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第1編 ≪人事行政≫

第2部 平成14年度業務状況

第11章 公平審査

第3節 災害補償の実施に関する審査の申立て及び福祉事業の運営に関する措置の申立て


災害補償の審査制度は、実施機関の行った公務上の災害又は通勤による災害の認定、障害等級の決定、治癒の認定その他補償の実施について不服のある職員等から審査の申立てがあった場合に、また、福祉事業の審査制度は、福祉事業の運営について不服のある者から措置の申立てがあった場合に、それぞれ人事院が事案を災害補償審査委員会の審理に付した上で判定を行うものである。

災害補償等の審査は、規則13-3に定められた手続に従って行われ、事案の審査に当たっては、申立内容等を十分整理した上で事実調査を行い、事案の早期処理に努めている。

平成14年度は、新たに受け付けた28件(うち福祉事業の措置の申立1件)と前年度から繰り越した30件の計58件が係属したが、その処理状況は、判定を行ったもの18件で、40件を平成15年度に繰り越した。(資料11-311-4)

なお、取下げ・却下したものはなく、また、福祉事業の運営に関する措置の申立てについては、昭和51年度に本制度が実施されて以来、初めてなされた。

判定の内訳は、申立人の申立てが認められたもの5件、認められなかったもの13件となっている。

平成14年度に発出した判定及び主な判定の要旨は、次のとおりである。(( )内の数字は、判定年月日である。)(表11-3)

表11-3 平成14年度災害補償審査申立事案判定一覧


1  申立てが認められたもの
(1)  指令13-25(右第3指挫創に係る障害等級の決定)(14.5.17)

申立人から、公務災害の認定を受けた右第3指挫創の治癒後も、右手中指が全く曲げ伸ばしできず、痛み、しびれがあるので、これを等級外とした決定には納得できないとの申立てがあった。これについて、右第3指には、1)先端尺側に皮膚血相による小さなはん痕、2)末関節の運動機能が他動運動で47%、自動運動で83%の制限、3)同部位に痛み、しびれの神経症状が認められる。このうち、1)及び2)については補償法別表に定める障害等級には該当しないとし、3)については、骨に異常はないが、傷の程度がかなりひどかったため、指先の神経が損傷し、創面の治癒後も指先が物に触れるとビリビリする痛み、しびれの症状が発生しているものと認められることから、補償法別表に定める第14級第10号「局部に神経症状を残すもの」の障害に該当するので、補償法第13条により、第14級として取り扱うべきであると判断し、申立てを容認した。

(2)  指令13-30(頸椎椎間板ヘルニアに係る公務上の認定)(14.5.31)

申立人から、公務上の災害であるバイク転倒事故の数か月後に診断された頸椎椎間板ヘルニアは、当初の事故に起因するものであり、これについても公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てがあった。これについて、申立人には被災前から頸椎に骨棘形成等の変形性変化が認められており、事故前には頸部から左上肢にかけて何ら症状がなかったこと、被災から1か月程度で頸部から左肩、左上肢にかけて疼痛、脱力感の症状が現れていることなどを併せ考慮すると、申立人が元々有していた頸椎の退行変性した脆弱な部位への、本件事故による急激な負荷が有力な原因となって頸椎椎間板ヘルニアを発症させたと判断し、申立てを容認した。

(3)  指令13-67(過重な業務等が原因で反応性うつ病を発症し、希死念慮による自殺に係る公務上の認定)(14.12.17)

