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第1編 人事行政

第3部 平成16年度業務状況

第3章 職員の給与

第1節 給与に関する報告と勧告


1 給与勧告の仕組み
(1) 給与勧告の意義と役割

人事院の給与勧告は、公務員が民間企業の勤労者とは異なり、争議権などの憲法上の労働基本権が制約されていることの代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した給与を確保する機能を果たすものである。

公務員給与については、納税者である国民の理解と納得を得る必要があることから、代償機関である人事院が、労使当事者以外の第三者の立場に立ち、労使双方の意見を十分に聴きながら、官民給与の精確な比較を基に給与水準及び制度について勧告を実施することにより、公務員の適正な給与が確保されている。

また、勧告が実施され、公務員に適正な処遇を確保することは、労使関係の安定を図り、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。

(2) 民間準拠を基本に勧告を行う理由

人事院が民間準拠を基本に勧告を行う理由は、1)国は民間企業と異なり、市場原理による給与決定が困難であること、2)職員も勤労者であり、社会一般の情勢に適応した適正な給与の確保が必要であること、3)職員の給与は国民の負担で賄われていることなどから、労使交渉等によってその時々の雇用情勢を反映して決定される民間従業員の給与に公務員給与を合わせていくことが最も合理的であり、職員をはじめ広く国民の理解を得られる方法であると考えられるからである。

(3) 官民給与の比較

〔月例給の比較〕

毎年、「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」を実施して官民の4月分の給与を的確に把握し、単純な平均値の比較ではなく、主な給与決定要素である職種、役職段階、学歴、年齢などを同じくする者同士を対比させた精密な比較(ラスパイレス方式)を行い、官民の給与水準を均衡させることを基本に勧告を行っている。(図3−1

●図3-1 給与勧告の手順


〔特別給の比較〕

特別給については、職種別民間給与実態調査により、過去1年間の民間の賞与等の特別給(ボーナス)の支給実績を精確に把握し、これに公務員の特別給(期末手当、勤勉手当)の年間支給月数を合わせることを基本に勧告を行っている。なお、民間の支給状況をより迅速に公務員給与に反映させるため、平成16年より民間の特別給の前年8月から当年7月までの1年間の支給実績を調査し、その結果に基づいて官民比較を行うこととした。

2 公務員給与の実態調査

官民の給与比較のための基礎となる国家公務員の給与の状況を把握するため、毎年、「国家公務員給与等実態調査」を実施している。

この調査は一般職の国家公務員のうち給与法等の適用を受ける常勤職員を対象として、職員の俸給、諸手当の受給状況、年齢、学歴等について各府省の協力を得て行っているものである。

  • 調査の対象:1月15日現在に在職する給与法、任期付研究員法、任期付職員法の適用を受ける職員(休職者、派遣職員、在外公館勤務者等を除く。)
  • 調査項目:俸給、諸手当の受給状況、年齢、学歴、採用試験の種類等
  • 調査の集計:4月1日における給与等の状況を集計(1月16日から4月1日までの新規採用者、離職者、独立行政法人移行職員等は除く。)

以下は、平成16年国家公務員給与等実態調査結果の概要である。

(1) 職員の構成
ア 職員の総数

平成16年4月1日現在で290,609人である。(新規採用者、再任用職員は含まれていない。以下の数値はこの人員に係るものである。)

国家公務員の人数は引き続く定員抑制措置などにより年々減少傾向にあるが、特に本年は、4月の国立学校の法人化及び国立病院等の独立行政法人への移行が大きく影響して、平成6年(489,448人)と比べると約20万人減少している。(図3−2資料3−2

イ 職種別の職員数

職種別の増減を平成6年と比較してみると、国立学校の法人化、国立病院等の独立行政法人への移行の影響により、教育職、医療職、一般的な事務等に従事する職員に適用される行政職等の俸給表の適用を受ける職員は大きく減少した一方、公安職、専門行政職の俸給表の適用を受ける職員は増加している。(図3−2資料3−1

ウ 職員の学歴・年齢

最終学歴別の人員構成は、大学以上の学歴を有する職員で42.0%(うち大学院修了者は3.2%)と前年より4.7%(同10.1%)減少したが、これは国立学校の法人化等により、教育職等の俸給表の適用を受ける職員が減少したことに伴うものであり、近年の傾向としては、大学以上の学歴を有する職員が増加し、高学歴化が進んでいる。(図3−3資料3−3

●図3-2 職種別職員数及び構成比


●図3-3 最終学歴別人員構成比


全職員の平均年齢は40.9歳で前年より0.7歳低くなっている。これは、国立学校の法人化等による人員構成の変化に伴うものであり、近年の傾向としては、高齢化が進んでおり、平成6年と比べると1.3歳高くなっている。(図3−4資料3−2

