第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第3章 多様な人材の確保・育成等

2 人材の育成

(1)公務における人材育成・研修に関する研究会

近年における公務を取り巻く厳しい状況を踏まえると、若手職員について、全体の奉仕者としての使命感を徹底するとともに、行政の複雑化・高度化に対応できるよう実践的な能力を強化することが必要となっている。また、管理職員については、若手職員の意識の変化や情報通信機器の普及による職場環境の変化に応じた指導・育成やコミュニケーションの方法を体得させることが必要となっている。

こうした状況も踏まえ、公務員として求められる能力・資質を醸成するための人材育成の在り方と人事院研修の充実策等について検討するため、学識経験者から構成される「公務における人材育成・研修に関する研究会」(座長:原田久立教大学法学部教授)を平成26年12月から平成27年11月までの間に6回にわたり開催し、同研究会は、「時代の変化を踏まえたこれからの人材育成―行政官としての矜恃とマネジメント能力の向上を中心に―」を人材局長に提出した。

人事院では、この提言も踏まえ、国民全体の奉仕者としての職業倫理のかん養を一層着実に行っていくとともに、マネジメント能力の向上を図るためのカリキュラム等の一層の充実、研修の企画・運営等での各府省等との連携強化について、可能なものから着実に実施していくこととしている。

(2)行政研修の拡充

人事院は、各府省の行政運営の中核となることが期待される職員等を対象に、係員から幹部職員までの役職段階ごとに、国民全体の奉仕者としての使命感や国民の視点に立って施策を行うための資質・能力の向上、職員相互の信頼感の醸成等を目的に、埼玉県入間市の公務員研修所をベースにして行政研修を行っている。平成27年度は、主に以下の研修内容の充実を行った。

ア 初任行政研修

本府省において主に政策の企画立案等の業務に従事することが想定される、総合職試験で各府省に採用された1年目の職員を対象とする研修で、平成9年度に創設し、平成18年度以降は5週間の研修期間で実施している。

採用直後の府省の垣根を越えた合宿研修により、国家公務員としての一体感を醸成する機会となっており、各府省事務次官による公務員としての心構えに関する講義や公務員の在り方を考えるレポート作成、過去の行政事例を題材に政策形成の在り方について議論する科目等を通じ、全体の奉仕者としての基礎的素養を身に付けさせている。さらに、介護現場、地方自治体等の現場での実地体験や東日本大震災の被災地(岩手県遠野市、宮城県石巻市)で活動する特定非営利活動法人等の協力を得て復興支援に取り組むことにより、国民の視点に立って行政を遂行する姿勢を学ばせている。

平成27年度は、上記復興支援プログラムの派遣先として福島県二本松市を加えたほか、これまでの墨田区及び荒川区に加え、板橋区において中小企業のものづくりの現場について学ぶ機会を新たに設けた。

イ 行政研修(課長補佐級)

業務多忙な課長補佐級の職員が職場を離れて研修に参加しやすいよう、研修期間、会場及び実施時期などを適切に設定し、行政官としての使命感と職責やリーダーシップの在り方を考察させるとともに、グローバル化する環境への対応力を高めることなどを目的として、民間企業や外国政府等からも研修員の参加を得て、様々な研修を実施している。

平成27年度は、英語を使用言語とする国際コースについて、外国人参加者の多様化を進め、駐日在外公館職員に加え、東南アジア諸国などの行政官で、日本の大学院に留学中の者も研修員に迎えて実施した。また、中国政府の協力を得て、中国派遣コースを平成23年度以来4年ぶりに実施した。

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