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第1編 人事行政
〔人事行政の動き〕
幹部公務員の不祥事や各行政分野における行政の適切とはいえない対応などに起因して、国民の行政や公務員に対する目は厳しい。今や公務への国民の信頼を回復することが何より求められている。また、行政の在り方をめぐってセクショナリズムの弊害是正や政と官の在り方などの課題も提起されてきている。
こうした状況の下、平成19年7月、能力・実績主義に基づく人事管理の徹底や退職管理の適正化等を内容とする国家公務員法の改正が行われた。また、同年10月には、政府の行政改革推進本部専門調査会において、一定の非現業公務員に対し労働協約締結権を付与すること等を盛り込んだ報告書が、さらに、平成20年2月、内閣総理大臣の下に置かれた「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」で、政・官の接触の集中管理、新たな試験制度の構築、人事一元管理機関の設立などを提言する報告書が取りまとめられた。懇談会の報告書を受けた政府は、公務員制度の総合的な改革を推進するための基本的方針を盛り込む国家公務員制度改革基本法案を第169回通常国会に提出したところである。
「全体の奉仕者」(日本国憲法第15条第2項)とされる公務員には、国民本位の行政運営を実現すべく、公務に対する高い使命感と倫理観をもって与えられた職務に専念することが求められている。公務員制度は、そうした使命感と倫理観を兼ね備えた公務員集団を形成すべく、多様な有為の人材を確保・育成し、適切に配置・処遇し、高い士気と意欲をもって勤務させることを目的としている。
人事行政を担う中立第三者機関・専門機関である人事院は、上述の目的を達成すべく次のような諸課題に取り組んできている。人事院としては、引き続き、必要な改革の実現に向けて、その役割を適切に果たしていきたい。
- ○ 能力・実績に基づく人事管理を徹底するため、その基盤的なツールとなる人事評価制度の整備に向けて、総務省と合同で本府省の一般行政職員を対象とした試行を実施してきているが、平成19年度には、対象を地方機関・専門職種の職員に拡大して試行を行った。
- ○ いわゆる「キャリア・システム」については、「採用時1回限りの選抜」や「年次による一律昇進」等の批判があり、それらを踏まえ、新たな幹部要員の確保・育成の在り方について、人材確保に与える影響も踏まえつつ、採用試験の在り方も含めた検討を行った。
- ○ 給与制度について、平成18年度から地域の民間賃金をより適切に反映させるための地域間給与配分の見直し、年功的な給与上昇の抑制と職務・職責に応じた俸給構造への転換、勤務実績の給与への反映の推進などを柱とする俸給制度、諸手当制度全般にわたる給与構造改革を実施している。平成19年の人事院勧告では、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、在職期間の長期化に対応する観点から、複線型人事管理の導入に向けての環境整備の一環として、専門スタッフ職俸給表を新設した。
- ○ 公的年金支給開始年齢の65歳への段階的引上げにより、平成25年度定年退職者から無年金期間が発生する。一方、民間企業の従業員には、既に年金支給開始年齢までの雇用継続を図る制度が導入されている。このため、公務における高齢期の雇用確保策について、学識経験者から成る研究会を開催し、公務員の高齢期の雇用確保の在り方について幅広く検討を進めた。
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