我々職員は、自らも未熟で不完全な存在であることを忘れず、また、犯罪被害者の方を始め国民の皆様からの声に常に耳を傾けつつ、少年たちと共に次の一〇〇年を犯罪のない安心・安全な社会の構築へ向かって歩んでまいりたいと思います。度には、PCスキルやプログラミングを学ぶICT技術科を新設するなど、時代のニーズ等を踏まえての改廃・見直しも不断に行っています。― 体制下にありながら少年の健全育成を模索した戦中、極度の混乱下、新たな少年院設置の業務も担った終戦直後、少年院における職業訓練のセンター施設であった昭和中期~平成期、そして現在に至りますが、どの時代も試行錯誤の連続でした。わば「生きにくさ」を抱えた少年たちの割合が高まってきていますので、より個別的でケア的な指導や医療・福祉の分野を含めた専門的支援の充実を急いでいるところです。一方で、若者を取り巻く社会経済情勢も変化しています。大学等への進学を視野に入れ、高等学校卒業程度認定試験受験指導等の修学支援に従来以上に注力するとともに、民法上成年となった一八歳以上の少年たちに対する社会人教育にも取り組んでいます。― すなわち、少年も自分も不完全な人間同士との認識を根本としつつ、少年一人一人に向き合う、「手塩に掛ける」教育に努め、今日に続く少年矯正行政の基盤を作りました。「正論」を振りかざすだけでも、「生きづらさ」にただ寄り添うだけでも、少年の健全な育成にはつながりません。日々真剣に向き合い、何が問題で何を改善すべきかを、少年自身に気付かせるしかない。根気と忍耐、心身が消耗する時間が長く続きます。それだけに、少年たちが良い方向に変わっていく姿を見るのは、とても大きなやりがいです。そして、一人の非行少年の更生は、少年自身の利益のみならず、社会の担い手が一人新たに生まれ、将来の犯罪被害の発生が防止されることをも意味します。その重要で困難な役割を担っていることは、職員の誇りであります。― 最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。少年院に送致される少年の改善更生は容易ではありません。しかし、日々の業務の中で、彼らの確かな変化、未来への可能性を実感する場面は少なくありません。そこに少年院の存在意義があるのだと思います。もっとも、本当の意味での改善更生は、少年院内で完結するものでも、職員のみで可能なものでもありません。浪速少年院が一〇〇年にわたり、役割を果たし続けてくることができたのも、地域の方々、民間協力者・支援団体の皆様に支えられてきたからです。心から感謝いたします。一〇〇年の中で、組織のターニングポイントになった出来事や最近起きている変化があれば、お聞かせください。一〇〇年を概観しますと、少年院の基礎を築いた戦前、戦時動員近年は、発達上の課題等の資質面や生育環境上の課題がある、い業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。浪速少年院の創立期、職員たちは悪戦苦闘しつつ、「自他の敬愛」、▲現在の授業風景▲昭和後期の授業風景09
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