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第1編 人事行政
【第2部】 人事行政この1年の主な動きと今後の課題
Ⅰ 能力・実績に基づく人事管理の推進
1 人事評価制度の整備
(1) 新たな人事評価の第2次試行
公務員のモラールを高め、行政運営の効率化を図っていくためには、能力・実績に基づく人事管理を進めていく必要がある。その基盤的ツールとして、客観的で公正性・透明性が高く、実効性のある人事評価制度を整備することが重要である。
人事院は、総務省と共同で、各府省、職員団体等の関係者間で十分な協議を行った上で、新たな人事評価の基準の妥当性や手法の実効性等を検証することを目的として、平成19年1月から6月に再度、新たな人事評価制度の試行を実施した。その実施結果は以下のとおりである。
本府省一般行政職の課長級、課長補佐級、係長級及び係員級の職員から抽出
(参加者数 被評価者:約9,000人、評価者:約2,000人)
2 試行期間平成19年1月から6月までの6か月間
3 試行内容等- ♦ 職務行動を通じて職務遂行に必要とされる能力を見る職務行動評価部分と業務の実施結果を見る役割達成度評価部分から成り、いずれも絶対評価を行う。
- ♦ 自己評価、上司との面談、評価内容のフィードバックを実施する。
- ♦ なお、第1次試行からの主な変更点は以下のとおりである。
- − 被評価者の範囲を係長級、係員級まで拡大
- − 評価項目・視点を分かり易く簡素化
- − フィードバックにおけるきめ細かい指導・助言を徹底
- ♦ 評価手法について、役割達成度評価、職務行動評価とも、約7割の評価者、被評価者が「有益」と回答している。
- ♦ 自己評価について、評価者、被評価者のいずれも「有益」とする回答が多数であったが、評価者からは「評価が過度に自己評価に影響される」などの意見があり、また、被評価者からは「自己評価は被評価者の性格に影響される」などの意見があった。
- ♦ 面談について、評価者、被評価者のいずれも「有益」とする回答が多数であったが、評価者からは「面談に係る準備や作業が膨大である」などの意見があり、被評価者からは「面談により仕事の時間を取られる」などの意見があった。
- ♦ 評価内容のフィードバックについて、評語や評価内容の概要の開示を受けなかった被評価者の満足度は、開示を受けた被評価者と比べると、低くなっている。
- ♦ 評価サイクルについては、評価結果の活用や府省間交流の観点から各府省で統一すべきではないかという意見がある一方、業務実態等に合わせて各府省ごとに設定すべきではないかという意見もあった。
- ♦ 係長・係員の目標設定が難しかったとの意見もあった。
- ♦ 評価結果の開示については、評価結果を活用する以上は開示する必要があるという意見がある一方、開示に慎重な意見もあった。
- ♦ 苦情処理の在り方については、職員団体等の職員代表が関与する必要があるという意見がある一方、職員代表の関与は適当ではないという意見もあった。
(2) 平成19年給与勧告時の報告
平成19年7月に公布された国家公務員法等の一部を改正する法律により、能力・実績に基づく人事管理を推進するため、公布の日から2年以内に新たな人事評価制度を整備することとされた。人事院は、平成19年給与勧告時の報告において、これまでの試行結果を踏まえ、人事評価制度の基本的枠組み並びに評価結果の任免、給与及び人材育成への活用について考え方を表明した。その概要は以下のとおりである。
- ○ これまでの試行結果を踏まえ、新たな人事評価制度の基本的枠組みを整理すると、以下のとおり。
- ♦ 職務行動と役割の達成状況を評価。
- ♦ 期首・期末に評価者と被評価者が目標設定などについて面談を実施。
- ♦ 評価者の上位者が調整を実施。
- ○ 上記枠組みを前提とした、評価結果の任免、給与及び人材育成への活用についての考え方は以下のとおり。
- ♦ 任免 - 任用は、人事評価に基づき、各人の個別の官職に対する適性等を踏まえて行うことが必要。分限については、一定以下の低い評価を処分の契機としつつ、処分に当たっては評価結果を活用することが必要。
- ♦ 給与 - ①昇給については、原則として過去1年間の評価結果を活用し、項目別の評価や所見等も含めて勤務成績の判断を行い、昇給区分を決定すること、②昇格については、現に属する職務の級の在職期間における評価結果を活用すること、③勤勉手当については、役割達成状況の評価結果を基本として勤務成績を判断し、成績率を決定すること、がそれぞれ必要。
- ♦ 人材育成 - 評価結果を考慮して、計画的に職員の能力開発等を進めるとともに、職員自身が自発的に能力開発を進めるよう促していくことが必要。
- ○ 今後、実効性のある人事評価制度の整備に向けて、試行の実施と並行しながら、評価結果のフィードバック及び苦情処理を含む人事評価制度の全体的枠組みや、評価結果の任免、給与及び人材育成への活用について、各府省や職員団体等の関係者間の協議を推進。
(3) 地方機関・専門職種の職員を対象とした試行
第2次試行後、それまでの試行の対象とされていなかった地方機関・専門職種の職員を対象とした試行の実施に向け、各府省や職員団体との間で検討・協議を行った。
平成19年8月8日、各府省人事担当課長等から成る人事管理運営協議会幹事会において、地方機関・専門職種の職員を対象とした試行についての申合せがなされ、同年10月より試行が開始された。この試行の実施状況は以下のとおりである。
地方支分部局等の一般行政職員、本府省・地方支分部局等の専門職種職員から抽出
(参加者数 被評価者:約70,000人、評価者:約19,000人)
※上記の参加者数には、本試行の対象となっていない本府省の一般行政職員の参加者数(被評価者:約8,000人、評価者:約1,000人)を含む。
2 試行期間平成19年10月から平成20年3月までの6か月間
3 試行内容等- ♦ 試行内容については、基本的に第2次試行と同様である。
- ♦ なお、第2次試行からの主な変更点は以下のとおりである。
- - 地方機関・専門職種の職員を対象
- - 職務行動評価の評価項目・視点について、試行対象の業務実態等に合わせて見直し
試行対象者の人事評価に関する理解を深めて、試行の円滑な実施を図るため、試行の実施に先立ち、全国10ブロックにおいて評価者、被評価者及び人事担当者に対する説明会をそれぞれ開催した。
(4) 今後の取組
これまで実施してきた試行結果を踏まえ、評価結果のフィードバックや苦情処理を含め、人事評価制度の整備に向けて、各府省や職員団体等の関係者間の協議を進めていくが、制度設計に当たっては、人事院は、人事行政の公正の確保や職員の利益保護を図る観点から必要な意見を述べていくこととしている。また、評価結果の任免、給与及び人材育成への活用についても、新たな人事評価制度の整備に併せて結論を得るべく検討を進めることとしている。
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