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第1編 人事行政

特別寄稿 政治任用 〜専門家の目から見た展望と留意点〜

日本の官僚制と政治的任用

VI 政治的中立性


アメリカでは、大統領スタッフは大統領と政治的運命を共にする。他方、メリットシステムを通じて形成される恒久的官僚制は、中立的に行動する。明快である。日本では一党優位制の政権党の下で、官僚が、アメリカで言えば政治的任命職の行う高いレベルの政策の企画立案の仕事をし、それら発案事項を国会通過させるために政治的な調整に乗り出す。自民党が長期単独政権を続けている間は、政権党に協力することは、官僚幹部の仕事であった。おそらくそこでは、官僚自身が国家と国益を代表しているという意識があった。しかし、その協力が、政治の役割と行政の役割を意識することなく実行してきたことから、官僚は、役割を超えた影響力を獲得し、逆に政治家は役割を超えた行政介入の機会を得た。政権党に協力することは、たぶんに政治的に中立的な行動である。加えて、彼らには、政権党への協力以上に、官僚自身が国益を代表しているという意識がある。しかし、それは、いまやいわば擬制にすぎない。また、政治的中立性の正当性にも危うさがある。

しかも、現在の野党は、前回参議院選にほとんど勝利したというに近い有力野党である。組織の結束力と政策的な統一性は弱くても、政権をひょっとするととるかも知れない政党である。すると理論的には、官僚は、現在の政権党から距離を置く可能性がある。そして、新しい政権党が誕生すれば、その時点の政権党に協力するのはその任務であるが、世界の政治学界を席捲している合理的選択論によれば、官僚の行動は、外見上類似の行動であるが、さらに次の政権交代を勘定に入れた慎重に距離を置くものとなる。


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