人事院月報 2024年6月号 No.898
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一リスクアセスメントを実施する意義公務員の多くが従事していると思われる事務作業においても転倒などの労働災害は発生します。近年、民間においても労働者の平均年齢が上がるとともに、定年後も仕事に就く高年齢労働者が増えています。このことから、体力低下により労働者が転倒しやすくなっているほか、転倒による骨折等重篤なケガが発生しています。民間事業者のオフィスワークを含む第三次産業における休業四日以上の労働災害の統計では、「転倒」「無理な動作、動作の反動による腰痛等」が上位を占めており、転倒災害による平均休業日数は四七日(おおよそ一月半)に及びます。このような災害を防ぐために、職場の安全対策を検討する必要がありますが、代表的な検討手法を次に示します。① 実際に災害が起こった後にその原因を調査し、再発防止策を検討する② 同業他社の災害事例を参照し、当該事業場が行った災害防止対策の導入を検討する③ 災害が起こりそうな危険をあらかじめ特定し、当該危険により生じる災害を予想し対策を講じる(いわゆるリスクアセスメント)このうち、①②については、実際に起こった事故の原因が特定されているため、同種災害防止には極めて有用です。一たび災害が生じた場合あるいは同業他社での重篤な災害の情報を得たときは、①②に注力し、可及的速やかに対策をとる必要があります。一方、③については、まだ起きていない今後の災害を防止するものであるため、余裕をもって組織的な検討をする時間を確保できるほか、対策に要する予算も計画的に確保できるため、平時の安全対策の検討(例えば月一回、もしくは年一回の安全対策の検討会議など)においては、③のいわゆるリスクアセスメントを実施し、職場の改善を図っていくことが有用です。リスクアセスメントの基本 二 リスクアセスメントは図1の手順で行われます。① 働く方の就業におけるハザードの特定リスクアセスメントを実施するときは、職場に存在する多種多様なハザード(危険源)を特定する必要があります。このハザードとは、働く人に負傷や疾病をもたら 中央労働災害防止協会 技術支援部長 樋口 政純寄 稿06〜転倒や腰痛などの災害防止に向けた職場の改善の 実施方法(リスクアセスメント)とその例について紹介〜 本稿では、職場の安全対策を進めるに当たってのリスクアセスメントの活用について基本的な考え方を紹介し、公務員の多くが就業する事務作業でのリスクアセスメントの活用例を紹介します。事務作業におけるリスクアセスメントの実施について

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