人事院 ホーム

公平審査制度研究会
第4回議事概要
 
1 開催日時:平成23年9月28日(水)16:00~18:00
2 開催場所:人事院公平審理室
3 出席委員等:
<委員> (座長以外は五十音順)
高橋滋一橋大学大学院教授、飯島淳子東北大学大学院准教授、竹内寿立教大学准教授、畑瑞穂東京大学大学院教授、山野岳義地方公務員等ライフプラン協会理事長
<オブザーバー>
林史高東京地方裁判所判事
 
4 議事内容
 
 (1) 事務局より資料に基づき、再審制度の見直し、「その他不利益処分」の意義及び不服申立ての現状等並びに類型ごとの判例等の傾向等について説明
 
 (2) 意見交換
 
5 意見交換
 
 (1) 再審制度の見直しについて
 
 ○ 一般的にこの種の制度〔再審制度〕において、理由のない申立てが多いのはままあることであるが、それが制度を廃止してもよい理由とはならない。とは言え、裁決の後は、自由に裁判所に出訴できるわけであることから、必ずしも再審制度がなければならないというものではないだろう。国家公務員法92条3項との関係では、国公法が再審制度を廃止することを禁止していると解せるかは明言はできないが、法制定時の混乱の所産という印象も受けるので、国公法が再審制度の存置を必然的に要求しているとまでは解せないのではないか。
   資料の「公平審査制度論」(和田英夫著)中に「出訴期間経過後に再審事由が発見された場合には、あるいは裁決の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴(行訴法三六条)を提起することもできる」との記述があるが、これは再審制度があってもなくても裁判に行けると言っているに過ぎない。
 
 ○ 国公法92条3項は、人事院が最終的な判断をするということの確認規定か。そうすると、再審制度を存続させるか否かの判断も、人事院の解釈に委ねられているということになるか。
   ただ、当事者の申立てによる再審は廃止し、人事院の職権による再審のみ残すというのは、バランスを失するように思う。再審制度を廃止するか、そのまま残すかのいずれかではないか。
   また、再審制度を不要とするなら、同制度による救済の実効性がないということを実証する必要がある。
 
 ○ 再審の請求の要件を満たすとすれば、きちんとした審理が行われなかった場合が想定されることから、審理をやり直すというのはあり得る。
   ただ、議論の余地はあるにせよ、最高裁判例によれば、再審を行っている間に訴訟の出訴期間を徒過してしまうという問題もあることからすれば、見直す必要があるかもしれない。合理化された範囲で残すということも考えられるが、難しいか。
   再審の要件を満たすことがあるとすれば、職権による再審のみを残すというのは疑問。
 
 (2) 「その他不利益処分」の意義及び不服申立ての現状等
 
 ○ 分限処分と懲戒処分を同意の有無で区別すると、分限免職処分は同意を得たから審査請求できない、懲戒免職処分は同意を得ていても審査請求できるということになり、同じ免職処分という事実であるのに差が生じるのはおかしいのではないか。もちろん根拠となる事由は異なるが、違和感を感じる。
 
 ○ 国公法78条にいう分限処分は同意の有無は関係なく、同法89条1項については意に反するもののみ、ということか。
   89条1項の「その意に反して」というのは、処分当時はやむを得ないものとして承知していたものの、その後、処分にはやはり納得がいかないと思うに至った場合も含めて、その意に反して行われた処分か否かを判断するのではないか。
   民間の事例は直接参考にならないかもしれないが、辞職願提出後や解雇を言い渡された後に、当該辞職や解雇にはやはり納得がいかないと思うに至ったような場合などは、単に同意の有無だけを争点とせずに、解雇の具体的内容についても検討しようという傾向にある。
 
 ○ 処分に当たって同意を得ているか否かは、処分を取り消して救済すべき事案であるか否かの実体的な判断には繋がるのかもしれないが、事案として却下すべきか否かという問題とは結びつかないのではないか。
 
 ○ 国公法89条1項に規定する処分説明書の交付について、処分説明書が交付されなかった場合であっても、不服申立ては可能であると解してよいか。
 
 (3) 「その他不利益処分」の類型ごとの判例等の傾向等(転任・配置換処分)について
 
 ○ 地方公務員の不利益処分と法律上の利益について判示した最高裁判決(最一小判昭61.10.23)は、資料の最高裁調査官の判例解説によれば、地方公務員法が、不利益処分についてのみ不服申立てを認めるという枠組みを設定しているので、その取消しを求める訴えのみに法律上の利益が認められる、という理解を示したもののようである。そうだとすれば、上記の点は、「原告適格」の問題というよりは、「狭義の訴えの利益」の問題と捉えることができる。
   そして、例えば公務員に対する処分の存在により名誉毀損がされたと主張する場合であっても、当該処分を取り消さずとも名誉回復に必要な措置を講じることができるのであれば(例えば民法723条参照。)、その者の権利ないし法律上の利益には制約が生じていないことから、事実上の不利益にすぎないことになるのではないか。
   他方、当該処分により業務の加重等が生じるという場合には、金銭賠償だけで解決ができず、当該処分を取り消さなければ、その者の権利ないし法律上の利益の制約に直結するという点で、不利益性が認められると考えられるから、このように考えれば、上記の点について一応の整理はできるように思われる。
 
 ○ 事実上の不利益と法律上の不利益はある程度切り分けが可能ではないか。例えば、転任処分であっても、介護の関係でどうしてもこの地でないと生活が成り立たない、というような事例では、法律上の不利益が認められる余地があると考えられる一方で、妻の勤務地との関係での自己の通勤の便利性が害される、という程度は、受忍限度内のものとして事実上の不利益にとどまるとも考えられるのではないか。
 
 ○ 不利益性について、行政事件訴訟法の解釈で割り切ってはいけない問題なのか。
 
 ○ 訴訟要件が個別法において規定されている例も存在する。重なって悪いということはないのではないか。
 
 ○ 訴訟要件かどうかを受忍限度論という実体論を持ち込んでも問題はないか。
 
 ○ 受忍限度を「社会通念」と解せば、そのような切り分けもそれほど違和感はないのではないか。
 
 ○ 事実上の不利益と法律上の不利益は切り分けが難しい。民間の事例であるが、配転の効力について、例えば夫婦の一方が離れて生活することになると、育児が難しいというような事情について、昔に比べれば考慮する裁判例も存在し、法律上保護されるべき利益として捉える裁判例も出てきている。どの程度なら法律上の不利益で、どの程度なら事実上の不利益であるかは、切り分けが難しく社会の変化等にも左右される。切り分けるにしても、結局実体的な判断をしなければならないということであれば、訴訟要件として受け付けないとすることと、実際に受け付けた上で棄却することとの違いはほとんどなく、あえて訴訟要件としての検討にこだわる必要もないのではないか。棄却に比べて却下が相対的に簡易かというと、必ずしもそうとまでは言えない。
 
 (4) 「その他不利益処分」の類型ごとの判例等の傾向等(辞職承認処分)について
 
 ○ 辞職承認処分に不利益性が認められるか否かについては、被処分者が職を失っている以上、処分が取り消されない限り身分を回復できないという点で不利益性を認めることになるのではないか。
 
以   上