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公平審査制度研究会

第3回議事概要

 

1 開催日時:平成23年7月29日(金)14:0016:00

2 開催場所:人事院第一特別会議室

3 出席委員等:

<委員> (座長以外は五十音順)

高橋滋一橋大学大学院教授、飯島淳子東北大学大学院准教授、畑瑞穂東京大学大学院教授、山野岳義地方公務員等ライフプラン協会理事長

(竹内寿立教大学准教授は欠席)

<オブザーバー>

林史高東京地方裁判所判事

 

4 議事内容

 

 (1) 事務局より資料に基づき、主張制限の規定の導入の是非、審尋審理制度の諸問題、調査の終了要件の拡大又は取下擬制制度の導入の可否等及び判定によらない実効的な解決方法の検討について説明

 

 (2) 意見交換

 

5 意見交換

 

 (1) 主張制限の規定の導入の是非について

 

  処分の違法事由に当たらないことを主張できないのは自明であり、主張制限に係る規定を確認的に置くことは差し支えないのではないか。ただし、行政事件訴訟法10条1項にいう取消しの理由の制限とは趣旨を異にすることから、これを援用して議論を行うことは妥当でない。また、自明である以上、法律に規定する必要はないのではないか。

 

  行政事件訴訟法10条1項は、違法ではあるが本人の法律上の利益に関しない違法事由の主張を制限するために設けられたものとされている。そもそも違法事由にならない主張は、仮に規則に同法10条1項のような規定を置いたとしても、制限することはできないのではないか。裁判所であれば、そもそも違法事由にならない主張を排斥するに当たり、同法10条1項を根拠とせずに、単に原告の主張は違法事由に当たらないとするのではないか。

 

  違法事由に当たらない事情の主張の問題と、行政事件訴訟法10条1項の問題とは確かに異なる。自明のこととして、例えば規則において規定するにしても、処分の違法に関係ない事由は主張できない等の、同法とは違った書きぶりになるのではないか。

 

  辞職承認処分に対する不服申立てにおいて、職場のメンタルヘルス対策の不備を主張するなどの実際の事例に関していえば、条文で制限するようなレベルではなく、むしろ運用で制限するような話ではないか。

 

  事案を丁寧に処理しようとすればするほど、より顕在化する問題なのかもしれないが、主張制限に関する規定を設けたからといって、権利救済上必ずしも問題となるものではない。

 

 

 (2) 審尋審理制度の諸問題について

 

  審尋審理については、口頭審理と比較した場合、審理期間をより短くすることが可能である制度であるように思われるが、証人尋問の実施等口頭審理に極めて近い現行の運用スタイルが定着していることに鑑みると、期間の短縮は現実的に困難であるということか。ただし、迅速化については何らかの運用上の工夫が必要となるのではないか。

 

  審尋審理においては、反対尋問の前提の主尋問すらないということになる。主尋問、反対尋問の両方を行う方が効率的だと思うが、それだと非公開口頭審理との棲み分けが不明確となる。

 

  反対尋問を行えないことに対し、当事者が不満を述べるケースはないのか。

 

  審理方式を選択するのは請求者であるが、処分者である行政庁側が不満を述べるケースはないのか。請求者にとっては、証人の証言が反対尋問にさらされないことを承知し納得した上で、自ら審尋審理方式を選択したものであるが、処分者にとっては、そうではない。不満をもって当然ではないか。

   請求者の希望による任意の審理方式の変更の問題については、合理的な制約があって然るべき。規則で規定することは可能であろう。ただし、職権による審理方式の変更については困難であると考える。やはりビデオリンク方式、遮蔽措置等が妥当なのではないか。

 

  遮蔽措置については、公平審理を行う会場との兼ね合いからすると、例えば、まず証人が会場に入って遮蔽の措置を採ってから、当事者や傍聴者が入るなどの方法による工夫の余地はあるだろう。

 

