人事院月報 2024年5月号 No.897
7/40

決められました。その中で、ある日本の技術者の方から、最初から基準づくりに関わることができるのは、今後のVDESの開発等において非常に有益であると感謝されたことを覚えています。国際機関の本拠地が欧州にあるため、海上無線通信の基準策定は特に欧州が有利な立ち位置にあります。優秀な日本の技術力を国際基準に織り込んでいくのはとても大事なことであり、それに携わることにやりがいを感じています。― 最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。今回、ありがたいことに、人事院総裁賞という名誉な賞をいただくことができました。ただ、私が出席している国際海事機関の会議やその他の国際会議にも、多くの国家公務員が出席しています。その中で議長を務めている方も多くいると思います。これらの全ての方々は、私の受賞理由と同じである、国内技術の国際標準化を実現させ、日本の国際的地位の向上及び国益の確保に貢献していると思います。私は、そのような方々の中で、たまたま受賞することができただけです。このような会議は、あまり国民の皆さんの眼に触れることはないと思うのですが、これを機に、国際会議に出席して日本の国益の確保に従事している多くの国家公務員がいることを知っていただければと思います。(注)VDES:VHFdataexchangesystemの略。VHF帯の電波を使用した新たな海上デジタル通信システムであり、国際的に検討が進められている。― た案件があり、それを何とか解決したのですが、会議終了のベルを鳴らした後に思わずため息が出て、皆に笑われました。NGOですが、これを条約に基づく国際機関に移行するという議論が、平成二四年の理事会でなされました。その時は、日本では条約の締結に当たっては国会の承認が必要であり、ハードルが高いことが課題として挙げられました。しかし、平成二六年の総会で国際機関移行のための作業方針が決定され、私は外務省の方の助言や協力を得ながら、条約案作成のための国際会議に数多く出席し、令和二年の外交会議で条約案の合意を、翌年に国会承認を得ることができました。約九年かけて一から条約を作り、しかも新たな国際機関の立ち上げに従事できたことは、得がたい経験だったと思います。― に従事しております。平成二四年から三年の月日をかけて、私が企画して、日本で開催した国際会議においてVDESの名称や構成が国際基準策定の取りまとめや国際会議の議長を務める中で、印象に残っている出来事がありましたらお聞かせください。最初の議長としての会議は今でも忘れられません。議論が白熱しまた、私が議長を務めている「国際航路標識協会」は、国際的な業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。現在、私はAISの次世代技術であるVDES(注)の基準作成▲国際会議の様子▲国際会議で議長を務める野口氏(写真中央)05

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る