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第1編 人事行政
【第2部】 人事行政この1年の主な動きと今後の課題
Ⅲ 適正な公務員給与の確保
1 平成19年の報告と勧告
(1) 平成19年勧告のポイント
平成19年8月8日、国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与等について報告するとともに、その給与の改定について勧告を行った。そのポイントは、以下のとおりである。
- 民間給与との較差(0.35%)を埋めるため、初任給を中心に若年層に限定した俸給月額の引上げ(中高齢層は据置き)、子等に係る扶養手当の引上げ、平成19年度の地域手当支給割合のさかのぼり改定
- 期末・勤勉手当(ボーナス)の引上げ(0.05月分)
- 給与構造改革の一環としての専門スタッフ職俸給表の新設
この勧告を行うに当たって、人事院は、職員団体や各府省の人事当局から、例年同様、きめ細かく意見聴取を行った。また、東京のほか全国42都市で有識者との懇話会、中小企業経営者等との意見交換を行ったほか、人事院が委嘱している「国家公務員に関するモニター」(500人)に対するアンケート調査を実施するなど、広く国民の意見の聴取に努めた。
(2) 民間給与との較差に基づく給与改定
平成19年の給与勧告を行うに当たり、例年同様、春季賃金改定後の民間企業の給与実態調査を行ったところ、ベースアップを実施した事業所の割合が前年より増加していたほか、定期に行われている昇給を実施した事業所の割合も前年より増加していた。また、初任給について、増額となっている事業所の割合が前年より増加しているとともに、新卒事務員・技術者の初任給の平均額が前年よりも大幅な増額となっていた。
このような状況において、平成19年4月分の月例給の民間給与との比較を行った結果、公務員の月例給与が民間給与を1,352円(0.35%)下回っていたため、月例給について、次のような改定を行うこととした。
- ア 民間との間に相当の差が生じている初任給を中心に若年層に限定した俸給の引上げ
- イ 扶養手当について、民間の支給状況等を考慮するとともに、少子化対策の推進にも配慮し、子等に係る支給月額を500円引上げ(6,000円→6,500円)
- ウ 地域手当について、給与構造改革における重要な課題の一つである地域間給与配分の見直しを着実に実施するため、地域手当の級地の支給割合と平成18年3月31日における調整手当の支給割合との差が6%以上の地域において、平成19年度分として0.5%の引上げを追加
また、特別給について、民間の年間支給割合と公務の年間支給月数を比較した結果、民間が上回っていたことから、0.05月分引き上げることとした(4.45月分→4.5月分)。これらにより、9年振りに職員の平均年間給与が増加することとなった。
(3) 給与構造改革
国家公務員の給与制度の基本である職務給の原則、成績主義を推し進めるとともに、地域における公務員給与水準の適正化を図るため、平成17年の給与勧告時の報告において、給与制度の抜本的な改革を行うことを表明し、平成18年度から平成22年度までの5年間で計画的に改革を実施している。
この給与構造改革は、俸給表水準の引下げを実施しつつ、逐次、手当の新設等の措置を講ずるものであり、表2のとおり、現在、段階的に進行している。
ア 平成20年度において実施する事項平成20年度においては、以下の施策について所要の措置を講ずることとした。
(ア) 専門スタッフ職俸給表の新設行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、在職期間の長期化に対応する観点から、複線型人事管理の導入に向けての環境整備を図るため、専門スタッフ職俸給表を新設する。
専門スタッフ職俸給表が適用される職員(以下「専門スタッフ職職員」という。)は、公務における長年の行政経験を通じて蓄積した高度の専門的な知識や経験を活かしつつ、ライン職では十分にカバーできないような調査、研究等を自律的に行うことにより、政策の企画、立案等の支援を行うこととなる。その際、専門スタッフ職職員が自らの調査、研究等の活動を充実させるため、比較的自由に外部の研究者等との交流を行うことも可能となる仕組みを整備することが適当である。