●図3-4 平均年齢の推移


(2) 職員の給与
ア 平均給与月額

平成16年4月1日における全職員の平均給与月額は400,402円、行政職俸給表(一)適用職員では381,113円である。俸給、手当の内訳は次のとおりである。(表3−1資料3−2

●表3-1 給与種目別平均給与月額


イ 諸手当の受給状況

主な手当の全職員に占める受給者の割合は、通勤手当が83.4%(242,311人)で最も高く、扶養手当が59.4%(172,517人)、住居手当が22.1%(64,227人)となっている。

また、調整手当の支給地域に在勤する職員の割合は57.8%となっている。これを、支給地域区分別にみると、甲地のうち12%地域(東京都特別区)が22.1%、10%地域(大阪市等)が17.1%、6%地域(福岡市等)が5.8%、支給割合3%の乙地(広島市等)が12.9%となっている。

3 民間給与の実態調査

公務員給与を適切に決定するための基礎資料を得ることを目的として、毎年、都道府県、政令指定都市等の人事委員会と共同で「職種別民間給与実態調査」を実施し、公務と類似の仕事をしている民間事業所の従業員について、その給与の実態を把握している。

▲平成16年職種別民間給与実態調査説明会


(1) 調査の概要

平成16年の調査の概要は、次のとおりである。

(2) 民間給与の実態

平成16年の主な調査の結果は、次のとおりである。

ア 初任給

新卒事務員・技術者計の初任給は、大学卒191,945円、短大卒166,645円、高校卒153,893円となっている。その他の職種は、おおむね事務・技術関係職種の同一学歴の初任給より高く、準新卒看護師(養成所卒)の初任給は大学卒を上回っている。(資料3−5

イ 職種別給与

事務・技術関係職種の職種別平均給与月額は、係長までは、事務・技術関係職種とも同程度の水準となっているが、課長代理以上では、事務関係職種の方が高くなっている。(資料3−6

ウ 給与改定等の状況

係員でみると、ベースアップを実施した事業所の割合は25.3%にとどまっている。一方、ベースアップ中止事業所の割合は34.6%、ベア慣行なしの事業所の割合は37.7%となっており、ベース改定を実施しない事業所が増加している。(資料3−7

また、定昇を実施した事業所のうち、増額したところは29.0%と前年に比べ増加している。

次に、所定内給与又は基本給の賃金カットを行った事業所は、係員で1.3%(平均カット率4.3%)、課長級で2.2%(同6.4%)といずれも昨年より減少している。雇用調整を行った事業所は、35.3%で前年より大幅に減少しており、措置内容の全ての項目において前年より割合が低下している。このように、民間企業においては、賃金カットのような給与抑制措置や雇用調整が昨年より緩和されていることが明らかになった。

4 平成16年の報告と勧告

平成16年8月6日、国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与等について報告するとともに、その給与の改定について勧告を行った。

この勧告を行うに当たって、人事院は、職員団体や各府省の人事当局から、例年同様、きめ細かく意見聴取を行った。また、全国41都市で有識者、企業経営者、マスコミ関係者等との意見交換を行ったほか、人事院が委嘱している「国家公務員に関するモニター」(500人)に対するアンケート調査を実施するなど、広く国民の意見の聴取に努めた。

なお、平成16年の月例給の官民比較の結果は、公務員給与が民間給与をわずかに上回るが、平成16年度に寒冷地手当の見直しを行うとほぼ均衡(較差39円(0.01%))した。人事院としては、以下の事情を総合的に勘案した結果、月例給の水準改定を見送ることが適切であると判断した。

また、特別給についても、民間事業所で支払われた特別給は所定内給与の4.39月分に相当しており、公務員の特別給の年間支給月数(4.40月)とおおむね均衡していたことから、改定を見送ることとした。

平成16年の給与勧告の概要は、次のとおりである。

(1) 国立大学法人化等に伴う改定
ア 俸給表

なお、指定職俸給表12号俸の削除により、任期付研究員俸給表(招へい型)及び特定任期付職員俸給表について、枠外の俸給月額の上限を指定職俸給表11号俸に相当する額に変更することとし、所要の経過措置を講ずるものとする。

イ 研究員調整手当

国立学校の法人化によって、教育関係の職員が研究員調整手当の支給対象となることがなくなったことから、教育関係の職員を支給対象から除外することとする。

ウ ハワイ観測所勤務手当

国立学校の法人化によって、国家公務員がハワイ観測所に勤務することがなくなったことから、廃止することとする。

エ 義務教育等教員特別手当

国立学校の法人化によって、国家公務員が義務教育諸学校に勤務することがなくなったことから、廃止することとする。

(2) 寒冷地手当

支給地域及び支給額について、民間における同種手当の支給状況を把握するため実施した全国的な調査の結果を踏まえて、民間準拠を基本に、関係者の意見を聴取しつつ検討を行った結果、制度全般にわたる見直しを行うこととした。

