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第1編 人事行政
【第1部】 今後の幹部要員の確保・育成の在り方 〜民間企業や諸外国の実態を踏まえて〜
はじめに
行政課題が複雑化・高度化する中で、効率的で質の高い行政運営を行うためには、幹部行政官が全体の奉仕者としての高い志や倫理観とともに行政に関する専門的知見、幅広い視野を有することが不可欠であり、そのためには、その要員を確保し育成することが極めて重要である。
いわゆる「キャリア・システム」については、幹部要員の確保・育成に寄与してきた側面があるとの見方がある一方、従来から、「採用時の1回限りの選抜で、生涯にわたる昇進コースまでが決定されるのは不合理である」、「閉鎖的なキャリア・システムが特権的な意識を生じさせている」などの批判がなされてきた。
このような中、人事院は、かねて能力・実績に基づく人事管理の推進に努めるとともに、その一環として優秀なⅡ種・Ⅲ種試験採用職員の登用を図ってきたところである。すなわち、登用指針などを示しつつ各府省の人事運用の改善を求めるとともに、自ら登用研修の実施を進めてきている。平成19年の給与勧告時の報告においては、今後の幹部要員の確保・育成について、第一に、「採用時の1回限りの選抜」によることなく、公平で効果的な能力・実績に基づく選抜を行うことについて、第二に、複雑化・高度化した行政需要に機動的に対応できる幹部要員を訓練し育成する仕組みを構築していくことについて、広く国民の合意が形成される必要がある旨述べ、人事院としても採用試験の在り方も含めて検討する旨を表明した。
また、平成20年2月に総理に提出された「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」報告書においては、幹部候補を事実上固定化するような「キャリア・システム」の廃止及び採用試験制度の再構築、幹部候補を総合的計画的に育成する人事・選抜制度(幹部候補育成課程(仮称))の導入などが提言され、次いで同年4月、この報告書を受け、国家公務員制度改革基本法案が政府より国会に提出されたところである。
本稿においては、幹部要員の確保・育成について、今後の検討の参考に資するよう、歴史的経緯及び現状を整理した上、民間及び諸外国公務員における幹部要員の選抜・育成の実態等を紹介することとしたい。併せて今後検討を進めるに当たっての留意点も整理することとする。
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