前(節)へ 次(節)へ
第1編 人事行政
第2部 平成17年度業務状況
第15章 人事院総裁賞及び国民各層との意見交換等
第2節 国民各層との意見交換等
人事行政を適切に運営していくためには、国民各層から公務に対する率直な意見を聴取するとともに、公務に対する理解を得ることが重要である。このため、人事院は、給与や人材の確保・育成をはじめとした人事行政の諸問題について、経済界、言論界、学界、労働界等の各界有識者等と幅広く意見交換を行っているほか、国民から広く定期的に意見等を聴取するため、「国家公務員に関するモニター」を委嘱している。
また、公務の職場を実際に紹介することを目的として、報道機関の論説委員等や国民の方々を対象とした職場訪問を実施している。
これらの機会に出された意見については、制度改正などを通じ、人事行政の方針の策定や運営面に反映させていくこととしている。
1 公務員問題懇話会(1) 中央における開催
昭和59年度以降、東京都において公務員問題懇話会を毎年開催している。平成17年度は、7月6日に各界有識者7名を招き、人事行政全般に関する諸問題について、人事院総裁、国家公務員倫理審査会会長及び事務総長と意見交換を行った。(表15−2)
▲公務員問題懇話会(東京)

地方の実情を的確に把握するため、昭和62年度以降、各地方都市においても公務員問題懇話会を開催している。平成17年度は、6月に札幌市、京都市及び熊本市の3都市において、それぞれの地域の各界有識者と人事院総裁をはじめとする人事院幹部とで意見交換を行った。(表15−2)
(3) 主な意見- ○ 国家公務員の人数や給与水準等を議論する前に、公共サービスとは何かといった重要な視点が欠けている。官がする仕事、民がする仕事の整理をしなければならない。
- ○ 公務員給与を減額することだけが目的の改革は誤り。国民のための行政という視点で、成熟国家として専門性や効率性の高い行政を遂行していくためにはどのような改革が必要かという視点で、ものを見るべき。
- ○ I種、II種、III種という入口で一生が決まるシステムでは能力主義を導入しても難しい。入ってから、適性に応じて能力を育てていくチャンスをすべての公務員に与えることが必要。
- ○ 世界的にみても日本の女性の登用数は少ない。公務員で実績が上がれば民間も進むので、公務が女性の採用・登用の拡大をけん引すべき。
- ○ 政治任用を導入すべき。閉ざされた純血主義の組織に民間の新しい血を入れることが必要。
- ○ 縦割りの弊害を防止するためには、幹部職員を育てていく過程で他省庁や内閣官房への出向もある程度義務づけ、国全体の立場からの調整が重要であると認識させることが必要。
- ○ これからの公務を担っていく若い職員には、社会的弱者を思いやれる、人間としての幅を広げる、公務員としての良識を高めるような体験的な研修を取り入れていくことが必要。
- ○ 職員が生き生きと働いて組織が活性化するためには人事に対する職員の信頼が重要。成果主義を導入する場合には、できる限り具体的に公平で客観的な基準を策定した上で実施すべき。
- ○ 公務員の評価は、サービスを提供する側よりサービスを受ける側がする方が的確。省益のために働いた人が「優秀」と評価されるこれまでの基準は改めるべき。
- ○ 勤務成績に基づく査定昇給制度の導入やボーナスにおける成績査定を強化することは大事。実際に行うとなると、透明性、公平性を確保する必要があり困難なところもあるが、まず制度を作ることが必要。
- ○ 立派に仕事をする公務員には民間より高い給与でよい。仕事をしないでたくさん給与をもらっているから批判が起きる。仕事をしない者は、20%、30%下げる制度にすべき。
- ○ 地方の時代とか地方の活性化と言われているのに地方の給与を一律に下げるのはいかがなものか。地方に良い人材が来なくなることが気がかり。同一仕事同一賃金という感覚からは、国家公務員の給与に格差があるのはおかしい。
- ○ 官民がもっと正々堂々と対話できるシステムを作ることが必要。官民相互の情報交換がうまくいかないことは国益にも関わる問題である。
- ○ 権限を背景に天下りすることは良くないが、職員の能力を査定し、本人の希望も聞き、国がヒューマンインベントリー(人材の情報)を横断的に管理した上で、日本経団連等が求める人材がいれば活かすべき。
- ○ 公務員の状況について広報を十分に行えば、公務員に対する理解が深まるのではないか。
●表15−2 公務員問題懇話会出席者

平成17年度は、全国38都市において中小企業経営者、報道機関の論説委員等を対象に、公務員給与を中心として率直な意見交換を行った。
ここで出された意見の主なものは、次のとおりである。
- ○ 官民比較の対象企業規模は、民間企業従業員の過半数をカバーしているのであれば、妥当なものと考える。
- ○ 民間企業の80%は中小零細企業なので、調査対象企業規模はもう少し下げるべき。
- ○ 納税者から見て、透明性、公正性が確保されれば、重要な仕事をする優秀な公務員は給与水準が高くても問題はない。
- ○ 民間賃金の低い地域の水準をベースにして、民間賃金の高い地域は手当などでプラスする方法でいいのではないか。
- ○ 全国で同じ仕事をしているのなら、地域ごとに官民の給与水準を合わせなくても全国平均で合っていればいいのではないか。
- ○ メリハリのある査定とし、特に成績不良者に対して適正な査定ができる制度とすべき。
- ○ 公務という仕事の内容からして、職員の評価をどうやっていくかというのは非常に難しい問題である。
- ○ 公務員が仕事をせずに在職するのは問題外だが、能力や経験を活かして仕事をやるなら長期雇用も異論はない。
- ○ 公務員給与の在り方については、生涯賃金や福利厚生を含めて見ていく必要がある。
国民から広く定期的に意見・提言等を聴取し、今後の人事行政の展開の参考とするため、平成11年度より毎年「国家公務員に関するモニター」500人を募集し、アンケート調査を実施している。
平成17年度においては、主に国家公務員制度と給与勧告、公務員倫理などについて調査を実施した。これらの調査結果は給与勧告をはじめとする人事院の施策の検討の際の参考としている。
4 論説委員等の職場訪問国家公務員の勤務実態について広く国民各層の理解を得るため、報道機関の論説委員等や国民の方々を対象として国家公務員の職場訪問を実施している。平成17年度は海上保安業務、河川整備業務等の官署へ職場訪問を行った。
前(節)へ 次(節)へ