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第1編 人事行政

第1部 人事行政における国際協力とグローバル化対応〜交流の活発化と「国際競争力」の確保・向上を目指して〜

はじめに


人事院は、我が国の国家公務員の給与等の勤務条件に関する勧告を行う、あるいは、国家公務員の人事管理や人材育成に取り組む独立の機関であり、専ら国内向けの業務に従事する人事行政機関であるという印象を一般的には持たれている。しかし、IT化、市場経済の拡大等により世界的規模で社会経済の変動が生じており、これが様々な分野に対して大きな影響を与えるというグローバル化の進展の中で、一国の行政が他国と関わりを持たず、その国内だけで完結することはあり得ない状況となっている。人事行政の分野もその例外ではなく、人事院は、途上国を中心に諸外国の人事行政のための国際協力や国際交流、行政の国際化・グローバル化に対応するための我が国公務員の育成等に積極的に取り組んできている。

一つは、途上国等の人材の育成や公務員制度の整備等に対する国際協力である。

我が国の国際的地位が向上し、先進国の仲間入りをした時期以降、途上国等から我が国の行政を学びたいとの要請が寄せられるようになった。これに対し、昭和40年代から、途上国の政府職員を対象に、行政課題研究を通じた政策企画立案能力の向上のための研修を開始した。この研修は、我が国の国家公務員に対して実施している政策課題研究等を主なテーマとする行政研修を途上国のニーズに合わせた内容に改変したもので、参加希望の強い研修として今日まで続いている。さらに、我が国の社会経済の発展を支えた背景にある公務員制度・人材育成が注目され、これについて学び、モデルとしたいという要請が寄せられ、人事管理をテーマとする国際協力研修を実施することとなった。その後、旧ソ連邦の崩壊等に伴い誕生した体制移行国を含め、新たな国づくりを進めている国々へも対象を拡大するなど、協力の質・量両面の拡充を図ってきている。

昭和45年には、「派遣法」の制定により、国際協力のために国際機関、外国政府等に派遣する際の人材派遣の円滑化を図るための身分等のルールを整備した。

もう一つは、行政の国際化・グローバル化への対応である。

我が国行政の国際化の進展等をにらみ、昭和40年代に、我が国の行政官を諸外国の大学院等に派遣する「行政官長期在外研究員制度」を創設し(昭和41年度)、次いで、国外の政府機関・研究所等に短期間派遣する「行政官短期在外研究員制度」を創設した(昭和49年度)。なお、上記の派遣法に基づく職員派遣も、直接的には国際協力への人的貢献として我が国の国家公務員を派遣するためのものであるが、これを通じてグローバル化に対応し得る我が国自身の人材の育成にも資するものである。以後、これらの制度は逐次拡充・強化が図られ、各府省等の国際協力及び人材育成の充実に役立っている。

また、我が国や我が国の行政などに深い理解を持った政府職員を育成したいとする国からの研修実施の協力要請に対してもこたえてきた。特に、米国にあっては、日米関係の重要性が認識されていたにもかかわらず、米国連邦政府内にいわゆる日本通の職員が育っていないとして、米国連邦政府が職員の日本への受入れを日本政府に要請した。具体的には、連邦政府職員が日本において研修を行うための米国連邦法が平成6年に制定され、毎年、研修員として連邦政府職員が日本に1年間派遣される(マンスフィールド研修)こととなったが、人事院は、制度創設段階からカウンターパートとして実施細目の制定に関わり、研修員の受入れ・配置等その実施に全面的に協力している。

最新の動きとしては、経済、行政等の様々な分野において協力が進められている日本・中華人民共和国・大韓民国の三国間において、平成17年1月に人事院、中華人民共和国人事部及び大韓民国中央人事委員会のトップによる会合を行い、日中韓人事行政ネットワークに関する覚書を締結し、人事行政の分野における緊密な連携と交流を進めていくこととした。

また、人事院は、人事行政に係る専門機関として、最新の海外情勢なども参考にしながら、広い視野から時代の要請に即した我が国人事行政の在り方について検討・提言を行うとの立場から、欧米等の人事行政等について情報収集と調査研究に努めてきている。

今後とも、1)途上国等における公務員制度の整備や人事行政の改善は、その国の持続的な発展及び地域情勢の安定のため重要なものであること、2)グローバル化の進展、政治経済の相互依存の深化により、様々な行政分野において国際的な関わり合いが増大していくこと、などを踏まえると、上記の国際協力や国際交流、そして、グローバル化対応が、人事行政において重要性を増し、より大きな流れとなっていくものと考えられる。

途上国政府職員の研修受入れや行政官長期在外研究員制度がスタートして約40年が、マンスフィールド研修がスタートして10年が経過し、日中韓人事行政ネットワークが開始する今日の時点を一つの大きな節目ととらえ、これまでの取組、課題を整理し、人事院の国際関係業務の今後について示すこととした。




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