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第1編 人事行政
第2部 平成17年度業務状況
第1章 職員の任用
第1節 採用試験
1 採用試験の概要
人事院が試験機関として自ら実施した平成17年度の採用試験は、表1−1のとおり14種類15回である。このほか、人事院の指定に基づき、外務省が試験機関として実施した外務省専門職員採用試験、日本郵政公社が試験機関として実施した郵政総合職採用試験及び郵政一般職採用試験の3種類3回がある。(資料1−1)
人事院が試験機関として実施した採用試験のうち、I種試験、II種試験及びIII種試験は、主として各府省に共通する官職を対象とするものであり、他の11種類の試験はそれぞれ個別の府省における固有の官職を対象とするものである。
●表1−1 採用試験の種類

人事院が試験機関として実施する平成17年度の採用試験全体の施行計画については、平成17年2月1日に官報公告を行い、併せて新聞等の報道機関を通じて発表した。また、各採用試験の詳細については、受験申込みの受付期間を考慮し、14種類15回の採用試験を3回に分けて官報により告知したほか、政府広報を通じての新聞広告、スポット放送、携帯端末広告をはじめ、人事院月報やホームページへの掲載などを通じて、情報提供を行うとともに、ポスター、受験案内等の募集資料を作成し、全国の大学、高等学校等に掲示・配布を依頼して、採用試験の周知を図った。
これに加え、大学卒業程度の試験の募集活動については、これから受験を希望する人を対象に、公務の魅力や各府省が期待する人材をPRするための各府省参加の業務説明会や、意欲ある多くの女性に公務にチャレンジしてもらうための「女子学生セミナー」を開催するとともに、大学主催のガイダンスに職員を派遣した。
また、平成18年度試験合格者から適用されるII種試験「行政」区分本省庁採用制度の導入に伴い、その周知を図るとともに各府省参加の業務説明会を開催した。
これらのイベントには多くの学生が参加し、「公務の内容、魅力を実感することができ、大変有意義であった」との意見が多数寄せられている。特に本府省の職場を訪問し、若手職員から直接に業務内容や公務の魅力等を聞く「学生のための霞が関官庁探訪」には6,743人の学生が参加し、参加者からも各府省からも高い評価を得ている。
人事院では、大学生に国の行政に対する知識を深めてもらうとともに、公務に対する興味や関心を持ってもらうため、各府省と連携し、現在の国の行政の課題と展望について、各府省の政策担当官を講師とする「特別講演会」を実施しています。 平成17年度の実施結果![]() |
さらに、I種試験の受験者が官庁訪問等を円滑に行えるよう、合格発表日の翌日の6月22日から7月12日まで人事院内に相談コーナーを開設するなど、多くの受験者からの採用相談に対応した。
▲女子学生のための霞が関セミナー

採用試験は、それぞれの試験の対象となる官職に有為の人材を確保するため、受験者について職務遂行に必要な能力を有するかどうかを相対的に判定することを目的としている。
そのため、採用試験は、官職の職務遂行に必要とされる知識、技術又はその他の能力を検証する方法として、教養試験、専門試験、人物試験等の試験種目のうちから、それぞれの試験ごとに効果的な試験種目を組み合わせて実施している。例えば、I種試験においては、国家公務員として必要な一般的な知識及び知能をみるための「教養試験」、行政、法律、経済、理工など13の区分試験ごとに必要な専門知識、技術等をみるための「専門試験」、また、総合的な判断力、思考力等をみるための「総合試験」をそれぞれ筆記試験により行い、さらに、人柄、性向、対人的能力等をみるための「人物試験」を面接試験により行っている。
これらの試験種目のうち、専門試験及び総合試験の内容については、試験専門委員として委嘱した大学の教員及び専門知識を有する各府省の職員等とともに検討を重ねた上で決定している。
また、採用試験の実施後は、その結果分析を通じて試験方法の検討を行うほか、必要に応じて各学校における教科内容の実態調査を行うなどして、採用試験の妥当性、信頼性を高めるよう常に研究を行っている。
4 「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」の施行等に伴う見直し(1) 合格者発表における氏名の取扱い
