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第1編 《人事行政》

【第3部】  平成24年度業務状況

第2章 人材の育成

第2節 役職段階別研修

1 府省合同幹部要員研修(行政研修)

各府省の行政運営の中核となることが期待される職員等を対象とする府省合同幹部要員研修(行政研修)(以下「行政研修」という。)は、高い倫理観に基づいた国民全体の奉仕者としての使命感の向上、広い視野や柔軟な発想など国民の視点に立つために求められる資質・能力の向上及び国家公務員として協力して施策を行うための相互の信頼関係の醸成を基本的な目的として実施している。

行政研修については、役職段階ごとに、採用時の合同初任研修、初任行政研修をはじめ、3年目フォローアップ研修、本府省の課長補佐級、課長級の各職員に対する研修などを実施しており、①国民全体の奉仕者としての使命と職責について考える、②公共政策の在り方を多角的に検証し考える、③公正な公務運営について学ぶ、の三点をカリキュラムの柱としている。また、研修参加者が、互いに啓発しながら相互の理解・信頼を深めることができるよう、合宿研修を通じて議論を重ね、意見を交換することとしている。

課長級及び課長補佐級の研修では、様々な分野の者との交流を通じ幅広い視野を身に付け相互の理解を促進する観点から、民間企業、外国政府等からの参加を得て実施している。

平成24年度における行政研修の実施状況は、表2-1のとおりであり、全体で43コースを実施した。

表2-1 平成24年度行政研修実施状況
(1)国家公務員合同初任研修

将来、行政運営の中核的な要員になると期待される新規採用職員(各府省の行政職俸給表(一)2級の官職(これに相当すると認められる官職を含む。)に採用された直後の職員)を対象に、総務省と共同で3日間の初任研修を実施している。

平成24年度は、公務員の在り方に関する講演のほか、公務員の服務・倫理や人事評価制度に関する講義・演習、各府省の人事担当課長及び課長補佐などを迎えての班別演習を中心として実施した。

(2)初任行政研修

(1)の合同初任研修対象者のうち、将来、本府省において政策の企画・調整の衝に当たることが期待される者を対象に、4コースに分けて5週間の研修を実施している。

平成24年度は、「介護等実地体験」、「地方自治体実地体験」、「企業等訪問」等を実施した。

このうち、地方自治体実地体験では、全研修員538人のうち85人を被災地支援(ボランティア)として岩手県及び宮城県に派遣した。また、歴史的意義の大きい行政政策の事例を題材として班別(7~8人)に討議、発表する「行政政策事例研究」、現職の事務次官等による公務員としての心構えについての講話、公務員倫理に関する講義・演習等を実施した(表2-2)。

表2-2 平成24年度初任行政研修の内容
(3)3年目フォローアップ研修

原則として(2)の初任行政研修を受講した者のうち、将来、本府省において政策の企画・調整の衝に当たることが期待される採用3年目の者を対象に、4コースに分けて4日間の研修を実施している。

平成24年度は、「公務員の在り方」についての現職の事務次官等による講義、社会問題の解決に事業方式で取り組む社会起業家等による講義、班別(6~7人)による「公務員としての2年間を振り返り、今後の公務員生活を考える」を課題とする意見交換などからなるカリキュラムにより実施した。

(4)行政研修(課長補佐級)

本府省課長補佐級に昇任後おおむね1年以内の者のうち、政策の企画・調整の衝に当たる者を対象に、3日間の研修を8コース実施している。

平成24年度は、長期的視点に立って班別(6~7人)に政策提言をまとめる「政策課題研究」、行政課題等について多様な視点から班別に討議する「個別政策研究」のほか、「職業と倫理」に関する講義・演習、「コーチング」、「公務員への期待」などからなるカリキュラムにより8コース実施した。

そのほか、国際化に即応できる人材の育成に資するよう、英語による政策ディベート等を行う4日間の「国際コース」を試行的に実施した。

(5)行政研修(課長補佐級)中国行政学院派遣コース及び韓国中央公務員教育院派遣コース

本府省の課長補佐級の職員を対象に、中国及び韓国への派遣研修を実施している。

平成24年度は、中国では訪問先を北京及び内モンゴル自治区として日中の公務員の意見交換や農村地域の現地視察などを行う派遣研修を1コース実施する予定であったが、中国側の要請により延期し、年度内の派遣は行わなかった。韓国では訪問先をソウル特別市、クワチョン市及びセジョン市として日韓の公務員の意見交換や韓国の行政機関等への訪問などを行う派遣研修を1コース実施した。

