と絡めて述べた米国、公務員のキャリアアップと能力開発のためのデジタルコンピテンシーの導入に言及したシンガポールなどが特徴的でした。また、どの国でも総じて求められるデジタルリテラシーについて述べる際は、「管理職として、マネジメントを行うに当たって何ができるかを理解できる知識」「ユーザーとしての利活用スキル」「技術者としてのスキル」等が意識的に切り分けて論じられていたことが印象的でした。増加という点で日本と類似の状況にある韓国はもちろん、フランスにおいても若者の大量離職に関する言及があり、各国共通の課題であることがうかがわれました。ドリブン)としては、目的主導型・人間中心型にすべく、各省庁のサービスを再設計・統合したシンガポールの実例のほか、カナダでのバリューと倫理に関するタスクチームの設立やフィンランドでの幹部公務員のリーダーシップの原則の策定といった進行中の取組の紹介がありました。従来とは異なり公務組織のメンバーや働き方の多様性が増している中、柔軟で適応力のある組織を構築するためには、価値観や倫理観の明確な共有が必要となる場面が増えてい人材確保に関しては、少子高齢化と離職組織改革の中での目的主導(パーパス・ると考えられます。人事院においてもミッション・ビジョン・バリュー(MVV)が策定されたり、人事行政諮問会議において行動規範が議論されたりしている昨今ですが、このことは世界共通の問題となっており、新時代の公務を考えていく上で重要な課題であることが再確認できました。日頃の業務では、なかなか国際情勢の動きについて強く意識する機会がありませんが、このような国際会議は、外交政策と密接に関わるものでもあります。例えば、今回の会合では、OECDとASEANの連携強化の動きが明確にみられました。日本政府は二〇一四年以来ASEAN諸国のOECD加盟に向けた動きを支援しており、また本年五月上旬に同閣僚理事会で岸田総理が行った政策スピーチの中でも、「共通の価値を持つOECDが成長と発展に向けた伴走者となるべきこと、東南アジアを含む地域の非加盟国へアウトリーチしていくことが重要であること」が強調されました。岸田総理の閣僚理事会出席に対しては、今次ラウンドテーブルの中でOECD事務局からポジティブに評価する旨の言及もありました。人事院がOECDとの連携・協力を模索していくに当たっては、このような流れを踏まえながら行う必要があります。そのためには、所掌する分野について持てる知見を他国に共有することもまた、国際協調に向けた重要な役割の一つといえます。今回、各国の発表を聞いていても、コロナ禍や人口構成の変化といった社会変化を契機に行政が変革を迫られている現状は、仕組みや背景の違いはあっても各国で共通するものだと感じられました。OECDが主催する今回の会議のように、先進国の人事行政機関の代表者が集まって、公務員人事管理の在り方について議論を行う会議体は他に例のないもので、世界における最新の人事行政の動向について情報交換を行う場として非常に価値あるものです。OECDは加盟国間の対話を重視しており、人事院にも、「課題フロントランナー」である日本の公務部門の取組のインプットを大いに期待していることが感じられました。人事院としては、そうした取組を紹介することで、加盟各国にとって有益な情報提供ができるよう努める必要があり、私たち国際課としても、その一助となれるよう取り組んでいきたいと思います。5 今後に向けて30
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