個人情報保護の観点から、個人を特定し得る情報については積極的に公表する必要があるものを除き公表しないとの基本的な考え方の下、平成17年度の採用試験から、すべての国家公務員採用試験について、第1次試験合格、第2次試験合格及び最終合格のいずれについても、氏名を掲示せず受験番号のみを掲示することにより合格者を発表することとした。
(2) 受験申込書の記載事項国家公務員採用試験の受験申込書には、いずれも「本籍地」欄が設けられていたが、「本籍地」欄を削除したとしても試験事務遂行上の支障がないこと及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の趣旨を踏まえ、受験申込書の「本籍地」欄を削除した。
加えて、大学卒業程度の採用試験の受験申込書の「現在の就職状況」欄も削除した。
5 海上保安大学校等学生採用試験の受験資格の見直し航空保安大学校、海上保安大学校、海上保安学校、気象大学校の各学生採用試験については、高等学校の卒業者又は人事院がこれと同等の資格があると認める者であることを受験資格の一つとしている。
これまで、「人事院が高等学校の卒業者と同等の資格があると認める者」については、文部科学省が大学入学資格を認めている者の範囲内で、実際に受験者の出現が見込まれるなど措置の実効性があると認められるものについて認定してきたところであるが、大学入学資格と本件受験資格とは教育施設等における教育内容に応じて同様に判断すべきであり、受験者の出現などを待たず、受験資格としての門戸は広く開いておくことが適当と考えられることなどを考慮し、原則として文部科学省が大学入学資格を認めている者には本件受験資格を認めることとした。
6 実施結果行政の複雑化、高度化、国際化等が進む中で、今後の行政を担うにふさわしい多様な人材を安定的、継続的に確保していくことの重要性にかんがみ、情勢の変化に対応して試験内容、試験方法の改善を行うとともに、雇用環境等を踏まえた適切な募集活動、試験日程の設定等により、公正かつ効果的な試験の実施を図っている。
(1) 試験方法等の改善平成17年度においては、次のような試験方法等の改善を行った。
ア 試験施行日程I種試験については、平成16年度には、平成15年度よりもさらに日程の短縮を行い、最終合格者発表日以後の官庁訪問開始が実現するなどの改善が図られたことから、平成17年度については、最終合格者発表日を平成16年度と同じ日とするほか平成16年度に準じた日程で行った。その他の試験日程については、平成16年度日程の「曜日対応」で行った。
イ 試験方法- (ア)I種試験「農学IV」区分の専門試験(多枝選択式及び記述式)の出題分野のうち「海洋環境保全」について、海洋に限定されるものでなく、海、川、湖を水圏として一体で考慮する必要があることから、「水産環境保全」に改めた。
- (イ)II種試験「農業土木」区分の専門試験(多枝選択式)の出題分野のうち「農地造成」について、農村環境整備が重要になってきていることから、「農村環境整備」に改めた。
- (ウ)III種試験技術系区分、農業系区分の専門試験、航空保安大学校等各学生採用試験の学科試験について、平成15年4月に施行された新しい高等学校学習指導要領に沿った出題となるよう出題分野を改正するとともに、併せて出題数等についても所要の改正を行った。
- (エ)海上保安学校学生採用試験海洋科学課程の学科試験について、同課程を卒業した者が従事する業務の国際化が進み、英語の能力が必要とされることから、出題分野に「英語」を加えるなどの改正を行った。
- (ア)III種試験の第2次試験地「水戸市」は、申込者数が少ないことから、代替試験地への利便性等を考慮して廃止した。
- (イ)海上保安学校学生採用試験(特別を含む。)及び海上保安大学校学生採用試験については、申込者数の増大を図る観点から、第1次試験地「和歌山市」を新設した。
- (ウ)刑務官採用試験(刑務A(男子)及び刑務B(女子))の第1次試験地「神戸市」と「姫路市」は近接した試験地であり、非効率な実施となっていたため、両試験地を廃止し、地理的に両試験地の中間に位置する「明石市」に集約・新設した。
また、第1次試験を東北地方で受験した刑務Bの第2次試験は、従前は東北地方に女子刑務所がなかったため「仙台市」(宮城刑務所)で実施していたが、平成17年度から福島市に女子を収容する福島刑務支所が開設されたことから、刑務Bの第2次試験地「仙台市」を「福島市」に変更した。 - (エ)法務教官採用試験の第1次試験地「前橋市」は、申込者数が少ないことから、代替試験地への利便性等を考慮して廃止した。
