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第1編 《人事行政》

【第2部】 幹部職員等の育成と選抜

第2章 国以外の幹部職員の育成・選抜の状況

第1節 民間企業における幹部職員の育成・選抜の状況

1 調査結果の概要

民間企業においては、採用段階で少数の者を幹部要員として選抜し、特別に育成するといった人事運用を行っている企業はほとんどみられなかった。ジョブローテーションを繰り返しながら、各職制段階における人事評価等に基づき管理職員・幹部職員として選抜されていくことが一般的である。

本社役員となり得る採用グループの区分けが「ない」とする企業は18社中7社であり、一方、本社役員となり得る採用グループとして、いわゆる総合職等がある企業は10社であったが、これらのグループは将来的に役員となる可能性があるということであり、幹部要員という位置付けで採用されているものではない。その他の1社については、採用者の全員が「グループ企業全体の幹部要員」という位置付けで採用されており、他社とは異なる独特の人事運用となっていた。

また、幹部候補者のための特別の育成プログラムは、半数以上の企業で実施されていた。

※ 各職制段階における昇進年数等の状況は、大学卒業者についてのものである。

(1)昇進年数等

同期一斉昇進(同一採用年次のほとんどの者が、採用後の一定期間、ほぼ一斉に昇進・昇格をする制度や慣行をいう。)が行われている企業は18社中8社であり、一斉昇進が行われていない企業が多かった(表1参照)。また、一斉昇進が行われている企業においても、その期間は、本社係長級までの段階にとどまり、採用後の年数でみると5~10年程度である。

表1 一斉昇進の有無及び一斉昇進する職制段階

各職制段階における昇進年数等の状況は、次のとおりである。

ア 係長級

本社係長級に就くまでの年数は、最短の者及び標準的な者のいずれも採用後「8~10年」の企業が最も多く(表2表3参照)、この段階における昇進時期の差は、最短の者と標準的な者とでは「1年以内」である企業が最も多い(表4参照)。また、採用同期で係長級に昇進しなかった者の割合は、「10%未満」の企業が大半を占めている(表5参照)。

このように、係長級の段階までは、一部の企業を除き、ほぼ同時期に昇進し、ほとんどの者が昇進している。

表2 係長級への昇進に要する最短年数
表3 標準的な者の係長級への昇進に要する年数
表4 最短の者と標準的な者との昇進時期の差
表5 係長級に昇進しなかった者の割合
イ 課長級

本社課長級への昇進年数は、最短の者及び標準的な者のいずれも「14~16年」の企業が最も多いが(表6表7参照)、昇進時期に差がみられる(表8参照)。また、採用同期で課長級に昇進しなかった者の割合は、企業によって大きく異なるが、半数以上の者が就けないとする企業もある(表9参照)。

このように、課長級の段階においては、係長級の段階と比べて昇進時期の差が拡大しており、厳しい選抜が行われていることがうかがわれる。

表6 課長級への昇進に要する最短年数
表7 標準的な者の課長級への昇進に要する年数
表8 最短の者と標準的な者との昇進時期の差
表9 課長級に昇進しなかった者の割合
ウ 部長級、役員

本社部長級及び本社役員への段階になると、昇進時期の差が一層拡大するため、昇進年数を示すことは困難であるとする企業が多くあった。部長級及び役員について、最短の者の昇進年数は、それぞれ「10~26年」及び「15~32年」の範囲内に分布しており、企業により大きな差がみられる(表10表12参照)。また、部長級では採用同期の半数以上が就けないとする企業が大半であり、役員に就ける者は採用同期のうち極めて少数となっている(表11表13参照)。

このように、部長級以上の段階になると、昇進時期の差が一層拡大するとともに、昇進できない者が多数を占めるようになる。

表10 部長級への昇進に要する最短年数
表11 部長級に昇進しなかった者の割合
表12 役員への昇進に要する最短年数
表13 役員に昇進しなかった者の割合
(2)昇進の基準

昇進の基準として用いられているものは、「人事評価」が最も多く、次いで「上司等の推薦」、「日頃の人物評価・評判」の順となっており、各職制段階において同様の傾向がみられた。特に、係長級及び課長級の段階における「人事評価」は、回答のあった全ての企業において用いられていた。このほか、係長級において「試験」を課している企業もあった。「その他」としては、アセスメントの実施、社長等をメンバーとする人事委員会への諮問等があった(表14参照)。

また、選抜は、直近下位の職制段階における評価に基づいて行う企業が多くみられたが、過去の実績も総合的に勘案して行うとする企業もあった。

表14 昇進の基準
(3)選抜されなかった者への対応

採用同期で各職制段階に選抜されなかった者について、志気の維持のため何らかの取組を「行っている」とする企業は、回答のあった15社のうち9社となっており、その内容としては、本人に対する理由等の説明、社内の人事異動による配慮、子会社への出向等となっている。

なお、「行っていない」理由として、採用年次による昇進管理をしていないこと、一斉昇進の慣行がないこと、将来における昇進の可能性が否定されているものではないこと等を挙げている。

(4)幹部候補者育成プログラム

幹部候補者のための特別の育成プログラムは、半数以上の企業で実施していた(表15参照)。育成プログラムは、各職制段階に応じて実施されており、その内容としては、経営管理手法、国際情勢、リーダーシップ等についての講義や、重要課題に関するグループ討議などがある。

なお、特別の育成プログラムはないが、昇進後の各職制段階において研修を実施しているという企業もあった。

表15 幹部候補者のための育成プログラムの有無

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