(6)行政研修(課長補佐級)リーダーシップ研修

各府省の課長補佐級の職員で、将来、本府省幹部職員として行政運営の中核を担うことが期待される者を対象に、平成24年11月から平成25年2月までの間に通算14日間の研修を1コース実施した。

本研修は、国家の在り方や行政の在り方について討議・発表する「課題研究」、東日本大震災の被災地を訪問する「行政現場学習」、「駐日在外公館職員との意見交換」、小グループに分かれてテーマを設定し政策提案・改革ビジョンを作成・発表する「共同研究」などからなるカリキュラムにより実施した。

(7)行政研修(課長級)

本府省の課長級職員を対象に4日間の研修を3コース実施している。

平成24年度は、「行政の在り方」、我が国の財政等をテーマとした「政策課題研究」、「古典に学ぶ」、人事管理・組織管理を考える「マネジメント研究」などからなるカリキュラムにより2コース実施した。また、能力・実績に基づく人事管理や効率的な業務遂行を推進していく上では、管理職員が人事管理や組織管理を適切に行うことが必要との考えに基づき、「危機管理」、「メンタルヘルス」などのカリキュラムからなる行政研修(課長級)「マネジメントコース」を1コース実施した。

そのほか、管理職員が現場に対する知見を深めることが重要との考えに基づき、現地視察や意見交換を盛り込んだ行政研修(課長級)「現場訪問コース」を試行的に実施した。

(8)行政研修(係員級特別課程)

Ⅱ種試験又はⅢ種試験等により採用された係長昇任直前の職員で、各府省が将来の幹部要員として計画的に育成しようとしている者又はその選抜の候補となる勤務成績優秀者を対象に2週間の研修を2コース実施している。

平成24年度は、「公務員倫理を考える」、「政策課題研究」、「英語学習技法」、「コミュニケーション研究」、「企業等訪問」などからなるカリキュラムにより実施した。

(9)行政研修(係長級特別課程)

Ⅱ種試験又はⅢ種試験等により採用された本府省の係長級の職員で、各府省が将来の幹部要員として計画的に育成しようとしている者を対象に2週間の研修を3コース実施している。

平成24年度は、業務多忙な者等の参加を促進するため、3コースのうち1コースを通勤を主体とするコースとした。

本研修はいずれも、「公務員と職業倫理」、「行政政策事例研究」、「政策ディベート」、「古典に学ぶ」、「企業等訪問」などからなるカリキュラムにより実施した。

(10)行政研修(課長補佐級特別課程)

Ⅱ種試験又はⅢ種試験等により採用された本府省の課長補佐級の職員で、各府省が将来の幹部要員として計画的に育成しようとしている者を対象に2週間の研修を2コース実施している。

平成24年度は、「これからの公務員の在り方」、「政策課題研究」、「リーダーシップ研究」、「企業等訪問」などからなるカリキュラムにより実施した。

なお、特別課程の係長級及び課長補佐級においては、研修員の所属府省における今後の育成の参考に資するため、研修期間中のレポートの内容、研修への参加状況等を通じて、研修員の能力・適性等について評価を行った。

(11)行政フォーラム

本府省の課長級以上の職員に研修機会を提供し、各界の優れた有識者による講義と意見交換を行うことを目的として、人事院の会議室において、午後6時30分から約2時間という形式で行っている。

平成24年度は、「日本の将来を考える」及び「防災を考える」の二つの大きなテーマで11コース実施した(表2-3)。

表2-3 平成24年度行政フォーラムのテーマ及び講師
(12)幹部行政官セミナー(アスペンメソッド)

本府省の審議官級及び筆頭課長級の職員を対象に、幹部行政官セミナー(アスペンメソッド)を3泊4日で1コース実施した。アスペンメソッドとは、米国アスペン研究所が行っている研修手法であり、様々な古典を素材に、参加者相互の対話を通じて高次のリーダーシップの養成を目指す思索型プログラムである。


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