― はじめに、「開洋丸」は水産庁唯一の漁業調査船とのことですが、具体的にどのような業務を行っているのでしょうか。開洋丸では、様々な機材や手法を用いて、水産資源やそれらが生息する海洋環境の状態を調査し、資源を適切に管理するためのルールづくりや研究の基になる科学的なデータ、生物サンプル等を取得しています。我が国の消費者に親しまれるサンマやサバ、サケ・マス類などの食用種を対象にした資源調査を行うほか、深海生態系を構成する冷水性サンゴや希少で発見が困難な宝石サンゴ等の調査も行っています。近年では気候変動などに伴う海洋環境の変化から、水産資源の状態が大きく変わってきているため、従来どおりの調査の進め方をしているだけでは新たな知見を得ることはできません。未知の領域を開拓できるよう、調査船側も研究論文や関係資料等により理解を深めた上で、調査の進め方や独自に開発した調査手法を提案するなど、革新的な取組を行っています。― 今回のサンマ資源に関する調査で、特に御苦労された点についてお聞かせください。私たちが調査を行った厳冬期の北太平洋は、最大風速毎秒四〇m超の凄まじい低気圧が絶えず通過して大しけが続き、波の高さが一〇mに達するなど、運航の常識では調査不可能とされている悪条件のため、過去に十分な調査が行われていませんでした。しかし、調査実施が困難だからと回避していては、いつまで経っても、未知の領域のままとなり、新たな知見を得ることができません。水産庁漁業調査船「開洋丸」乗組員一同過酷な厳冬期の北太平洋において、乗組員が一丸となって困難な調査に取り組み、近年不漁が続くサンマ資源の持続的な利用に向けた貴重な基礎データの取得に成功。科学的根拠に基づく政策立案に寄与するとともに、日本の魚食文化保全に大きく貢献したことが認められました。人事院総裁賞「職域部門」受賞10過酷で困難な海上調査により、サンマ資源の変動要因の解明と安定供給へ
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