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第1編 人事行政

特別寄稿 政治任用 〜専門家の目から見た展望と留意点〜

日本の官僚制と政治的任用

II 専門能力の確保:ジェネラリストとの関連


アメリカ人が見た過剰労働はなぜ生じるのか。その理由は、筆者の見るところでは、国会の審議の仕組みと官僚の省益主義と、出過ぎとしばしばいわれる政治的調整などの混成物である。現在の幹部官僚の最重要の仕事は「政治的調整」であるようである。このタイプの活動に各府省は総力を挙げている。そのために、政治家との折衝能力が重要視され、ジェネラリストかスペシャリストかの議論では、ジェネラリストが必要だと言われてきた。政治的折衝に巧みなものが高い地位を得ていく。この点、どの府省庁もほぼ同じである。2〜3年、時には1年で、人事異動を行い、有能な人材に多くのポストを経験させる育成人事が行われている。今人事評価が話題になっているが、このような仕事が重要であるとされるために、府省庁の仕事の全体が、特定の客観的な尺度などを使った人事評価はやれないと言われる。これまで通りの「評判法」によるのが良いという声は強い。

しかし、筆者は、たぶんこの評判法は、政治家と協力し格闘するトップを決めるための評価法であると思う。その場合は、これで良いのかも知れない。政治家との折衝は重要であるし、何かの尺度で点数を付けるという活動ではないのかも知れない。しかし、筆者は、行政は、ジェネラリストのタイプだけで担われていないし、担われるべきではないとかねて考えてきた。優れた官僚というのも、政治的官僚以外に、多種多様に存在しなければならない。かつての大蔵省を例にとれば、予算を得意とする主計局主流以外に、金融行政の専門家が必要であった。不良債権処理に失敗して図らずも、専門家が必要であることが明確になったわけである。大蔵省時代のことを言っているのであるが、金融監督行政の実施は、企画立案ではないが、大きな仕事であった。責任者には適材を配し高い報酬が与えられるべきであった。年金制度も企画立案の後は比較的に単純な仕事である。しかし、この国民の福祉に大きな影響を与える仕事の適切な管理は常時改善の価値がある。出先が重要であるような大規模な組織の「管理」ということになると、政治的折衝と別の能力であるし専門家である。このような他のタイプの専門家も育成され適切な処遇を受けるべきである。政治的折衝を役割とするトップとその予備軍を作るために、他のタイプの専門家の空白が生じたように思われるのである。これは、これらここに事例として挙げた官庁だけでなく、全省庁の特徴であったと思われる。専門家を作るためには、一つ専門の中で、かなり長期に在職し、専門的スキルを向上させ、そのような人にも満足のいく昇進が保障されなければならない(事例として財務省の財務官)。1、2年のローテーションでは専門家は生まれない。専門家の効用と真価は、次の節でも再説する。

もっとも専門家であればこそ外からの中途採用であり得るし、それが政治的任命であるという主張もあり得よう。それはそれで良いと思う。しかし、ケースはそれほど多くなるとは思われない。


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