これらの観点から、専門スタッフ職職員に適用される制度については、次のとおりとする。
① 俸給表の適用範囲専門スタッフ職俸給表は、行政における特定の分野についての高度の専門的な知識経験が必要とされる調査、研究、情報の分析等により、政策の企画及び立案等を支援する業務に従事する職員で人事院規則で定めるものに適用する。
なお、専門スタッフ職俸給表の適用に当たっては、上記の適用範囲に沿った職務を内容とする官職を整備することが必要となる。
② 俸給表の構成専門スタッフ職俸給表は、3級構成とし、各職務の級の水準は、本府省の課長補佐級から課長級までの水準を基礎としたものとする。
③ 専門スタッフ職俸給表への異動時における俸給月額の決定専門スタッフ職俸給表に異動した場合の職務の級は、その者の占めることとなる官職の職務に応じて決定する。また、号俸は、人事院規則で定める対応表を用いて決定する。
④ 昇給専門スタッフ職俸給表の2級、3級職員については、特に高度の専門的な知識経験に基づいて成果を出すことが求められることから、より成果に着目した昇給の仕組みとするため、表3の昇給区分に応じた昇給号俸数を適用する。また、専門スタッフ職俸給表1級職員については、行政職俸給表(1)の6級以下の職員と同じ昇給号俸数を適用する。
⑤ 諸手当ⅰ 専門スタッフ職調整手当
専門スタッフ職調整手当は、専門スタッフ職俸給表3級職員のうち、極めて高度の専門的な知識経験及び識見を有する職員であって、当該知識経験及び識見を活用して遂行することが必要とされる特に重要な業務で特に困難なものに従事する職員として人事院規則で定めるものに支給する。手当額は、俸給月額に100分の10を乗じて得た額とする。
ⅱ 管理職員特別勤務手当等専門スタッフ職俸給表の2級、3級職員については、管理職員特別勤務手当の支給対象とし、超過勤務手当、休日給及び夜勤手当の支給対象としない。
また、専門スタッフ職職員については、俸給の特別調整額の支給対象としない。
ⅲ 勤勉手当専門スタッフ職職員は、自律性を発揮して職務を遂行し、成果を出すことが期待されることから、他の俸給表と比べて、成果をより強く反映し得る仕組みとするため、勤勉手当の成績率を表4のとおりとする。
⑥ 勤務時間の弾力化
専門スタッフ職職員については、調査、研究等の業務を自律的に行うこと及びそれらの業務を集中的・継続的に行う必要がある場合があることを踏まえ、専門スタッフ職職員の勤務時間について、当該職員の申告を経て、4週間ごとの期間につき各省各庁の長が割り振る仕組みとする。
(イ) 地域手当の支給割合地域手当の支給割合は、平成22年3月31日までの間は、地域手当の級地の区分ごとに人事院規則で定める暫定的な支給割合とすることとされており、平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間の支給割合については、前記(2)の改定内容、支給地域における職員の在職状況等を踏まえ、表5のとおりとする。
イ 勤務実績の給与への反映の推進勤務実績の給与への反映について、より実効あるものとしていくためには、各府省における運用の在り方が極めて重要となる。すなわち、職員の勤務実績に基づき、昇給及び勤勉手当の人員分布率や勤勉手当の成績率の基準等に沿って適正な成績判定を行うとともに、成績不良者について判定基準に照らし厳格に下位の成績区分を適用することが求められる。
平成18年度における管理職層に係る昇給制度の運用状況及びその他の職員を含む勤勉手当制度の運用状況をみると、上位の成績区分に決定された者の割合が人員分布率におおむね合致しているなど、その趣旨に沿った取組が進められているものと認められた。
今後においても、昇給制度や勤勉手当制度の運用状況について必要なフォローアップを行い、その結果も踏まえつつ、勤務実績の給与への反映について一層推進していくこととする。
また、新たな人事評価制度の導入に当たっては、評価結果を給与決定の基礎資料として用いることにより勤務実績の給与への反映の一層の推進を図ることとし、その給与への活用方法について、引き続き検討を進めることとする。
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