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第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動きと今後の課題

ダム技術者の背中

 先輩の背中


ところが、酒に強い所長や課長が深く酔う時があった。それは、水没者との会合から帰ってくる深夜であった。当時はすでに補償交渉は妥結していた。代替地で彼らの生活をどのように再建するか、の打ち合わせが中心であった。厳しい対決の場ではなく、和やかな雰囲気で打ち合わせは進んでいたはずであった。

会合は公民館や水没者の自宅で、深夜まで酒を飲みながら行われていた。その会合から帰ってきた所長や課長が、酔いを醒まそうと、洗面所で冷たい水を飲んでいる疲れた背中をなんども目撃した。

酒に強い先輩達が、何故それほど深酔いしてしまうのか、不思議に感じていた。

ある夜、寮で所長と酒を酌み交わしているとき、私はそのことを聞いた。「地元の人と飲むのは、苦痛なのですか?」

所長は少し考えて「苦痛じゃない。しかし、辛いよ」とぽつんと言った。

何が辛いのか、私は調子にのってさらに聞いてしまった。


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