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第1編 人事行政

特別寄稿 政治任用 〜専門家の目から見た展望と留意点〜

● おわりに


本稿においては、4人の専門家から、米英独仏における実態や我が国官僚制の分析をもとに、我が国における政治任用についてご考察いただいた。先生方からは、政治任用は今後の選択肢の一つとして考え得るが、その際には、適用すべきポストの範囲に関する慎重な検討や、人材供給源や退職後の受け皿の確保、能力のチェックシステム、職業公務員の人事の独立、許認可業務への不介入など様々な前提条件の整備が必要であるとのご意見をいただいたところである。

なお、昨年、最近の先進諸国での公務の政治化の動きにつき、米英独仏を含む欧米12か国の比較考察を行った調査論文が出版されている(Politicization of the Civil Service in Comparative Perspective - The quest for control,2004,edited by B.Guy Peters and JonPierre)。

同論文は、本稿のテーマである政治任用だけでなく、政策への共感などを重視する政治的基準での職業公務員の任用・昇進、政治が担うべき領域への職業公務員の進出、政治家に直接助言する部局の拡大、エージェンシーや審議会の多用など、幅広い切り口から「公務の政治化」の度合を分析するとともに、その影響を論じている。それによれば、同論文で取り上げられた国の大半で1980年代頃から公務がより「政治化」する現象が見られ、「(価値判断以前に)こうした政治化が政府の現実である」とされる。

政治任用を含めた「政治化」の功罪については、公務員が政治指導者の方針に従い、選挙で公約された政策へコミットするようになる結果、民主主義的価値がより体現されることとなるとの肯定的な評価がある一方、行政の非効率化、行政の公正性への信頼の喪失のおそれなども指摘されている。特に、職業公務員にもたらす影響として、「公務員の志気や組織の自信が低下」(カナダ、ベルギー)、「正しいことの指摘を避け、政治家の好みを先読みして追従的な提案をしがち」(カナダ、デンマーク、ニュージーランド)、「職業公務員間の分断」(フランス)などの問題点も指摘されている。

人事院としても、今後、こうした国々の動きを含め、政治任用等の実態とその影響を引き続き研究してまいりたい。

政治任用は、その定義すら国によってまちまちである奥の深いテーマであるが、専門家の先生方の手になる今回のフォローアップが、昨年度の報告書と併せ、本テーマに係る議論が行われる際の参考情報として活用されることを願うものである。

本稿の作成に当たり、ご多忙の中ご執筆をお引き受け下さった4名の先生方、また、現地調査等にご協力下さった関係者の方々に、この場をお借りして心よりお礼申し上げる。


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