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公平審査制度研究会
第2回議事概要
 
1 開催日時:平成23年6月3日(金)14:00~16:00
2 開催場所:人事院第一特別会議室
3 出席委員等:
<委員> (座長以外は五十音順)
高橋滋一橋大学大学院教授、飯島東北大学大学院准教授、竹内寿立教大学准教授、畑瑞穂東京大学大学院教授、山野岳義地方公務員等ライフプラン協会理事長
<オブザーバー>
林史高東京地方裁判所判事
 
4 議事内容
 
 (1) 事務局より資料に基づき、不利益処分審査制度及び不服申立前置の意義並びに不服申立適格の在り方について説明
 
 (2) 意見交換
 
5 意見交換
  資料説明について意見交換が行われ、委員等から大要次のような質疑意見等があった。
 
 (1) 不利益処分審査制度の意義について
 
 ○ 民間の苦情処理制度との比較について触れられていたので、その一環である労働審判制度について補足すると、その特徴としては、①労使の専門家が、裁判官に加えて労働審判員として関与、②調停の試みが可能、③3回以内の期日で審理を終結すること(申立てがなされた日から40日以内に第1回の期日が指定される)、④調停が成立しない場合でも実情に即した労働審判を行うこと、⑤訴訟手続との連携(労働審判で解決が図れない場合は、そのまま訴訟手続へ移行)、の5点が挙げられる。
   平成21年度の司法統計によれば、既済事件3,226件のうち、調停の成立によるものが2,200件と既済事件のおよそ68%を占めており,当事者の合意に基づく「調停」が特に活用されている。そして、労働審判法24条は、紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判事件を終了させて訴訟手続へ移行することができるとしているから、3回以内の期日で調停の成立や労働審判による解決の見込みがある事件を中心に、労働審判手続が利用されていると考えられる。
   不利益処分審査は訴訟手続との連携は図られていないことから、労働審判との単純な比較は困難であるが、専門家が関与する点、審査の結果を踏まえて適切な判定を行うという点は類似している。一方で、労働審判は、調停の試みが可能であるとする点や、3回以内の期日で終結するとされている点については、異なる点として挙げられる。
 
 ○ 人事行政の公正性の確保・身分保障の実効性の担保について、国公法制定時には、協約締結権とともに、不利益処分審査請求や行政措置要求の制度も措置されていた。このような経緯からすると、労働基本権の制約とこれら救済制度はそもそも無関係であったとも言えるのではないか。全農林警職法事件最高裁判決を議論の出発点とし、これに依拠し過ぎることには疑問がある。
 
 (2) 不服申立前置の意義について
 
 ○ 不服申立前置のメリットとして事務局が挙げる、争点が明確化し証拠資料が充実すること、行政部内における判断の統一性を確保できること、処分の違法性のみならず不当性の判断が可能であること等は、それはそれで理解するが、人事行政特有のものと言えるか。他の不服申立て制度と共通するのではないか。人事行政特有のものではないとすると、他と比べて特に不服申立前置とする理由に乏しいということにならないか。
 
 ○ 不服申立前置のメリットについて、人事行政特有の観点からの言及がないという点は同意見であるが、人事院が各府省の行った処分に対する不服申立てを取りまとめて審査することにより、効率的で統一的な行政運営がなされているという点はやはりメリットではないか。また、たとえ人事院での認容率が低いとしても、裁判所の結論もさほど変わらないとすれば、簡易迅速な手続によるとしている点もメリットと言えるのではないか。
 
 ○ 人事院は処分の不当性についても判断しており、処分の取消しだけでなく、違法とまではいえない場合に更正も行っていることからすると、この部分は特徴的な点であるといえるのではないか。
 
 ○ 人事院においては、裁量性の高い処分について、判定で当・不当にまで踏み込んだ判断をしているという点を明示する必要があるのではないか。
   いずれにしても、不服申立前置のメリット・デメリットについては、分かりやすく整理する必要がある。
 
 ○ 出訴率はそれほど高くないので、制度としてはそれなりに機能を果たしているのではないか。ただし、請求者が不利益処分審査請求に労力を費やしてしまい、裁判所で争うことについては諦めてしまうケースも考えられ、必ずしも数字だけで判断できない面もあろう。
 
 ○ 請求者自身、無理筋と考えているような案件については、そもそも訴訟まで起こさないであろうから、そういう意味での吸収機能はあるとも言える。ユーザー側の考え方がもう少しはっきり分かるといいが。
 
 ○ 上司等とコミュニケーションを取ることで、紛争に至る前に解決してしまうこともある。誰かに話を聞いてもらうことは不満を解消する効果があり、労使コミュニケーションの円滑な企業等では紛争に繋がらない。このような意味で、審理の過程で、審理指揮により請求者に十分に主張を尽くさせるという運用の実態があるのであれば、後続する紛争の予防的な役割を果たすことになり、メリットと言えるのではないか。
 
 (3) 不服申立適格の在り方について
 
 ○ 行政救済制度において議論されているのは、基本的には、不服申立適格を第三者へ拡大するということで、ここで議論している法律上の利益の問題とは別ではないか。
 
 ○ 第三者も不服申立適格を有するかという問題と、不服申立ての対象となる処分の問題とは、分けて整理した方がよい。
 
以   上