府省が判断した場合には、職員の初任給決定等に際し初任給基準表等の正規の試験欄が適用できるよう改めた。

(4)  人事交流等による採用者等の初任給決定

職員であった者が人事交流等により地方公共団体等に異動し、その後再び職員となった場合及び地方公務員が人事交流等により職員となった場合の初任給決定についての基準を明示した。

(5)  期末手当等の一時差止処分を行う場合の協議の廃止

離職者の在職期間中の行為に係る刑事事件に関連して期末手当等の一時差止処分を行う場合、これまで人事院へ個別に協議することとしていたが、これを事前に人事院に通知することに改め、協議制を廃止した。

(6)  新幹線、高速道路等を利用する場合の通勤手当の特例の適用

新幹線や高速道路などを利用する場合にその特別料金等の2分の1を加算する特例を適用するに当たって、1)これまで個別承認で認めてきた「通常の交通機関等を利用する場合は運行時間の関係から始業まで又は終業から1時間超の待ち時間が生ずるが、新幹線等を利用した場合この待ち時間が30分以上短縮されるとき」について基準化するとともに、2)高速道路等の利用の場合の通勤困難の基準及び通勤時間短縮の基準について、これまで包括承認で認めてきたが、新幹線等を利用する場合と同様に基準化(利用しないと通勤時間が90分以上、利用すると通勤時間が30分以上短縮)することで、これらの承認を不要とした。

(7)  俸給の特別調整額の支給対象官職及び支給区分の設定

俸給の特別調整額の支給対象官職及び支給区分(支給割合)の臨時改定等に当たっては、これまで人事院へ個別に協議することとしていたが、同一組織の支給区分ごとの指定数の枠内であること等の条件の下に、各府省限りでの弾力的な運用が可能となる範囲を拡大した。

(8)  その他

(1)から(7)までのほか、任期付研究員の俸給月額決定、在級1年未満の昇格、昇給期間の短縮等について基準化を行うとともに、重要な事項等については人事院への事後報告を求めることとした。

3  その他の制度改正
(1)  俸給表の適用範囲

行政組織の改正、官職の新設等に伴い、行政職俸給表(二)、専門行政職俸給表、公安職俸給表(二)、教育職俸給表(一)、教育職俸給表(三)及び教育職俸給表(四)の適用範囲の変更等を行うため、規則9-2の一部を改正した。

(2)  降格後の最初の昇格の場合の俸給月額

新昇格制度の導入に伴う経過措置(降格後の最初の昇格の場合の俸給月額の決定に係る人事院の個別承認)が平成13年度をもって終了したことに伴い、降格後の最初の昇格の場合の俸給月額の決定の基準を定めるため、規則9-8の一部を改正した。

(3)  特殊勤務手当

手当の適用範囲の拡大(災害応急作業等手当、犯則取締等手当及び国際緊急援助等手当)及び行政組織の改正等に伴う整理(有害物取扱手当、自動車等検査作業手当、航空管制手当、教員特殊業務手当、犯則取締等手当及び特別巡視手当)を行うため、規則9-30の一部を改正した。

4  級別定数の改定等
(1)  級別定数の改定

級別定数は、級別標準職務を基準として個々の職務をその複雑、困難及び責任の度に応じて級別に分類し、それぞれの俸給表の職務の級ごとの数を、組織別、会計別及び職名別に定めたものである。各職員の職務の級の決定は、級別定数の範囲内で、ポストの格付けに応じて行われることとされている。級別定数制度は、職務評価の統一性、客観性を確保し、各府省における適正・妥当な俸給決定が行えるように設けられているものである。また、給与勧告の前提となる官民の給与比較において、官民の対応する職務段階の職責の同等性を担保しており、官民比較を行う上で不可欠の機能を果たしている。

級別定数の設定及び改定は、同定数が職員の昇格枠として職員の重要な勤務条件であることから、労働基本権制約の代償機関である人事院が、労使交渉に代わるものとしてその設定及び改定を行っている。具体的には、毎年、行政需要の増大及び行政の複雑・多様化等に伴って個々の職務の価値が変化することに対処するとともに、各府省における適正かつ安定した人事運用を確保するため、組織の新設又は改廃等職務内容の変化や、各府省における職員構成等を踏まえ、所要の見直しを行っている。

平成14年度においても、職務の重要性が増大し、職務負担の加重化傾向の著しい官職を中心として所要の改定を行った。その際、世代間に大きな不公平性が生じないよう配慮するとともに、職員の処遇について、各府省ごとの事情を十分考慮しつつ全体として著しい不均衡が生じないよう配慮した。また、級別定数の改定に当たって、スタッフ職の充実、早期退職慣行の是正、技術系職員の登用、II種・III種等採用職員の登用など、人事管理上の諸課題に円滑に対応するための条件整備を図っていくことにも意を用いた。

(2)  職務の級の決定等の審査

採用、昇格、昇給等の際の規則9-8に基づく職務の級及び俸給月額の決定等について、行政職俸給表(一)9級以上等の上位級への決定、中途採用者の初任給決定等に係る各府省からの個別の協議に応じ、審査を行った。なお、人事院の個別承認が必要とされている事項のうち、実績に基づき基準化できるものに関しては、これまでも包括承認の発出など基準の設定を進めてきているところであるが、平成14年度においては、上位級の決定、中途採用者の初任給決定等に関し、大幅な基準化を実施した。

5  特別昇給の実施
(1)  特別昇給制度における成績主義の一層の推進

人事院勧告時の報告において、公務員給与を取り巻く厳しい諸情勢の下、公務の活力を維持するためには、実績を上げた職員に対して各府省においてそれに応じた処遇を実現することが重要であり、そのためには特別昇給制度をその本旨に則して一層活用することが必要である旨言及するとともに、平成14年8月に特別昇給制度の運用についての通知を発出する等して、成績主義に基づいたよりめりはりのある特別昇給制度の運用を求めた。

(2)  表彰等による特別昇給

職員の中には、長年にわたり極めて困難な勤務条件の下で献身的に職務に従事している者や、勤務成績の向上、能率の増進、発明考案等により職務上特に功績のある者が少なくない。各府省においては、これらの職員に対してその労に報いるとともに、職員の士気を高めるため、積極的に表彰ないし顕彰を実施し、給与上も人事院の定める基準により特別昇給を行っている。平成14年度は、警察庁及び国土交通省において実施された6件の表彰について、特別昇給が行われた。表彰による特別昇給を行った職員について例示すれば、次のとおりである。

6  給与実務の指導

人事院は、給与事務の適正な運用を確保するため、各府省の給与実務担当者を対象とした給与実務全般についての研修会を本院及び各地方事務局(所)において45回開催するほか、給与実務に必要な資料を作成、配布するなど、円滑な実務処理を行う上で必要な事項の周知に努めた。


前(節)へ 次(節)へ
© National Personnel Authority