支給地域については、民間事業所における支給状況を考慮し北海道を支給地域とし、併せて、気温や積雪量が北海道とほぼ同程度である本州の一部地域も支給地域とする。また、支給地域以外の官署でも、気温や積雪量が北海道とほぼ同程度と認められる場合には、在勤する職員のうち一定の者に対して、寒冷地手当を支給することとする。これにより、支給地域に在勤する職員数は、見直し前のおおむね半数程度となる。(表3−2

●表3-2 支給地域(市町村数及び職員数)


支給額については、各地域の民間事業所における支給額に準拠した額とした結果、約4割の引下げとなった。なお、基準額と加算額との区分は廃止することとする。また、世帯主である職員に対する手当額について、単身赴任者の扶養親族が寒冷地以外に居住している場合には扶養親族のいない世帯主に対する額を支給することとする。

支給方法については、基準日における一括支給から、冬期間中(11月から3月まで)における月額制に改め、追給・返納制度は廃止することとする。

これらの改定は、平成16年度に支給する寒冷地手当から実施することとする。また、これらの改定に伴い、平成16年10月29日に従前の寒冷地手当支給地域に勤務していた職員については、所要の経過措置を講ずることとする。(表3−3

●表3-3 寒冷地の区分及び支給額


5 給与勧告の取扱い

政府は、給与関係閣僚会議を8月6日及び9月10日に開催して、平成16年の給与勧告の取扱いを協議した。9月10日の第2回給与関係閣僚会議において勧告どおり実施する方針が承認され、同日開かれた閣議において完全実施が決定され、政府において給与法等の改正法案を国会に提出するため、所要の準備を早急に進めることとなった。

なお、人事院勧告の趣旨説明は、9月9日の衆議院総務委員会及び10月26日の参議院総務委員会において行われた。

●公務員の給与改定に関する取扱いについて●平成16年9月10日 閣議決定
  • 1 一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与(寒冷地手当を含む。)については、去る8月6日の人事院勧告どおり改定を行うものとする。  なお、公務能率及び行政サービスの一層の向上を図るとともに、官庁綱紀の厳正な保持、公正な公務運営の確保に努めるものとする。
  • 2 特別職の国家公務員の給与については、おおむね1の趣旨に沿って改定を行うとともに、本年3月に取りまとめられた内閣官房長官主宰の「幹部公務員の給与に関する有識者懇談会」の報告書の趣旨を踏まえた見直しを行うものとする。
  • 3 1及び2の給与改定については新たな追加財政負担は要しないが、我が国の財政事情がますます深刻化していることを考慮すれば、行財政改革を引き続き積極的に推進し、総人件費を極力抑制するとの基本方針は堅持する必要がある。そのため、行政事務・事業の整理、民間委託、人事管理の適正化等行政の合理化、能率化を積極的に推進する等の措置を講ずる。また、定員については、各府省とも、定員削減計画を上回る大幅な削減に積極的に取り組むことにより、真に必要な部門への適切な定員配置を図りつつ、引き続き国家公務員数の純減に努める。独立行政法人についても、中期目標設定、評価等に当たって役職員数も含めた一層の事務運営の効率化を図る。特に、平成17年度末までに中期目標期間が終了する独立行政法人については、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(平成16年6月4日閣議決定)等を踏まえ、中期目標期間の終了に伴う組織・業務全般の整理縮小、民営化等の検討を進める。さらに、特殊法人等についても厳しい定員削減を実施する。  地方公共団体についても、国の措置に準じて措置するように要請する。また、地方公共団体に定員の増加を来し、人件費の累増をもたらすような施策を厳に抑制する。
  • 4 独立行政法人(国立大学法人及び大学共同利用機関法人を含む。以下同じ。)の役職員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与水準を十分考慮して適正な給与水準とするよう要請する。独立行政法人及び主務大臣は、総務大臣が定める様式により、役職員の給与等の水準を毎年度公表することとする。また、特殊法人等の役職員の給与改定に当たっても、国家公務員の例に準じて措置されるよう対処するとともに、事業及び組織形態の見直しを通じた給与等の適正化を進めるものとする。特殊法人等の役職員の給与等についても、法令等に基づき、公表を進める。
  • 5 地方公共団体における地方公務員の給与改定に当たっては、現下の極めて厳しい財政状況及び各地方公共団体の給与事情等を十分検討の上、国と同様、行政の合理化、能率化を図るとともに、既に国家公務員又は民間の給与水準を上回っている地方公共団体にあっては、その適正化を強力に推進するため必要な措置を講ずるよう要請するものとする。
  •  また、地域における国家公務員給与の在り方については、人事院において、地域ごとの民間賃金の水準を的確に反映したものとするよう具体化を図っていくこととされており、こうした国の動向にも鑑み、地方公務員給与についても、地域の民間給与の状況をより的確に反映し決定できるよう、人事委員会機能の強化をはじめとしてその在り方を見直し、所要の要請を行うものとする。

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