行政事務の効率化・高度化への対応及び簡便な受験申込みを図っていく観点から、平成16年度より航空管制官採用試験及び航空保安大学校学生採用試験について、従前の郵送等による申込方法に加え、インターネットによる受験申込みを実施した。平成17年度は、さらに、入国警備官採用試験及び皇宮護衛官採用試験を追加して実施した。
なお、インターネットによる受験申込者数は1,242人で、対象試験の合計申込者数(7,017人)に占める割合は17.7%であった。
(2) 実施状況平成17年度に実施した採用試験の状況は、表1−2のとおりである。 I種試験は、対象となる官職に必要とされる専門知識等に応じて13の区分試験に分けて実施している。同様にII種試験は11、労働基準監督官採用試験及び法務教官採用試験は2、III種試験は9、刑務官採用試験は2、航空保安大学校学生採用試験は3、海上保安学校学生採用試験は4のそれぞれの区分試験に分けて実施している。(資料1−2、資料1−3、資料1−4、資料1−5、資料1−6、資料1−7、資料1−8、資料1−9)
さらにII種試験のうち「行政」区分、III種試験のうち「農業」、「農業土木」、「林業」以外の6の区分試験及び刑務官採用試験については、合格者の地域的偏在を防ぎ、全国各地に所在する官署の採用に応じられるようにするため、地域別の試験に分けて実施している。
人事院、外務省及び日本郵政公社の実施する全試験の申込者総数は、242,458人で、前年度に比べ27,190人(10.1%)の減少となった。大学卒業程度の試験では128,367人で16,222人(11.2%)の減少、高等学校卒業程度の試験では114,091人で10,968人(8.8%)の減少となっている。
全試験の昭和60年度以降の申込者数の推移を見ると、平成7年度をピークとして減少に転じ、平成11年度には前年度に比べ16.4%の大幅な増加となったものの、翌年度から再び減少に転じていた。平成15年度は日本郵政公社の採用試験が新設されたこともあって、35.3%の大幅な増加となったが、平成16年度は郵政一般職の申込者数が33,268人減少したことにより大幅な減少となり、平成17年度は、更に27,190人の減少となった。(図1−1)
●図1−1 国家公務員採用試験申込者数の推移

●表1−2 平成17年度国家公務員採用試験実施状況一覧

全試験の合格者総数は、郵政一般職の合格者数が前年度より6,808人増加したことから、前年度より5,546人(28.9%)多く24,712人となっている。また、申込者数の合格者数に対する倍率は、大学卒業程度の試験が14.3倍で前年度に比べ0.3ポイント低く、高等学校卒業程度の試験は6.3ポイント低くなり7.2倍となったが、引き続き高い倍率となっている。(表1−2)
以下、人事院が試験機関として実施するI種試験、II種試験及びIII種試験の実施状況等における特徴的な事項について見ると、次のとおりである。
ア I種試験(ア)申込者数は31,112人、合格者数は1,674人である。これを前年度に比べると、申込者数は2,273人(6.8%)減少し、合格者数は82人(4.7%)減少した。(表1−2)
また、I種試験の系統別申込者数の推移をみると、平成17年度は、前年度に比べ法文系において794人(3.9%)、理工系において1,106人(11.6%)、農学系において373人(11.5%)といずれも減少した。(図1−2)
●図1−2 国家公務員採用I種試験の系統別申込者数の推移

(イ)申込者及び合格者を学歴別にみると、大学卒業者等(卒業者、在学者、中退者をいう。以下同じ。)の占める割合は、申込者では72.7%(前年度72.3%)、合格者では53.8%(同53.3%)となっており、大学院修了者等(修士・博士課程修了者、在学者、中退者をいう。以下同じ。)は、申込者の割合では25.4%(同25.7%)であるのに対し、合格者では45.9%(同46.3%)を占めている。
また、合格者について試験の系統別にみると、法文系では大学卒業者等が81.1%(同83.1%)と多数を占めているのに対し、理工系及び農学系では大学院修了者等が多数を占め、理工系で73.9%(同74.5%)、農学系で63.1%(同63.0%)となっている。(資料1−10)
