フォード、ゼネラルモーターズ、クライスラーといった自動車産業の本拠地も位置しています。日本の自動車産業もデトロイト近郊に進出しており、日本車も数多く走っていますが、スーパーの駐車場では米国メーカーの荷台が大きいピックアップトラックに乗る家族をよく見かけます。米国では地下鉄や長距離鉄道といった公共交通機関は東海岸や西海岸の大都市など一部地域に限られ、都市間移動や生活圏内の移動はバスや車が主な手段となります。このため、日本では新幹線や飛行機が使われる距離を自動車で移動する人もおり、自宅の工具である程度のメンテナンスを自力でできる人も大勢います。交通量が少なくどこまでも続く広い一本道や五大湖岸の道路など運転しやすい道路が多く、私も週末には同級生と湖畔に出かけたりしています。運転していると、それまでマイルで道案内をしていたカーナビから交差点手前で突然の「五〇〇フィート先を左折」の指示。左折する道は一つしかないため迷わず行くこある日のこと、初めてカーナビを使ってとができましたが、米国の単位の複雑さの洗礼を浴びた瞬間でした。メジャーリーグでも大活躍の大谷翔平選手が投げる時速一六〇キロメートルのストレートは、米国のテレビでは「一〇〇マイル」と表示されます。一マイルは約一・六キロメートルであり、米国の自動車の速度計や道路標識はマイル表記になっています。しかし、短い距離ではフィートが使用されることもあります(一マイルは五、二八〇フィート、一フィートは約〇・三メートルのため、先ほどのカーナビが指示した五〇〇フィートは約一五〇メートル先です)。このほかにも、米国の日常生活には様々な単位が登場します。アメリカンフットボールはヤード、ノートのサイズはインチ、ガソリンはガロン、体重はポンド、ステーキはオンス、気温は華氏(ファーレンハイト)などです。現在、日本を含むほとんどの国が国際単位系(長さはメートル、質量はキログラム等)を日常生活で使用している一方、米国ではヤード・ポンド法と言われる従来からの度量衡が広く使用されています。十進法でセンチやキロが変わるメートル法に慣れた身からすると、複数の単位があり、それぞれの換算も切りのいい整数値ではないヤード・ポンド法はとても複雑に映ります。一二オンスのステーキが食べきれたからといって次回は一六オンスを注文すると、たった四オンスで想像を上回る大きさのお肉が運ばれてきます。単位の違いについて米国出身の同級生に話してみると、単位を変えた方が合理的なことはわかっていても、国民の多くが幼い頃から生活に根差して使用しているため完全にメートル法に切り替えるのはかなり難しいとの意見でした。しかし、米国でも国際関係や科学技術の分野では公式に国際単位系が使用されており、状況によって使われる単位が混在するという事態も生じています(一九九八年に打ち上げ後の火星探査機が制御不能となった事故では、ヤード・ポンド法による計算と国際単位系による計算を誤認したことが事故原因の一つと報告されています)。こうした状況や経済活動のグローバル化の影響なども受け、連邦政府も学校教育でメートル法を採用したり、店頭で売られる商品にポンド以外にグラム等のメートル法の単位の併記を義務付けたりするなど、過去数十年以上にわたり「メートル法化」と呼ばれる単位統一の取組を進めてきましたが、現在でも日常生活では従来のヤード・ポンド法に基づく表記米国の度量衡について32
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