が圧倒的に多いと感じます。くやり取りされるものは統一されている方が多くの人にとって便利であり、変換するコストがかからず合理的です。他方で、生活のあらゆる場面で使う単位を完全に変える負担が大きいのも事実です。米国では単位が併用されることによる社会的コストが相当程度発生しているといわれていますが、切り替えも一時的に大きなコストが社会全体にかかり、国民生活が混乱することから、併用が見直される機運は高まっていません。長期的には統一した方が合理的だとわかっていても、いつ誰がそのためのコストを負担するかの合意形成が困難で現状維持が続いてしまう点は、様々な社会で見られる公共政策における政策実施の難しさを浮き彫りにします。 ありました。今年、ミシガン大学は二六シーズンぶりにアメリカンフットボールの全米チャンピオンとなったため、大学アメフトの試合は毎回大変な盛り上がりとなり、私もルールを覚えて観戦しました。アメフトのフィールドにはヤードを単位として白線が引かれており、戦術にも○○ヤードという表現が数多く登場します。選手の個人成言語や通貨、単位といった社会の中で広この論点を別の側面から考える出来事も績でもヤード数に応じた計算式が用いられ、ヤードはアメフトというスポーツのルールに深く関係しています。同級生たちはアメフトのヤードがメートル法に置き換えられてしまうと、それはもはや別のスポーツだと言い、度量衡は便利さのみでなく、スポーツや文化と一体となって存在しているケースもあることがわかります。米国は移民も多く様々な人種や宗教の人が暮らしていることから多様性がある社会と言われます。しかし、使用言語・人種・性別・世代によって教育水準や所得、居住地域などに偏りが存在し、国内を移動すると州によっても偏りの傾向が異なることがわかります。米国では本年秋に大統領選挙を控えていることから、街中で開かれる集会やテレビでの各党の政治キャンペーンを見る機会が増えていますが、地域や社会階層による意見と支持政策の違いはとても大きいものに感じられます。これに対してミシガン州は俗にスイングステートと呼ばれ、二大政党の支持率が拮抗しており、選挙ごとに勝利する政党が変わることが知られています。州内でも地域による政党支持率の差はありますが、候補者の重要視する政策や主張に応じて投票先を変える有権者も一定数います。ミシガン州出身の同級生たちは、こうした異なるイデオロギーの人が共存している州の環境が社会の多様性を確保する上でとても重要だと言います。ある論点に賛成か反対かという表面的な対立関係で物事を判断せずに、その判断の背景にある価値観やものの見方を理解しようとすることで、分断や偏見が生じることを防いだり妥協点を探ったりすることが可能になるといいます。これには自分が信じる合理性が相対的なものであることを自覚する必要があります。先ほどのアメフトの例を借りれば、ヤードという単位を何かを測る単位としての使用価値のみで見る人もいれば、そこにスポーツや自国の歴史と結び付けた文化的側面からの価値を見出す人もいると理解することで、自分の考える合理性だけが課題解決の方法ではないと知ることができます。また、これは多様性を特定の属性に限定しないための方法でもあります。人種や性別などの特定の属性に着目して人数のバランスを取るクォータ制のような方法も代表性という観点からの多様性を維持すること米国の多様性33
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