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第1編 人事行政

特別寄稿 政治任用 〜専門家の目から見た展望と留意点〜

日本の官僚制と政治的任用

V インセンティブと退職管理(天下り)


インターネットのフォーラムの議論にも出ているように、働きと給与や年金など報酬に関係があるという見方は正しい。官僚たち自身は、報酬は、働きに見合っていないと考えていた。彼らは、特殊法人の理事職を現役時代において少なかった報酬を補完してくれるシステムとして、いつからか思いこみ始めた。若いときに出向させ、OBとして天下りさせた。民間にも直接統制の効くところでは、人を押しつけた。そこから問題が生じた。比較的に若くトップを作り、トップの仕事をやりやすくさせるために同期を辞めさせることにより、省内で同期生の間の上下関係を作らせないという目的を助けるのが、早期退職・天下りシステムであるとも言われた。またいつの間にかそのために官房による退職管理が不可欠だと各省が考えるようになった。しかし国民と政治家は、それはおかしいと言い始めた。この点で筆者の見解を述べるなら、官僚の個人のスキルから民間や政治的任命職の世界に就職していくことを否定しない。省庁が組織として天下りポストを私有物として管理することが問題なのである。

官僚の皆さん、省庁組織が私有物を作り出したなどと言われて面白くないでしょう。図は、人事院が毎年新入省者に行ったアンケート調査結果である。

I種試験等からの新規採用職員に対するアンケート調査結果(人事院調査より)複数回答(3つ以内)


新入省者の就職の動機は、仕事のやりがいと公務の遂行にある。公務員になるのは、「公務」という「仕事」への関心である。仕事の面白みである(公務の面白みは、福祉への関心かも知れないし、道路かも知れない。しかし国力を考え総体の中で、分野を位置づけて仕事ができれば、どの分野も公務独特の迫力と面白さを感じるのではないか。政治的折衝の好きな人はその道に、専門的熟練に誇りを持つ人はその道に進むことが今後の公務員の道ではないか)。この図に示されたような気持ちと姿勢は維持することは難しいとは思われない。公共政策の仕事は面白いからである。政府には、そういう公務員制度と初心を維持できるような人事評価の仕組みを作ってくださいと申し上げたい。インセンティブを確認し、複数のインセンティブを組み合わせた制度の設計が、今後の課題である。インセンティブは、専門の魅力、政治家と共同して国家を担う責任感などいろいろである。インセンティブの質量を計算しながら、今の時期、公務員制度を再検討する必要があるのではないか。まず必要なことは、時間をかけた調査である。その調査事項として、キャリア組と言われる「制度」の在り方や、65歳までの勤務の設計が含まれるに違いない。


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