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公平審査制度研究会
第7回議事概要
 
1 開催日時:平成24年3月2日(金)10:30~12:20
2 開催場所:人事院第1特別会議室
3 出席委員等:
<委員> (座長以外は五十音順)
高橋滋一橋大学大学院教授、竹内寿立教大学准教授、畑瑞穂東京大学大学院教授、山野岳義地方公務員等ライフプラン協会理事長
(飯島淳子東北大学大学院准教授は欠席)
<オブザーバー>
林史高東京地方裁判所判事
 
4 議事内容
 
 (1) 事務局より資料に基づき、判定書の在り方、調査の結果採るべき措置の問題、報告書(案)について説明
 
 (2) 意見交換
 
5 意見交換
 
 (1) 判定書の在り方について
 
 ○ 判定書の書式については、この書式でなければならないというものはなく、運用上工夫すれば良い。事件の類型により、適している書式は異なるため、一律にどの書式が望ましいとはいえない。
   裁判所においては、判決書の新様式採用時には、事件の類型にあわせていくつかのパターンが提示された。不利益処分審査の判定書についても同様に、例えば比較的単純な事案の場合、争点が多い事案の場合、法律の解釈が問題となる事案の場合などに応じて複数のパターンを提示して使い分けるのが適当ではないか。
 
 ○ 裁判所の判決書の場合も、事件によって書きやすい書式というのは異なるので、一律の書式が決まっているわけではない。人事院の判定書についても、紛争類型によって書きやすい書式を選択するのが、当事者にとっても、判定を書く側にとっても良い。事案の性質によりパターン分けをして、それぞれのパターンについて書式の類型化を進めていくのも一つの手法だろう。
  証拠の表示については、時系列に一つ一つの事実を認定していく場合は、「総合型」(「これらの証拠を総合すれば、次の事実が認められる」という形で一括して証拠説明をする方式)の方が書きやすく、実際にそのような判決もある。主として事実認定に用いた証拠を、当該認定された事実の末尾に記載する「折衷型」と言えるようなものもある。また、証言の信用性が争点となっているような事件の場合は、「その都度型」(必要の都度証拠を引用して説明する方式)にするのが一般的である。やはり、どのような事実の認定をするかに応じて書式を使い分けるのが適当だと思われる。
 
○ 現在、人事院の判定書においては、「争点の要旨」を特に記載していないとのことだが、裁判の判決書でも、最初の方に事案及び争点の概要を挙げているものがある。当事者及び他の人から見た時の分かりやすさという点で有効だと思う。
 
 ○ 裁判所の判決は、一文が長くなりがちであるが、両当事者の理解に資するように、人事院の判定書は、簡潔な記述を心がけ、なるべく一文を短くした方が良いだろう。
 
 (2) 調査の結果採るべき措置の問題について
 
 ○ 不利益処分審査の調査の対象は処分時までの事実であり、判定においては処分の違法・不当性についてのみ判断し、中間収入については調査の対象とはせず、俸給の弁済の指示に当たっては、中間収入を控除するよう指示していないとのことであるが、中間収入の控除は救済内容の問題であり、処分の違法・不当性とは別の問題なのではないか。
  不当労働行為の救済命令においては、原状回復ということを厳格に考えているわけではなく、ポストノーティスや将来に向かっての抽象的不作為命令など、原状回復にとどまらない幅広い裁量が認められている。
  最高裁は、原則的に中間収入を控除又は少なくとも控除を考慮するよう判示している。
  労働委員会の救済命令は、中間収入の控除について消極的な傾向にある。労働委員会は、組合活動に対する侵害の除去という観点を重視した上で、控除の要否及び程度について幅広く判断している。
  一方で、不利益処分審査における救済が、不当労働行為の救済命令を参考にすべき性質のものであるのかどうかについては、疑問がある。不利益処分審査は、労働委員会による救済よりも、被解雇者が地位確認や未払賃金の支払いを求めて民事訴訟を提起する場合に類するものではないか。この場合、民法第536条第2項が適用され、不就労は債権者の責めに帰することとなり、また、労働者はその間に得た利益について償還することになるため、中間収入を控除することとなる。とはいえ、労働基準法第26条の休業手当の規定により、労務に服せなかった期間は平均賃金の6割が補償されるので、4割までしか控除されないこととなる。国家公務員には休業手当に相当する規定が無く、どこまでの控除があり得るかという問題はあるが、民事訴訟におけるこのような取扱いになぞらえるのが適当なのではないか。
  不利益処分審査において、原状回復という面を強調するのであれば、中間収入は控除する方向になるのではないか。
  法定利率の弁済については、先に述べた民事訴訟と同様に考えれば、支払うことも考えられる。
 
○ 中間収入の控除については、労働組合法第27条の12では、救済内容についての労働委員会の裁量が幅広く与えられている一方、国家公務員法第92条第2項後段では、「職員がその処分によって失った俸給」の弁済を指示することと規定されていることから、中間収入の控除は想定されていないのではないか。
  法定利率の弁済の問題については、同様に、国公法第92条第2項後段からは想定されていないように思うが、同項前段に「職員としての権利を回復するために必要で、且つ、適切な処置をなし」とあることから、この規定を用いて、法定利率の弁済について指示することも可能であるかもしれない。
 
 ○ 国公法第92条第2項の文言を見ると、中間収入の控除は想定していないように思われる。
 
○ 国公法第92条第2項前段の「職員としての権利を回復するために必要で、且つ、適切な処置をなし」という規定を基に、中間収入の控除を行うことについて裁量の余地があるという解釈もあり得るのではないか。
  民間においては、中間収入の控除について最低限検討は行うので、全く考慮もしないというのは、民間に比べてバランスを失する可能性がある。
 
 ○ 最終的に職員が利益を二重取りすることには問題があるが、人事院として、不利益処分審査では中間収入を控除しないという判断はあり得ると思う。
 
 ○ 人事院は不利益処分審査においては処分時までの事実のみ調査するということであれば、控除する中間収入について一定の考え方を示した上で、実際の控除額の認定、判断については、処分者に委ねることも考えられるのではないか。
 
 
以  上