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第1編 ≪人事行政≫
第2部 平成14年度業務状況
第11章 公平審査
第1節 不利益処分についての不服申立て
不利益処分についての審査制度は、職員からその意に反して降給、降任、休職、免職その他著しく不利益な処分又は懲戒処分を受けたとして審査請求があった場合に、人事院が、事案ごとに公平委員会を設置して審理を行わせ、公平委員会が作成した調書に基づき、処分を承認し、修正し、あるいは取り消す判定を行うものである。
人事院は、処分を修正し、又は取り消した場合には、その処分によって生じた職員の不利益を回復するための処置を自ら行い、又は処分者に対し必要な処置を行うように指示することとされている。なお、人事院の判定は、行政機関における最終のものであって、人事院によってのみ審査される。
不利益処分の審査は、規則13-1に定められた手続に従って行われ、事案の審査に当たっては、集中審理方式等により審理を効率的に実施するなど事案の早期処理に努めている。
平成14年度は、新たに受け付けた77件と前年度から繰り越した101件(注参照)の計178件が係属したが、その処理状況は、判定を行ったもの76件(処分承認75件、処分修正1件、処分取消し0件)、取下げ・却下等36件であり、平成15年度に繰り越したものは66件である。(資料11-1)
判定を行った76件の原処分別件数は、懲戒処分53件(免職6件、停職4件、減給17件、戒告26件)、分限処分3件(免職処分3件)、転任処分13件、配置換処分2件、辞職承認処分3件、併任処分1件、降任処分1件であった。
(注) このほかに、職員団体等の違法な活動を理由とする大量処分に対する審査請求などで請求者側の事情によりその審理開始が困難な事案等5万2,000件余が係属しており、これらの事案については請求者の意向を確認して審査請求の取下げの処理手続を進めた。
平成14年度に発出した判定及び主な判定の要旨は、次のとおりである。(( )内の数字は、判定年月日である。)(表11-1)
表11-1 平成14年度不利益処分審査請求事案判定一覧

(1) 処分を承認したもの
ア 免職
-
(ア) 指令13-41(横領)(14.9.27)
- 請求者が顧客から料金別納郵便料金として請求者名義の郵便貯金総合口座に送金された469万9,860円のうち、合計40万円を払戻し、受入計理しないで横領した事実を認め、処分を承認した。
(イ) 指令13-45(欠勤、職務命令不服従等)(14.10.11)
- 請求者が部内優秀職員及び永年勤続職員表彰式会場内に強引に入ろうとして、制止する上司等にせんてい用のはさみを振り回した上、職員から暴行を受けたと虚偽の110番通報を行い、また、上司の度重なる出勤命令に従わず長期間にわたり欠勤し、さらに、上司の命令に従わずに違法な貸室賃貸行為を継続した事実を認め、処分を承認した。
(ウ) 指令13-4(電車内でのわいせつ行為)(15.1.17)
- 請求者が電車内において女性乗客に対し、わいせつ行為を執ように行った事実を認め、処分を承認した。
(エ) 指令13-8(セクシュアル・ハラスメント)(15.1.24)
- 大学教授である請求者が、指導教官等としての立場を利用し、指導している大学生に対し、体を触るなどのセクシュアル・ハラスメントを繰り返し行い、また、交際関係等の私事に干渉した事実を認め、処分を承認した。
(オ) 指令13-13(郵便物の隠匿)(15.2.21)
- 請求者が郵便外務事務に従事中、普通通常郵便物合計128通を自分が使用しているリュックサック及びロッカーの中に隠匿した事実を認め、処分を承認した。
(カ) 指令13-28(横領)(15.3.28)
- 請求者が貯金外務事務に従事中、自己の取扱いに係る過剰金1万円を不法に領得した事実を認め、処分を承認した。
-
(ア) 指令13-17(業務不適正処理)(14.4.5)
- 郵便局職員である請求者は、死亡した弟に子がいることを知りながら、正当な相続人の確認をせず、弟名義の通常郵便貯金を勝手に解約して払戻金を受領したほか、弟には妻子はいない旨の念書を提出して簡易生命保険の死亡保険金を受領した事実を認め、懲戒停職1月間の処分を承認した。
