択された皆さんを、心から歓迎いたします。島地震が発生しました。被災された方々のことを思うと大変胸が痛みます。一日でも早く、「普通の生活」が戻ることを祈っております。このような災害が発生した際にも、人命の救助や危機の回避、そして復旧・復興に向けて、多くの国家公務員が職務に邁進しています。この国のため、この国の人々のため、奮闘しています。皆さんの仕事は社会全般に亘ります。人類社会は今、歴史的な試練に直面しているといえます。戦争やインフレの進行により、世界を支えてきた秩序に軋みが生じています。地球温暖化問題も待ったなしです。その中で我が国は、人口高齢化・少子化による社会経済の変容を乗り切っていけるのか、人類社会が直面する共通の問題の最前線にいます。こうした中で、日本国民の利益を守り、活力ある社会を築く—政府に課せられた責任人事院総裁の川本裕子です。あまたある職種の中で、国家公務員を選二〇二四年の幕が開けたその日、能登半は重大ですし、それだけに国家公務員への国民の期待は大きいものがあります。国民の期待に応えるため、国家公務員には高い規律が求められます。「規律」と言うと、上司の命令に、忠実に従うことのように受け取る人も多いのですが、違います。規律の一番大事な原則は、自らを律し、国民の利益、公益を最優先することです。行政上の課題は、国民の生活がもっとよくなるためにはどうすればよいか、を考えることから設定されます。その上で、客観的なデータとしっかりしたロジックで考え、かつ行動することが、公務における義務だと考えて下さい。そしてあくまで正直に、誠実に職務に対処する。英語ではこれらを総じてインテグリティと呼びます。こうした自己規律を高く保って仕事をしている限り、インテグリティを保っている限り、怖れることは何もありません。国民に対しても、説明責任を果たしていけるでしょう。公務員の規律を果たせているか、今後皆さんがどのような職位に就いたとしても、いつも自分に問うてほしいと思います。内外の社会経済情勢の大きな変化、デジタル化の急速な進展など、公務が対応を迫られる課題は日々複雑化、高度化しています。こうした変化について鋭敏に情報を収集・分析し、適切な政策の選択肢をタイムリーに提示する専門能力が公務員には求められています。同時に、自分の専門領域を超えて常に人類社会や日本社会の行方を見据える、高い視座を持つことが大切です。皆さんは、日本を支え、日本の将来を創造していく、国家公務員としての高い能力と識見を示されて選抜された、国の宝です。しかし、時代環境の変化のスピードは想像を超えていることも現実です。決して自足することなく、ご自身の能力、資質、スキルが、行政課題に対応し得るものなのかどうかをいつも振り返り、自己成長するように努めてほしい、そう願っています。もう一つ、お伝えしたいのは「国際性と開放性」についてです。国の行政はその国の中には比較対象がありません。比較がな川本人事院総裁訓示30
元のページ ../index.html#32