(ウ)近年、女性の進出が著しく、昭和60年度には3,378人であった申込者数が、平成17年度は9,011人と2.7倍になっている。平成17年度の女性の申込者数は、前年度に比べると589人(6.1%)減少したが、申込者全体に占める割合は、29.0%(前年度28.8%)と増加しており、平成8年度以降25%を上回る状況が続いている。また、合格者数は、282人(同304人)で22人(7.2%)減少し、合格者全体に占める割合は16.8%(同17.3%)となっている。(資料1−11)
(エ)合格者の国・公・私立別の出身大学(大学院を含む。)数は表1−3のとおりであり、平成17年度は全体で97校(前年度105校)であった。
●表1−3 国家公務員採用I種試験合格者の国・公・私立別出身大学数の推移

- (ア)申込者数は61,621人、合格者数は5,300人である。これを前年度に比べると、申込者数は8,150人(11.7%)、合格者数は1,074人(16.8%)いずれも減少している。(表1−2)
- (イ)申込者及び合格者を学歴別にみると、大学卒業者等の占める割合は、申込者の83.1%(前年度82.6%)、合格者の83.4%(同83.2%)、大学院修了者等の占める割合は、申込者の11.8%(同12.1%)、合格者の15.0%(同15.5%)となっている。短期大学・高等専門学校等及び高等学校・その他の学歴を有する者は、申込者の割合が5.2%(同5.4%)であるのに対して、合格者は1.6%(同1.3%)にとどまっている。(資料1−12)
- (ウ)II種試験においても女性の進出は目覚ましく、申込者については、本試験が創設された昭和60年度の10,233人(全申込者の19.8%)に対し、平成17年度は18,889人(同30.7%)と1.8倍になっているが、前年度に比べると2,599人(12.1%)減少している。(資料1−11)
また、合格者数は、創設当時の602人(全合格者数の11.7%)に対し、平成17年度は1,422人(同26.8%)と2.4倍で、前年度1,663人(同26.1%)に比べると241人減少したが、合格者全体に占める割合は前年度と比べ0.7ポイント上回っている。 - (エ)申込者及び合格者の出身大学(大学院を含む。)を国・公・私立別にみると、申込者では私立大学が56.4%(前年度56.4%)、国立大学が33.3%(同33.1%)を占め、合格者では私立大学が44.5%(同47.7%)、国立大学が47.5%(同44.5%)となっている。(資料1−13)
- (ア)申込者数は26,370人、合格者数は2,002人である。これを前年度と比べると、申込者は3,720人(12.4%)、合格者は245人(10.9%)それぞれ減少している。(表1−2)
- (イ)III種試験は高等学校卒業程度の試験として実施しているが、受験資格を税務区分では20歳未満、行政事務及び技術系の区分では21歳未満としている。行政事務、税務及び技術系の区分の学歴の状況についてみると、全体に占める高等学校卒業者等(卒業者、在学者、中退者をいう。)の割合は、申込者で46.4%(前年度48.9%)、合格者で36.7%(同38.7%)といずれも前年度より減少している。(資料1−14)
- (ウ)女性の申込者及び合格者について前年度と比較してみると、申込者数は9,144人(前年度10,689人)、申込者に占める割合は34.7%(同35.5%)、合格者数は657人(同695人)、合格者に占める割合は32.8%(同30.9%)となっており、申込者割合では前年度をわずかに下回ったものの、合格者割合では前年度をやや上回った。(資料1−11)
I種試験及びII種試験の「行政」区分については、点字試験を行っている。また、視覚障害の程度によって、I種試験、II種試験、III種試験、国税専門官採用試験及び気象大学校学生採用試験については、拡大文字による試験、解答時間の延長等の措置を講じている。
平成17年度においては、点字試験の申込者はなく(前年度I種試験1人)、拡大文字試験及び試験時間延長措置による試験の申込者は、II種試験2人(同3人)、III種試験2人(同3人)であった。
なお、平成17年度の試験では合格者はいなかった。
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