(イ) 指令13-26(部下に対するみだらな行為)(14.5.31)
- 請求者が出張先で用務終了後、同行した部下職員と飲食し、部下職員の判断能力が低下した中で、明確な合意のないままホテルに入り、みだらな行為を行った事実を認め、懲戒停職1月間の処分を承認した。
(ウ)指令13-64(セクシュアル・ハラスメント)(14.12.6)
- 大学教授である請求者が、指導している大学院生Aに対し、チークダンスを強要し、また、卒論指導を委託された他大学生Bに対し、飲み会の折りにいつも隣に座らせて肩を組むなどの学生の意に反したセクシュアル・ハラスメントを繰り返し行った事実を認め、懲戒停職3月間の処分を承認した。
(エ) 指令13-14(セクシュアル・ハラスメント)(15.2.21)
- 臨床検査技師長である請求者が、部下職員である臨床検査技師(賃金職員)3名に対して、繰り返しセクシュアル・ハラスメントを行った事実を認め、懲戒停職1月間の処分を承認した。
-
(ア) 指令13-16(上司に対する暴言等)(14.4.5)
- 看護婦長である請求者が、再三にわたり上司の命令等に従わず、上司に暴言を浴びせ、また、狭心症の疑いのある患者に対し、狭心症発作を誘発しかねない看護婦長にあるまじき横柄で乱暴な態度をとったことなどの事実を認め、懲戒減給2月間の処分を承認した。
(イ) 指令13-20(職務命令不服従等)(14.4.26)
- 請求者が5日間無断で欠勤をし、また、各種研修の受講命令、パソコンによる入力の業務命令、検認のための共済組合証の提出命令、健康診断の受診命令に従わなかった事実を認め、懲戒減給1月間の処分を承認した。
(ウ) 指令13-50(守秘義務違反)(14.10.11)
- 請求者が人事院における公開口頭審理の会場で、職務上知り得た顧客の秘匿すべき情報を記載した文書の写しを傍聴者に配布した事実を認め、懲戒減給1月間の処分を承認した。
(エ) 指令13-55(上司に対する暴行)(14.11.8)
- 請求者が上司に対し暴行を加えた事実を認め、懲戒減給2月間の処分を承認した。
(オ) 指令13-56(注意義務違反)(14.11.8)
- 大学教授であるA及びB各請求者が、5年間にわたり入学者選抜試験において教授会構成員として必要な注意義務を怠り、教授会において誤った合否判定を行ったこと、加えて、その入学者選抜試験における教科・科目及び配点の企画・立案について担当する入学者選抜方法検討委員会の副委員長又は委員として果たすべき義務を怠った責任を認め、副委員長であったA請求者の懲戒減給2月間、委員であったB請求者の懲戒減給1月間の各処分を承認した。
(カ) 指令13-1(業務不適正処理)(15.1.17)
- 精神保健指定医である請求者が、精神保健福祉法の規定に違反する患者の隔離や拘束の包括指示を重ねて行ったことなどの事実を認め、懲戒減給2月間の処分を承認した。
(キ) 指令13-21(器物損壊)(15.3.19)
- 請求者が職員駐車場に駐車してあった職員の自家用車に傷を付けるなど行った事実を認め、懲戒減給2月間の処分を承認した。また、請求者の降任処分について、請求者は意に反して作成した同意書に基づくものであり、違法、不当である旨主張したが、本件処分は請求者が同意していたものと認め、処分を承認した。
-
(ア) 指令13-18(欠勤)(14.4.26)
- 請求者が請求した年次有給休暇に対しては、時季変更権が行使され同休暇が付与されなかったにもかかわらず、勤務を欠いた事実を認め、処分を承認した。
(イ) 指令13-22(セクシュアル・ハラスメント)(14.4.26)
- 大学講師である請求者が、指導している大学院生に対し、宿泊先ホテルのエレベーター内で、抱き着くなどの行為を行い、また、性的関心を露骨に表現したEメールを送付し、不快感を与えるなどのセクシュアル・ハラスメントを行った事実を認め、処分を承認した。
(ウ) 指令13-29(業務不適正処理)(14.5.31)
- 請求者が、上司である係長のIDカードを保管箱から勝手に持ち出し、3日間返還しなかった事実を認め、処分を承認した。
(エ) 指令13-49(就労命令不服従)(14.10.11)
- 請求者が勤務時間中、管理者に対し執ように抗議し、その再三にわたる就労命令に従わず、勤務を欠いた事実を認め、処分を承認した。
