前(節)へ 次(節)へ

第1編 《人事行政》

【第2部】 幹部職員等の育成と選抜

はじめに


我が国では、新規学卒者を一括採用し、ジョブローテーションを繰り返しながら計画的に育成を図り、管理職員や幹部職員として選抜していく人事管理が一般的であるが、グローバル化に対応する業務などについて積極的に外部人材を雇用する人事管理を採り入れる企業もみられる。他方、国民に対し安定的、継続的に行政サービスを提供する必要のある公務においては、中核となる人材を部内育成によって供給していくことの重要性に変わりはないと見込まれる。このため、行政の専門性の確保と組織活力の維持向上を図るため、国民全体の奉仕者としての使命感や高い専門能力、マネジメント能力を備えた管理職員や幹部職員を計画的に育成し、選抜することは、人事行政上の最も重要な課題の一つとなっている。

国家公務員の管理職員・幹部職員の育成と選抜については、かねて旧国家公務員採用Ⅰ種試験から採用された職員(以下第2部において「旧Ⅰ種採用職員」という。)を管理職員・幹部職員の要員として特別に育成する人事運用、いわゆるキャリアシステムが採られてきた。こうした管理職員・幹部職員の育成・選抜の在り方に対しては、採用時における一回の試験で将来の管理職員・幹部職員を決めてしまうことは不合理ではないか、旧Ⅰ種採用職員の特権的意識を生む原因となっているのではないかなどの批判が行われてきたところである。

このような状況を踏まえ、人事院は、旧Ⅰ種採用職員についても能力・実績に基づいて厳正な選抜を行っていく必要があると提起するとともに、旧国家公務員採用Ⅱ種・Ⅲ種試験等から採用された職員(以下第2部において「旧Ⅱ種・Ⅲ種等採用職員」という。)の幹部職員への登用を進める取組を推進してきた。

また、平成19年の国公法の改正では、人事管理において「採用年次及び合格した採用試験の種類にとらわれてはならず」(国公法第27条の2)とする条文が新設され、同年の改正を受けて設けられた採用昇任等基本方針(閣議決定)においても、人事評価に基づき、「個々の職員が実際に発揮した能力及び実績を前提とした適材適所の人事運用を徹底する」ことが定められている。

さらに、平成24年度からは、キャリアシステムと慣行的に連関している採用試験体系を見直し、能力・実績に基づく人事管理への転換の契機とする等のため総合職試験及び一般職試験等を実施している。

本報告では、こうした取組の更なる推進に資するよう、管理職員・幹部職員の育成と選抜のシステムについて現状と課題を整理し、更なる見直しの方策等を提起することとしたい。

※ 幹部職員:事務次官、局長及び審議官(約600人)を想定
管理職員:本府省課長級職員(約1,600人)、企画官級職員(約2,000人)を想定


前(節)へ 次(節)へ
©National Personnel Authority
Back to top