自宅近くのマンションから飛び降り死亡した職員の父から、職場の人間関係が複雑で難しかったこと、業務が過重になったこと、上司からいじめ等を受けたこと、人事係に異動して、期日が限られた緊急の業務に従事したことなどから、精神的かつ肉体的に過重な業務と人間関係等のストレスが原因となって反応性うつ病を発症し、その結果自殺するに至ったものであるから、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てがあった。これについて、本件災害は、職場での面倒なことや仕事上のトラブル等から、職場での疲れ、イライラ、自信喪失、焦燥感などに睡眠障害が重なり、反応性うつ病に罹患したものと推認される。他方、当該疾病と業務との関係をみると、電話相談係では、基礎年金番号制の導入に伴い相談件数が増加し、質的、量的に過重であったことが認められ、さらに、人間関係の面でも精神的、肉体的に負担が掛かったことが認められる。また、人事係異動内示後、経験のない人事給与関係業務を引き継ぎを兼ねて勤務時間外に集中的に行い、異動後は、期限の迫った昇給・昇格調書等の作成業務に忙殺され、その結果、超過勤務等は、被災前1週間に54時間、被災前1か月間に125時間に及んでいる。以上のような本人を取り巻く職場の状況や著しい業務の繁忙と超過勤務の実態等を併せ考慮すると、業務上の諸事情が重なり、それが原因となって本件反応性うつ病を発症し、希死念慮を起こして自殺したものと判断するのが相当であり、公務と相当因果関係をもって発生したものと認められるとし申立てを容認した。

2  申立てが認められなかったもの
(1)  指令13-35(巡視船から行方不明になった乗組員の溺死に係る公務上の認定)(14.6.28)

哨戒行動で錨泊中の巡視船から行方不明となり、捜索の結果、海上で溺死状態で発見された元職員の妻から、本件災害は、帰港前夜のため他の乗組員と飲酒したものであり、服務規律に反することはしておらず、飲酒の程度も軽く、酩酊状態にはなかったことから、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てがあった。これについて、この災害は、被災者本人の血中アルコール濃度の鑑定結果等からすると、飲酒の結果、船艇職員に要求される注意力及び運動機能を相当程度減退させていたものと推認され、緊急時の対応業務も適正に遂行できる態勢にはなかったと認められること、また、災害発生時に巡視船は錨泊しており、波による動揺はほとんどない状態であったこと等、その発生の経過を考えると、本人の過度の飲酒という恣意的行為によるものとみるのが相当であると判断し、申立てを棄却した。

(2)  指令13-39(脳梗塞、左片麻痺に係る公務上の認定)(14.8.2)

申立人から、脳梗塞、左不全麻痺(その後、症状が進行して左片麻痺)と診断された本件疾病は、業務上の負担が増加し、疲労が蓄積したため発症したものであるから、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てがあった。これについて、申立人は、採用以前から高血圧症と診断されて降圧剤を服用しており、採用後の定期健康診断では高脂血症とも判定されていたことから、本件災害発生前から脳梗塞を発症し易い相当高度の素因を有していたと認められること、申立人の従事した業務内容は、通常の看護業務で本人にとって慣れた仕事であり、通常の日常の業務に比較して特に質的に若しくは量的に過重な業務に従事したものとは認められないことから判断し、申立てを棄却した。

(3)  指令13-44(縊死に係る公務上の認定)(14.9.27)

採用後1年未満で死亡した職員の父から、本人は公務が原因となって疾病にかかり、その疾病に起因して縊死したものであるから、この災害は、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てがあった。これについて、本人は、死亡前にうつ状態を発症していたものの、発症前の業務は、当該疾病を発症させる程の過重性は認められず、何らかの環境の変化等により当該疾病特有の希死念慮が起こり、発作的に縊死したとみるのが医学上相当であるから、本件災害は、公務と相当因果関係をもって発生したものと認められないと判断し、申立てを棄却した。

(4)  指令13-58(腰椎捻挫に係る公務上の認定)(14.11.15)

申立人から、腰椎捻挫と診断された本件疾病は、郵便物の入ったパレットケースを区分棚へ移動させようとして持ち上げた際に発症したものであるから、公務上の災害と認定されるべきであるとの申立てがあった。これについて、本件災害は、約9kgのパレットケースを体勢を整えて持ち上げたもので、その動作は通常のものであり、腰部に急激な力が作用して突発的に発症したとみることはできず、また、申立人が腰椎捻挫を発症したのは発着速達業務に従事するようになってから約2か月後のことであり、その作業姿勢は終始中腰であったとまでは認められず、業務に起因して発症したものとは認められないと判断して、申立を棄却した。


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