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第1編 人事行政

【第1部】 今後の幹部要員の確保・育成の在り方 〜民間企業や諸外国の実態を踏まえて〜

第1節 幹部要員の確保・育成の歴史的経緯及び現状

2 現状


(1) 採用

採用試験結果に基づき平成19年度に採用された者は6,132人であり、このうちⅠ種試験からの採用者数は事務系288人、技術系302人で、大多数が本省に採用されている。

Ⅱ種試験からの採用者は1,822人であり、このうち行政区分からの採用者数は1,378人である。行政区分のうち本省採用者数は304人と、Ⅰ種試験・事務系採用者数とほぼ同じ規模となっており、残りの約千人は地方機関等採用となっている。Ⅱ種試験・技術系区分からの採用者数は444人であり、そのうち本省採用者数は71人となっている。

Ⅲ種試験からの採用者数は1,073人であり、そのうち本省採用者数は138人となっている。その他、国税専門官試験825人、刑務官試験811人等がいる。

(2)在職状況

行政職俸給表{1}及び指定職俸給表適用職員の試験別在職状況は図1のとおりである。Ⅰ種試験採用職員が本省室長クラス以上に占める割合をみると、本省室長クラスである行{1}7級及び8級ではそれぞれ約33%、約60%、本省課長クラスである9級及び10級ではそれぞれ約85%、約90%、事務次官・局長・審議官クラスの指定職では約88%となっている。本省課長クラス(9級、10級)及び指定職のうち、Ⅱ種・Ⅲ種試験採用職員や選考採用職員が占める割合は、1割強である。

上記のとおり、Ⅰ種試験による採用は制度上幹部要員たることを意味するものではないが、各府省における人事運用としては、Ⅰ種試験が実質的に幹部要員の採用試験としての機能を果たしていることは否定できない。

Ⅰ種試験採用職員のうち事務系の昇進状況をみると、各府省により違いがあるが、おおむね採用8年前後で課長補佐級となり、15〜16年後に室長級、21〜23年後に課長級に昇進している。ただし、本省課長級にならない者もいるほか、指定職に昇任せずに退職する者もかなり存在する。指定職になる場合は、27、28年後から昇進している。

[図1] 行政職俸給表{1}及び指定職俸給表適用職員の級別試験等別在職状況(平成19年1月15日現在)

Ⅰ種試験採用職員のうち技術系の昇進状況については、事務系採用職員よりも各府省間の違いが更に大きいが、全般的に事務系より昇進が遅いことが多く、本省課長級に昇任しない者も事務系に比べ多い。

Ⅱ種・Ⅲ種試験採用職員の昇進状況は府省ごと、機関ごとに相当の差がある。なお、府県単位機関の長をはじめ出先機関の管理職の多くは、Ⅱ種・Ⅲ種試験採用職員で占められているほか、後述のとおり、これらの職員の幹部への登用も進んでいる。

(3) 人材育成

職員を育成するため、各府省は所属する職員に対してそれぞれの専門領域等に関する研修を実施している。一方、人事院は、広い視野と柔軟な発想、豊かな感性と高い倫理観、国際感覚など国民全体の視点に立つために求められる資質を向上させ、全体の奉仕者としての使命感を徹底させるための研修を実施している。

人事院は、Ⅰ種試験採用職員に対して、採用直後に合同初任研修(総務省と共催)を実施するとともに、採用2〜3か月後に5週間の初任行政研修を実施している。初任行政研修においては、公務員としての心構えを植え付けるほか、行政の現場や行政と国民との接点を体得させるため地方自治体、介護施設等の現場体験研修もカリキュラムに盛り込んでいる。その後も人事院は、階層別の行政研修を通じて、全体の奉仕者としての意識や行政官としての素養を高めるとともに、幹部要員としての幅広い視野やものの見方を培うこととしている。

また、人事院は、行政官長期在外研究員制度、行政官国内研究員制度により、海外や国内の大学院に留学する機会を与え、国際化・高度化する行政に対応し得る行政官の育成に努めている。

このほか、Ⅰ種試験採用職員には、人事ローテーションによって他府省への出向、地方機関や在外公館の勤務等の幅広い経験の機会が付与されている。

なお、平成6年12月の閣議決定において、将来の行政の中核的要員と見込まれる職員について、本府省課長職に就くまでの間に、他府省、国際機関等における勤務を原則として2回以上経験させることとされている。

他方、人事院は、Ⅱ種・Ⅲ種試験採用職員の幹部職員への登用を推進していくため、平成11年3月に「Ⅱ種・Ⅲ種等採用職員の幹部職員への登用の推進に関する指針」を各府省に示し、その取組を促している。さらに平成11年度から各府省の幹部登用候補者を対象に「行政研修特別課程」を実施している。この研修の修了者は、その後の多様なポストの経験や研修等を通じて、幹部登用に向けて計画的に育成されることになっている。平成19年度までの特別課程の修了者数は、係長級が885人、課長補佐級が450人などとなっている。

加えて平成12年度から、係長級特別課程修了者から選抜した者を、行政官短期在外研究員制度特別コースにおいて米国連邦政府機関に1年間派遣している。

平成18年度において、各府省が行った新たな幹部ポストへのⅡ種・Ⅲ種試験採用職員の登用数は、指定職が7府省13人、本府省課長等が19府省46人、地方支分部局長等が10府省60人の計119人である。18年度末時点でこれら幹部ポストに就いているⅡ種・Ⅲ種試験採用職員の数は357人(指定職:106人、本府省課長クラス:251人)である。また、各府省においては上記の指針に基づき、登用推進のため、従前Ⅰ種試験採用職員が就いていた企画立案等のポストへの任用、出向ポストの拡大等の取組も進めている。(表1

[表1]Ⅱ種・Ⅲ種採用職員の登用状況(平成18年度)

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