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第1編 人事行政
第3部 平成15年度業務状況
第14章 人事院総裁賞及び国民各層との意見交換等
第2節 国民各層との意見交換等
人事行政を適切に運営していくためには、国民各層から公務に対する率直な意見を聴取するとともに、公務に対する理解を得ることが重要である。このため人事院は、給与や人材の確保・育成をはじめとした人事行政の諸問題について、経済界、言論界、学界、労働界等の各界有識者等と幅広く意見交換を行っているほか、国民から広く定期的に意見等を聴取するため、国家公務員モニターを委嘱している。
また、公務の職場を実際に紹介することを目的として、報道機関の論説委員等や国民の方々を対象とした職場訪問を実施している。 これらの機会に出された多くの意見は、人事行政の方針の策定や運営面に活かされている。
1 公務員問題懇話会(1) 中央における開催
昭和59年度以降、東京都において公務員問題懇話会を毎年開催している。平成15年度は、人事行政全般に関する諸問題のほかに、東京都及び各地方における共通のテーマとして「公務における幹部要員の選抜・育成方法の在り方」を取り上げ、7月9日に各界有識者7名を招き、人事院総裁、国家公務員倫理審査会会長及び事務総長と意見交換を行った。( 表14−2 )
▲公務員問題懇話会(東京)

人事行政の新たな展開のためには幅広く意見を聴取するとともに、地方の実情を的確に把握する必要があることから、昭和62年度以降、各地方都市においても公務員問題懇話会を開催している。平成15年度は、6月に大阪市、高知市及び福岡市の3都市において、それぞれの地域の各界有識者と人事官をはじめとする人事院幹部と意見交換を行った。( 表14−2 )
(3) 意見の概略【人事行政全般について】
- ○ 上に立つ者には、部下は「仕事ができればいい」という意識しかないが、人をどう評価し、どう使い、どう活かすのかという視点を、上に立つ者に持たせることが必要。
- ○ 直属の上司だけではなく、部門を超えた多くの人たちが評価することによって、より透明性を確保した人事評価制度とすることが重要。
- ○ 年功を否定はしないが、能力主義、結果主義、実績主義をミックスした人事評価制度が必要。入省後の実績、プロセス、責任の取り方などを評価する人事評価制度を導入し、そのための第三者機関を設置して、客観的に評価すべき。
- ○ 民間企業では財務状況に応じて解雇され、ボーナスもカットされるが、国は膨大な借金を抱えているにもかかわらず給与もボーナスも出る。民間の状況と同様にすべき。
- ○企業では人件費の縮減が、企業の存続を決める問題。国も総人件費を現状維持か引き下げるために、賃金制度を年功序列型から能力給・業績評価給の体系に改めるべき。
- ○ 天下りの問題については、官民の癒着の排除などマイナス思考だけでなく、プラス思考での人材活用の方法を考えるべき。公務の優秀な人材を、独立行政法人国際協力機構(JICA)などで力を発揮してもらうシステムを作るべき。
- ○ 倫理の問題は、官も民もどちらも悪く、モラルの確立が必要。官尊民卑、官主導の意識を改革することが第一。
- ○労働基本権を回復し、きちんとした協議を行う労使関係とすべき。ただし、各省から独立した人事行政機関を設け、統一的な労働協約を締結し、それを確保し、維持管理する役割に当たらせるべき。
- ○ 自分の省庁がどうあるべきかではなく、日本全体としてどうあるべきかということを考えてほしい。
- ○ フランスでは、公益と民益が対立的な構造ではなく、民間も私益の追求だけではなく公益を追求すると考えられている。エリートも公務の中だけのエリートではなく、「社会のエリート」と位置づけられ、国だけではなく民間でも活躍するなど社会全体に対してどれだけの貢献ができるのかが問われる。日本もそう変わるべき。
- ○ キャリア制度にメスを入れないと公務員制度改革は進まない。
- ○ 現行の試験制度にはいろいろ批判もあるが、存続させるべき。むしろ、I種試験の重みがなくなったことが問題であって、この試験において採ろうとする人材を明確に打ち出し、何を目指しているのか、国民にもっと明らかにすべき。
- ○ 国家にエリートは必要だが、一回のみの試験結果に基づき昇任するのは疑問。また、途中段階は試験以外の方法で選抜し、落とすシステムと上げるシステムの両方を用意すべき。
- ○ 出口が早期退職勧奨や天下りという公務からの一方通行ではなく、前向きに、大学、企業、シンクタンク等と公務との双方向の人的交流を行い、公務以外の世界を経験した人たちが公務の職場に幹部として戻れるような柔軟な制度を検討すべき。
●表14−2 公務員問題懇話会出席者

引き続き厳しい経済・雇用情勢等を踏まえ、平成15年度は、全国36都市において中小企業経営者及び報道機関の論説委員等を対象に、公務員給与の問題を中心として率直な意見交換を行った。
ここで出された意見の主なものは、次のとおりである。
- ○ 民間準拠による現行の公務員給与決定システムは適切なものと考える。
- ○ 公務員給与は、実績・業績に見合った水準であれば納得できる。
- ○ 各地域の民間企業の給与と比べると、公務員の給与水準は高いと感じる。
- ○ 年功序列主義から能力実績主義に切り替えるべきである。
国民から広く定期的に意見・提言等を聴取し、今後の人事行政の展開の参考とするため、平成11年度より毎年「国家公務員に関するモニター」500人を募集し、アンケート調査を実施している。
平成15年度においては、主に国家公務員制度と給与勧告、モニターの体験に基づいた国家公務員像などについて調査を実施した。これらの調査結果は給与勧告をはじめとする人事院の施策の検討の際の参考としている。
4 論説委員等の職場訪問国家公務員の勤務実態について広く国民各層の理解を得るため、報道機関の論説委員等や国民の方々を対象に、平成15年度は航空管制業務、気象観測業務の官署等への職場訪問を行った。
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