前(節)へ 次(節)へ
第2編 国家公務員倫理審査会の業務
第1部 倫理制度に関するこの1年の主な動きと今後の課題
2 倫理制度に関する意見聴取
倫理審査会では、倫理保持施策の参考とするため、倫理制度や公務員倫理をめぐる諸問題について、各界から幅広く意見を聴取しており、また、各府省における倫理法・倫理規程の運用実態、倫理法・倫理規程に対する要望等の把握にも努めている。
(1) 有識者との懇談会等
倫理審査会では、倫理規程が施行されて以降、各界の有識者から、職員の倫理保持の状況や倫理制度に対する評価、倫理保持のための施策などについての意見聴取を続けているが、平成19年度は、東京及び大阪市において、企業経営者、地方自治体の人事委員会委員長、学識経験者、報道関係者等、各界の有識者と倫理審査会の会長や委員との懇談会を開催したほか、経営倫理学の学識経験者と倫理審査会会長との公務員倫理に関する対談を実施し、倫理法・倫理規程に対する評価、公務員倫理を保持するための施策など、倫理制度に関する様々な意見を聴取した。
また、各府省の官房長等との懇談会を実施し、各府省における倫理法・倫理規程の運用状況や、業務への影響、倫理法・倫理規程に対する要望事項などを聴取した。
- ○ 公務員に採用されて月日が経つと、自分たちが執行しているお金が国民の税金なんだという感覚が薄らいでいく。税金は黙っていても入ってくるので、予算を使い切らないといけないという発想になっている。その感覚ですべてが動いているので、倫理、倫理と言っても胸には響いてこない。
- ○ 一番大事なのは、それぞれの仕事における使命感をしっかりと持つことである。そうすれば、裏金作りのように、長年組織の慣行としてやってきたことでも、おかしいという意識がどこかで出てくると思う。
- ○ 地方では、トップの姿勢が職員に対して勇気を与えて改革が進んでいるのだと思う。トップの姿勢が大事である。
- ○ 公務と民間では、基本的なところでは何の差もないという意識に戻らないといけない。民間は仕事をしてからお金をもらうけど、公務員は、先にお金をもらって後で仕事をするので、民間がどれほど汗を流して頑張っているのか知らない。その感覚を少し変えないといけない。
- ○ 公務員批判は高まる一方であり、重労働も重なって、公務員の地盤沈下が起きていると思う。そういう地盤沈下の中で不祥事が起こり得る環境ができているのだと思う。この状況を認識し、どのような対策を講じていくかを検討しなければならない。
- ○ 国民から信頼される公務員となるために、公務員が目指すべき仕事の目標や役割は何かという議論が必要であると思う。本来は、国民のために公務のサービス性・生産性を上げることが目標であり、非効率な仕事のやり方を変えていく必要があるのではないか。
- ○ 公務員倫理の問題は、一言で言えば、公私混同ということが根源的な問題である。倫理の保持を図るためには、制度面も含めて、総合的な取組を行うことにより、公務員の意識改革を行っていく必要がある。
- ○ 公務員の中には、倫理法といってもあれは建前上の話だよと考えている者もいるのではないかと思う。これを変えていくためには、やはり、トップである大臣や事務次官が、裏表なく、倫理の問題は建前の話ではないということを常に徹底していく必要があると思う。
(2) 各種アンケート調査
ア 国家公務員に関するモニター及び公務員倫理モニターに対するアンケート調査平成19年11月、人事院が募集した「国家公務員に関するモニター」(市民モニター)500人、及び倫理審査会が各界有識者(企業経営者、地方自治体の長、学識経験者、新聞社論説委員、労働組合役員、市民団体関係者等)に委嘱した「公務員倫理モニター」(有識者モニター)200人に対して、公務員倫理に関するアンケート調査を実施した。
そのうち、国家公務員の倫理感についての印象、国家公務員の倫理の保持の状況、及び国家公務員の姿勢として不足しているもの・更に求められるものに対する基本的な評価は、次のようになっている。
(ア) 国家公務員の倫理感に対する印象国家公務員の倫理感に対する印象について質問したところ、「倫理感が低い」、「全体として倫理感が低いが、一部に高い者もいる」、「どちらとも言えない」と厳しい見方をしている者が、市民モニターでは50.3%、有識者モニターでは45.3%であった。(図1)
(イ) 国家公務員の倫理の保持の状況過去1年ほどの国家公務員の倫理の保持の状況を、幹部職員、一般職員のそれぞれについて質問したところ、平成18年度と比較して、市民モニター、有識者モニター共に「悪くなっている」と回答した者が増加し、特に幹部職員について、市民モニターでは16.6ポイント、有識者モニターでは18.3ポイント増加した。(図2)
(ウ) 国家公務員の姿勢として不足しているもの・更に求められるもの現在、国家公務員の姿勢として、不足している、あるいは更に求められると思うものがあるかを質問したところ、市民モニターでは「国の予算の財源は国民の税金であるという自覚」と回答した者が最も多く、有識者モニターでは「国家公務員としての使命感、責任感」と回答した者が最も多かった。(図3)
イ 中小企業に対するアンケート調査平成19年6月、全国中小企業団体連合会の協力を得て、全国の官公需適格組合(898組合)に対して、公務員倫理に関するアンケート調査を実施した。
そのうち、国家公務員の倫理感についての印象、倫理法・倫理規程の認知度、及び倫理法・倫理規程における行為規制に対する基本的な評価は、次のようになっている。
(ア) 国家公務員の倫理感に対する印象国家公務員の倫理感に対する印象について質問したところ、半数近く(48.4%)が「倫理感が高い」又は「全体として倫理感が高いが、一部に低い者もいる」と回答しており、「倫理感が低い」又は「全体として倫理感が低いが、一部に高い者もいる」と回答した者は約2割(20.6%)であった。(図4)
(イ) 倫理法・倫理規程の認知度倫理法・倫理規程の内容をどの程度知っていたかを質問したところ、「よく知っていた」又は「ある程度知っていた」と回答した者は約7割(65.0%)であり、「あまり知らなかった」又は「知らなかった」と回答した者は約4割(35.0%)であった。(図5)
(ウ) 倫理法・倫理規程における行為規制倫理法・倫理規程の行為規制について、どのように思うかを質問したところ、「妥当である」と回答した者は約7割(69.6%)であり、「厳しい」又は「どちらかと言えば厳しい」と回答した者は約2割(17.5%)、「緩やかである」又は「どちらかと言えば緩やかである」と回答した者は約1割(12.3%)であった。(図6)
前(節)へ 次(節)へ