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第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第1章 適正な公務員給与の確保

1 報告と勧告


平成24年8月8日、人事院は国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与等について報告し、給与の改定について勧告を行った。その内容は以下のとおりである。

(1)民間給与との較差に基づく給与改定
ア 月例給

平成24年の給与勧告を行うに当たり、例年同様、春季賃金改定後の民間企業の給与実態を把握するため、「職種別民間給与実態調査」を行った。また、「国家公務員給与等実態調査」を実施し、給与法が適用される常勤職員約26万人の給与の支給状況等について全数調査を行った。その際、国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律(平成24年法律第2号、以下「給与改定・臨時特例法」という。)により、平成24年4月1日から平成26年3月31日までの2年間、「我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑み」給与減額支給措置が講じられていることを踏まえ、平成24年4月における平均給与月額について、当該措置による減額前の額と当該措置による減額後の実際の支給額の双方を把握した。

両調査により、給与法に定める本来の給与額に基づく官民較差を算出したところ、国家公務員給与が民間給与を平均273円(0.07%)上回っており、他方、給与改定・臨時特例法に基づく給与減額支給措置による減額後の給与額に基づく官民較差を算出したところ、国家公務員給与が民間給与を平均28,610円(7.67%)下回っていた。

従来、官民給与の較差が小さく、俸給表及び諸手当の適切な改定を行うことが困難な場合には、月例給の改定を見送っている。他方、給与減額支給措置後で見た場合には、国家公務員の月例給が民間給与を7.67%下回っているが、この減額措置は国公法第28条に基づく民間準拠による給与水準の改定とは別に東日本大震災という未曾有の国難に対処するため、平成25年度末までの間、臨時特例として行われているものである。

以上の諸事情を踏まえ、平成24年は、月例給の改定を行わないこととした。

イ 特別給

平成23年8月から平成24年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、年間で所定内給与月額の3.94月分に相当しており、給与法の定めによる国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(3.95月)と均衡していた。

期末手当・勤勉手当についても給与減額支給措置の対象となっているが、この給与減額支給措置は、上記のとおり、民間準拠による給与水準の改定とは別に未曾有の国難に対処するため、臨時特例として行われているものである。

これらを踏まえ、平成24年は、特別給の改定を行わないこととした。

(注) 平成24年4月から平成26年3月末まで、給与法適用職員については、以下のとおり給与減額支給措置が講じられている。

  1  俸給月額
  (1)本省課室長相当職員以上(指定職、行(一)10~7級) △9.77%
  (2)本省課長補佐・係長相当職員(行(一)6~3級) △7.77%
  (3)係員(行(一)2、1級) △4.77%
   その他の俸給表適用職員については、行(一)職員に準じた支給減額率
  2  俸給の特別調整額(管理職手当) 一律△10%
  3  期末手当及び勤勉手当 一律△9.77%
  4  委員、顧問、参与等の日当 上限額を△9.77%
  5  地域手当等の俸給月額に連動する手当(期末・勤勉手当を除く。)の月額は、減額後の俸給月額等の月額により算出
(2)昇給・昇格制度の改正
ア 50歳台における官民の給与差の状況

官民の給与水準は、人事院勧告を通じて全体として均衡させているものの、50歳台、特に後半層における官民の給与差をみると、公務が民間を相当程度上回っている状況にある。このような官民の給与差の要因の一つとなっている給与構造改革における俸給表水準の引下げに伴う経過措置については、平成24年2月に成立した給与改定・臨時特例法において、平成26年3月末に廃止することとされたが、50歳台後半層における官民の給与差はなお相当程度残ることが想定される。

公務と民間では、昇進管理等の人事運用に相違もあることから、年代別の給与差が一定程度生じるのはやむを得ない面もあるが、世代間の給与配分を適正化する観点から、50歳台後半層における給与水準の上昇をより抑える方向で、早急に昇給・昇格制度の改正を行う必要がある。

イ 昇給制度の改正

現行の昇給制度は、平成18年4月からの給与構造改革において導入したものであり、職員の勤務成績に応じて5段階の昇給区分を設け、それぞれの昇給区分に応じて昇給号俸数を設定している。また、55歳を超える職員(行政職俸給表(二)及び医療職俸給表(一)にあっては、57歳を超える職員)の昇給号俸数については、他の職員の半分程度に抑制している。

今回、50歳台後半層における給与水準の上昇を抑制するため、給与法を改正し、昇給制度の見直しを行うこととした。具体的には、55歳を超える職員(行政職俸給表(二)及び医療職俸給表(一)にあっては、57歳を超える職員)については、標準の勤務成績では昇給しないこととし(現行は2号俸の昇給)、特に良好の場合には1号俸(現行は3号俸)、極めて良好の場合には2号俸以上(現行は4号俸以上)の昇給に、それぞれ抑制することとした。

ウ 昇格制度の改正

現行の昇格制度においては、職務と職責に応じた給与の観点から、昇格に伴い俸給月額が増加するよう昇格後の号俸を設定している。地方機関等では、50歳台において上位の職務の級への昇格が多いという人事運用があり、このことが特に後半層における給与水準の上昇の要因の一つとなっている。

このため、最高号俸を含む高位の号俸から昇格した場合の俸給月額の増加額を縮減するよう昇格後の号俸を設定することとし、規則に定める昇格時号俸対応表の見直しを行うこととした。行政職俸給表(一)の場合、3級以上の職務の級への昇格における号俸決定に当たり、昇格前の職務の級の高位の号俸から昇格する場合には現行より下位の号俸となるよう改正することとした。他の俸給表についても、同様の観点から改正を行う。

エ 改正の実施時期

昇給・昇格制度の改正は、平成25年1月1日から実施することとした。

オ 今後の取組

今回の昇給・昇格制度の見直しは、昇給や昇格に伴う俸給月額の増加を抑制することにより、今後の50歳台後半層における給与水準の上昇を抑制するものである。現在の50歳台の給与水準は、上記アのとおり、公務が民間を上回っており、今後とも、民間賃金の動向を踏まえ、毎年の給与改定における措置等、必要な対応について検討を進めることとした。


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