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第2編 ≪国家公務員倫理審査会の業務≫
第2部 平成14年度業務状況
第3節 倫理法等に違反する疑いがある行為に係る調査及び懲戒
2 倫理法等に違反する疑いがある行為に係る調査及び懲戒の状況
(1) 調査及び懲戒処分等の件数
平成14年度に倫理法等に違反する疑いのある行為に関し新たに開始された調査が18件、前年度から継続して行われた調査が2件であった。これらのうち、11件について倫理法等に違反する行為があることを理由として懲戒処分が行われ、8件について各府省の内規による訓告、厳重注意等の措置が講じられた(1件の事案の中で複数の職員が違反行為を行い、懲戒処分、内規による措置の両方が行われているもの2件については重複計上している。)。また、3件について調査が平成15年度に継続された。
これらを前年度と比べると、新たに開始された調査件数は7件、懲戒処分件数は7件、訓告、厳重注意等の措置件数は2件それぞれ増加している。
なお、倫理法等に違反する行為で懲戒に付せられるべき事件が刑事裁判所に係属している間においても、任命権者は、倫理審査会の承認を経て、適宜に懲戒手続を進めることができるとされている。また、平成14年4月からは職員が公判廷における供述等により、懲戒処分の対象とする事実で公訴事実に該当するものが存すると認めているときは、倫理審査会の承認があったものとして懲戒手続を進めることができるとされている。平成14年度においては、この承認手続を経て3件について懲戒処分が行われている。
(2) 倫理法等違反事案の概要倫理法等に違反する行為があることを理由として懲戒処分が行われた事案の概要及び処分内容は次のとおりである。
-
ア 利害関係者以外の事業者等から通常一般の社交の程度を超えて財産上の利益の供与を受け、及び利害関係者から物品の贈与を受けた事案(倫理規程第5条第1項及び第3条第1項第1号違反)
- 免職
国土交通省の地方機関の長であった職員は、工事発注先から工事の一部を請け負っていた事業者から、有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び将来も同様の取り計らいを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金35万円の供与を受けたもの。また、別の工事発注先である事業者から、上記と同じ趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、3回にわたりノート型パソコンなど9点(約63万円相当)を受領したもの(なお、職員は収賄容疑で逮捕されている。)。
イ 利害関係者から飲食の提供を受け、及び利害関係者と夜間に倫理監督官の許可を得ることなく共に飲食をした事案(倫理規程第3条第1項第6号及び第7号違反)
- 減給1月(俸給の月額の10分の1)、戒告
国税庁の地方機関の職員であった6人は、過去に同じ機関に勤務した関係があり、現在立入検査の相手方の顧問である者から約7,000円相当の飲食の提供を受けたもの(うち、1人については、利害関係が認められなかった。)。また、上記6人のうち5人が、上記顧問と共に夜間、倫理監督官の許可を得ないまま、自己の費用及び当該顧問の費用を負担して飲食をしたもの。
6人のうち、2人については、国公法第98条第1項及び第99条違反と併せてそれぞれ懲戒減給処分及び懲戒戒告処分が行われた(他の4人については、内規に基づく矯正措置が行われた。)。
ウ 利害関係者から無償で役務の提供を受け、及び飲食の提供を受けた事案(倫理規程第3条第1項第4号及び第6号違反)
- 減給1月(俸給の月額の10分の1)、戒告
内閣府の地方機関の長であった職員は、検査出張の際の移動等に使用する車両使用代を計8回(約37,000円相当)並びに昼食代及び検査終了後の夕食懇親会を計15回(約25,000円相当)許認可等の相手方などである3事業者に負担させたもの。また、同行した部下職員である2人も同様にそれぞれ車両使用代を5回(約23,000円相当)及び3回(約14,000円相当)並びに昼食代及び夕食懇親会を9回(約13,000円相当)及び6回(約12,000円相当)上記3事業者に負担させたもの。
長であった職員については、監督責任と併せて懲戒戒告処分が行われ、部下職員のうち1人については、国公法第98条第1項及び第99条違反と併せて懲戒減給処分が行われた(他の1人については、内規に基づく矯正措置が行われた。)。
