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第1編 ≪人事行政≫
第2部 平成14年度業務状況
第13章 人事院総裁賞及び国民各層との意見交換等
第2節 国民各層との意見交換等
人事行政を適切に運営していくためには、国民各層から公務に対する率直な意見を聴取するとともに、公務に対する理解を得ることが重要である。このため人事院は、給与や人材の確保・育成をはじめとした人事行政全般の諸問題について、経済界、言論界、学界、労働界等の各界有識者等と幅広く意見交換を行っているほか、国民から広く定期的に意見等を聴取するため、国家公務員モニター500人を委嘱している。
また、公務の職場を実際に紹介することを目的として、報道機関の論説委員等や国民の方々を対象とした職場訪問を実施している。
これらの機会に出された多くの意見は、人事行政の方針の策定や運営面に活かされている。
1 中央における公務員問題懇話会昭和59年度以降、中央(東京都)において公務員問題懇話会を毎年開催している。平成14年度は、人事行政全般の課題のほかに、中央及び各地方における共通のテーマとして特に「これからの公務に必要とされる人材」を取上げ、7月12日に、各界有識者7名を招き、人事院総裁、国家公務員倫理審査会会長及び事務総長と意見交換を行った。(表13-2)
表13-2 公務員問題懇話会出席者

ここでは、次のような意見が出された。
- 〇 公務員には、多面的に物事を見ることのできる能力が必要である。また、諸外国政府のエリートとの本格的な交渉にも耐えられる、事柄の本質を歴史的に理解できる力や、自分とは異なる立場や文化を理解できる力が求められる。
〇 公務内の育成過程で組織の文化に染まり、個性が失われる傾向が見られるが、これを正すには、外からチェックを受けるという緊張感や透明性の確保が不可欠である。また、適切な育成により個性を回復することは可能である。
〇 一つの共同体が同種の人間のグループで形成される傾向があるが、公務にも例えばボランティア公務員がいても良く、多様な人材を集めた集団となるべきである。
〇 対外的な説明やロビーイングにたけた者のみが評価されるのではなく、法律や経済等のスペシャリストもそれぞれに評価されるような仕組みに変えていく必要がある。
〇 年功から能力にウエイトをおいた給与、更には仕事の内容と生産性を評価する給与体系に切り替えるべきである。
〇 昇進において逆転人事を当たり前にすれば、勧奨退職の問題は根本的に解消する。
公務員問題懇話会(東京)

人事行政の新たな展開のためには、より幅広く意見を聴取するとともに、地方の実情を的確に把握する必要があることから、昭和62年度以降、各地方都市においても懇話会を開催している。平成14年度は、6月に函館市、岐阜市及び広島市の3都市において、それぞれの地域の各界有識者と人事官をはじめとする人事院幹部との意見交換を行った。(表13-2)
ここでは、次のような意見が出された。
- 〇 使命感・責任感、公正性、倫理観といった公務員として備えるべき要素に加えて、先見性、柔軟性、サービス精神等を併せ持った付加価値の高い公務員が求められている。
〇 一回限りの採用試験の結果によってその後の昇進コースが決まる現行のシステムには疑問がある。I種・II種試験の統合や一括採用を実施し、その後、能力・実績に応じて昇進させるようにしてはどうか。
〇 適切な評価をするためには、透明でかつ納得性のある評価システムが必要となる。また、評価結果に不満がある場合の苦情処理の仕組みや評価を行う者に対する評価も求められよう。
〇 評価に当たっては、新しい試みにリスクミニマムを図るのは当然だが、リスクゼロのところに創造は生まれない。創造的なことを目指した場合の失敗には再挑戦のチャンスを与えることが必要である。
〇 能力・条件が同一なら女性を積極的に採用・育成し、責任あるポストへの登用の拡大も必要である。女性管理者が就く分野を拡大する画期的な人事を望む。
〇 キャリアの早期退職による天下りについては不透明なところが多く、透明で公正な再就職のルールを確立すべきである。
〇 民間企業では、同期入社でも、一人は部長になっても、一人は部次長のまま定年まで勤めるケースも珍しくない。公務では年を経るごとに同期が減っていくが、この慣行は改革すべきである。
極めて厳しい経済・雇用情勢等を踏まえ、平成14年度は、全国35都市において中小企業経営者及び報道機関の論説委員等を対象に、公務員給与の問題を中心として意見交換を行った。
ここで出された意見の主なものは次のとおりである。
- 〇 民間準拠による現行の給与決定システムは適切なものと考える。
〇 公務員給与は、職責や働きぶりに見合った水準であれば納得できる。
〇 各地域に勤務する公務員の給与は、その地域の民間給与、特に中小の企業と比べると高いと感じる。
〇 評価をきちんとして、公務においても能力・実績主義を導入することは必要。
人事院は、公務及び公務員の人事管理全般について、国民から広く定期的に意見・提言等を聴取し、今後の人事行政の展開の参考とするため、「国家公務員に関するモニター」500人を募集し、アンケート調査を実施している。
平成14年度においては、主に国家公務員制度、給与勧告、公務員倫理などについてアンケート調査を実施した。給与勧告制度の役割や官民比較方法などに関する調査結果は給与勧告検討の際の参考にするなど、モニターから寄せられた意見等は人事行政を展開するに当たっての検討の参考としている。
また、国家公務員の勤務実態について、広く国民各層の理解を得るため、報道機関の論説委員等や国民の方々を対象に、平成14年度は植物防疫・気象業務の官署等への職場訪問を実施した。
5 人事管理官会議人事院では、国家公務員法に基づき各府省に置かれる人事管理官で構成している人事管理官会議などを通じて、各府省との緊密な連絡に努め、業務の円滑な運営を図っている。平成15年3月5日には、人事管理官会議の総会を開催し、人事行政の重要事項について、人事院としての基本的な考え方などを示すとともに、人事行政が抱える個別の課題等について意見交換を行った。
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