(オ) 指令13-62(上司に対する暴言)(14.12.6)
- 請求者が正しい胸章の着用について注意、指導した副局長らに対し暴言を浴びせた事実を認め、処分を承認した。
(カ) 指令13-6(集団抗議等)(15.1.17)
- A請求者が職員の中心となって集団抗議を行い、また、B請求者が集団抗議に参加し、管理者に対し暴言を浴びせ、いずれも職場秩序を乱した事実を認め、各処分を承認した。
(キ) 指令13-27(通勤手当の不正受給)(15.3.26)
- 請求者が公務員住宅から勤務官署へ通勤する旨の通勤届を提出していながら、自宅から通勤し、もって通勤手当差額合計38万9,200円を不正に受給した事実を認め、処分を承認した。
指令13-2(不穏当言辞等)(15.1.17) 請求者は、上司に対し不穏当な言葉を発し、粗暴な行為を行っており、相応の処分を受けるべきであるが、事実経過を見ると請求者に対する上司の対応にも問題があったことが認められ、また、請求者が率直に反省していること、過去に懲戒処分等を受けていないことを併せ考慮すれば、処分は重きに過ぎるとし、懲戒減給1月間の処分を懲戒戒告の処分に修正した。
2 分限処分関係免職
(1) 指令13-21(欠勤)(14.4.26)
請求者は、再三にわたる文書又は請求者の自宅を訪問した上司等の口頭による出勤命令にもかかわらず、平成11年11月2日以降の約13か月間に、合計156日と169時間7分にわたり欠勤を繰り返したものであるから、職員としての適格性を欠いていると認め、処分を承認した。
(2) 指令13-36(欠勤等)(14.8.2)請求者は、上司等から再三注意を受けたにもかかわらず、終日の欠勤、遅刻、職場離脱を繰り返し、長期にわたり欠勤を繰り返して職務に従事せず、勤務実績が著しく不良であり、また、上司等から勤務時間の厳守と職務専念について厳重注意を受けたがこれに従わなかったこと及び医師への受診命令に従わなかったことは、将来にわたって容易に矯正することができない請求者の性向によるものであり、職員としての適格性を欠いていると認め、処分を承認した。
(3) 指令13-63(勤務実績不良)(14.12.6)請求者は、厳重注意と懲戒減給処分を受けた後も、非違行為を繰り返して、全く反省がみられず、勤務実績は極めて悪く、また、上司、同僚等に対する行為、態度も著しく不良であり、職員としての適格性を明らかに欠いていると認め、処分を承認した。
3 思料不利益処分関係(1) 転任
指令13-42(他の郵便局への転任)(14.9.27)
転任は、請求者の業務の経験、通勤事情等を考慮し、官職の欠員を補充するために行われたものであり、請求者を退職に追い込む目的で行われたとは認められず、新たな知識、情報を習得しなければならないことは職員として当然の責務であり、それにより一時的に精神的負担が生じたとしても違法、不当とすることはできず、また請求者が体調を崩した事実も認められないなどとして、処分を承認した。
(2) 配置換指令13-17(大学内の他部門への配置換)(15.3.7)
配置換は、大学助手である請求者が所属する講座の教授に強迫的、強要的な言辞を繰り返し行い辞職を迫るなどして同講座の運営と人事に混乱をもたらし、教育研究が著しく阻害されたことから、請求者を他に配置換して学部の教育、研究環境の秩序を回復することとし、本人の同意を得て行ったものと認められるとして、処分を承認した。
(3) 辞職承認指令13-28(辞職強要)(14.5.31)
請求者の辞職承認処分について、請求者は、多重債務者であることで上司から非難を受けたため、気弱になっていたところに、以前に書いた辞職願と辞職願を書くための用紙を突きつけられたことから、上司からの命令であると受け止めて作成、提出した辞職願に基づくものである旨主張したが、請求者は、上司と今後のことを話し合う際中に退職の意思を伝えたため、上司が辞職願を書くための用紙等を渡したことに対し、拒否することなく辞職願を作成し、上司に提出したものであり、辞職願は、請求者が自らの意思で作成、提出したものと認められることから、処分を承認した。
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