  人事院規則13-1第5章口頭審理の規定中、審尋審理に準用されていない規定について、32条は当事者双方が出席する権利があることを前提とした規定であり、審尋審理には必ずしも当てはまらないことからすると、準用していないことの説明も付くのではないか。39条と40条は「できる」規定であるから、準用することとしたとしても、困ることはないのではないか。

 

  通常の民事訴訟においては,無駄な証拠調べが裁判を長期化させる最も大きな要因の一つであることから、争点整理手続において争点を絞り込み、証拠調べ、特に人証は必要な限りで行われており、争点整理の結果、事実関係に争いがなく、法的評価のみの争いであれば、人証調べを行わずに判決をすることもある。このような例からすると、審理の長期化を避けるという観点からも、争点整理手続を活用した方がいいのではないか。ただし、不利益処分審査は通常の訴訟と異なる面もあるので、必ずしもうまくいくとは限らないが。

 

  争点整理手続の規定に関していえば、口頭審理の規定を審尋審理に準用してもいいのではないか。わざわざ適用除外にする必要はない。

 

  審尋審理と口頭審理の両者が同じような運用になってきたのはなぜか。職権による迅速処理を目指してきたのであれば、書面審理の活用というのも方向性としては考える余地もあるのではないか。

 

 (3) 調査の終了要件の拡大又は取下擬制制度の導入の可否等

 

  終了要件の拡大は、請求者の権利を減じるものであるとの批判を受けかねない側面があるとの指摘について、不服申立前置の要件の充足という点では、取下擬制では前置の要件を満たさないのに対し、終了は前置の要件を満たすものであるから、この点についてみれば終了の方が請求者の権利を狭めるということにはならない。このような観点からすると、不服申立前置との関係においても、安易に取下擬制を認めることには慎重でなければならないが、終了については何らかの規律を設けてもよいのではないか。行政不服審査法案の規定のように合理的な要件を定めることができれば、より使いやすいものとなろう。

 

  人事院規則13-1第14条で終了した場合に、その段階での資料に基づいて判定を出すということはないのか。民事訴訟においては、民事訴訟法244条の規定により、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができるとされており、当事者の不熱心訴訟追行の場合の規定の一つである。

   終了の場合は、国家公務員法上、審理を経ていないので判定は出せないとの解釈のようであるが、中身について判断し得るという問題意識があってもいいのではないか。

 

  公平委員会が一方的に期日指定を行うことは、人事院規則13-1第32条の規定では本当に読めないのか。明確な手続が定められていないからといって、審理期日の設定に応じないような請求者であっても、すぐに審査を終了することができず、終了までに数年を要しているというのは好ましくない事態である。このことからしても、期日設定権はあって然るべきではないか。

 

  先般成立した家事事件手続法には、職権探知であるが、適切かつ迅速な審理等の実現ため、当事者は事実調査や証拠調べに協力するものとする旨の規定が設けられた。「義務」という表現を用いるかは別として、同じようなことが妥当すると思うので、職権探知にも合理的な限界があるという趣旨から、同旨の規定を置くことも考え得るのではないか。

 

 (4) 判定によらない実効的な解決方法の検討

 

  判定による終局解決以外にも、公平委員会によるあっせんの制度を導入すれば、例えば通知レベルで不適切な運用を行っているような府省に対しては、その運用の見直しを促すといったようなことも期待できるかもしれない。

 

  訴訟の感覚からすると、あっせんは対席で行わなければならないものか。

 

  判断を示す者が間に入るということには二つの面があり、効率的に話が進むという面がある一方で、間に入る者の中立・公正性という問題も生じる。裁判上の和解については裁判官が間に入るが、それが可能なのは国民がやはり裁判所を信頼しているという背景があることもあろう。公平審査制度においてどこまで同様に考えてよいかは何ともいえない。和解の手続については、対席方式、交互面接方式の両者それぞれにメリット・デメリットがあるといえる。

 

以   上