エ 利害関係者から物品の贈与を受けた事案(倫理規程第3条第1項第1号違反)
- 戒告
某府省の職員は、以前勤務していた地方機関において立入検査の相手方であった者から、4回にわたり合計約2万円相当の中元、歳暮を受領したもの。懲戒処分は、国公法第99条違反と併せて行われた。
オ 利害関係者から金銭の贈与を受け、及び飲食の提供を受けた事案(倫理規程第3条第1項第1号及び第6号違反)
- 減給1月(俸給の月額の10分の1)
某府省の地方機関の長である職員は、立入検査の相手方である団体の総会の懇親会(立食形式)終了後、二次会に参加し、同団体から約3,000円相当の飲食の提供を受けたもの。また、上記二次会後に宿泊したホテルの代金(約7,000円)を同団体に負担させたもの。さらに、後日、同職員が入院した際に、同団体から見舞金1万円を受領したもの。
カ 利害関係者から物品の贈与を受けた事案(倫理規程第3条第1項第1号違反)
- 戒告
某府省の地方機関の職員は、営繕契約の相手方である事業者3社から4回にわたりそれぞれ約11,000円相当、約5,000円相当、約12,000円相当のビール券を受領したもの。
キ 利害関係者から金銭の貸付けを受けた事案(倫理規程第3条第1項第2号違反)
- 停職1月
某府省の地方機関の職員は、工事契約の相手方である事業者より現金20万円の貸付けを受け、また、別の事業者より現金10万円の貸付けを受けたもの。懲戒処分は、国公法第99条及び第101条第1項違反と併せて行われた。
ク 利害関係者から金銭及び物品の贈与を受けた事案(倫理規程第3条第1項第1号違反)
- 免職
法務省の地方機関の職員は、行政指導の相手方から自己の職務上不正な行為をしたことに対する謝礼及び将来も同様に職務上不正な取り計らいをしてもらいたいとの趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金15万円、収入印紙約42,000円相当、野球観戦券3枚(約18,000円相当)を受領したもの。懲戒処分は、国公法第98条第1項、第99条及び第100条第1項違反と併せて行われた(なお、職員は収賄容疑で逮捕されている。)。
ケ 利害関係者以外の事業者等から通常一般の社交の程度を超えて財産上の利益の供与を受けた事案(倫理規程第5条第1項違反)
- 免職
資源エネルギー庁の職員は、原子力発電に関連する事業に携わる事業者から有利かつ便宜な取り計らいを受けたことなどに対する謝礼及び将来も同様の取り計らいを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、19回にわたり本人の普通預金口座に約245万円の振込入金を受け、また、150回にわたり、自己の金融会社への弁済のため、消費者金融会社等名義の普通預金口座等に約206万円の振込入金を受けたもの(なお、職員は収賄容疑で逮捕されている。)。
コ 利害関係者から飲食の提供を受けた事案(倫理規程第3条第1項第6号違反)
- 減給1月(俸給の月額の10分の1)
某府省の地方機関の職員は、立入検査の相手方である事業者に調査に赴いた際、17事業者から29回にわたり合計約24,000円相当の昼食の提供を受けたもの。懲戒処分は、国公法第98条第1項及び第99条違反と併せて行われた。
サ 利害関係者と夜間に倫理監督官の許可を得ることなく共に飲食をし、及び共に旅行をした事案(倫理規程第3条第1項第7号及び第9号違反)
- 減給6月(俸給の月額の10分の1)
某府省の地方機関の長である職員は、立入検査の相手方である団体からの要請を受け、同団体らが主催する行事のほか、施設等の見学に自己の費用を負担して赴き、また、宿泊先において、夜間倫理監督官の許可を得ないまま懇親会及び二次会に参加し、自己の費用を負担して飲食を行ったもの。懲戒処分は、国公法第98条第1項及び第101条第1項違反と併せて行われた。
- 免職
このほか、倫理法等違反行為の態様等に照らし、懲戒処分は行われず、各府省の内規による訓告、厳重注意等の措置が講じられた事案の内訳は次のとおりである。
- ・ 利害関係者から物品の贈与を受けた事案2件(倫理規程第3条第1項第1号違反)
・ 利害関係者から無償で役務の提供を受けた事案(倫理規程第3条第1項第4号違反)
・ 利害関係者と共に飲食をした事案(倫理規程第3条第1項第7号違反)
・ 贈与等報告書を定められた期日内に提出しなかった事案(倫理法第6条第1項違反)
・ 利害関係者から飲食の提供を受けた事案(倫理規程第3条第1項第6号違反)
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