人事院月報 2024年10月号 No.902
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でしまったりとデメリットも多い。最近では、若手を中心にデメリットを強く感じる職員が増えている。 という形で跳ね返る。国家公務員総合職のうち採用後一〇年未満で退職した人数は二二年度に一七七人と過去最高となったが、メディア業界では入社一〇年で同期の半数近くが辞めるケースもある。筆者は入社一六年目になるが、三割弱の同期が退職した。管理職の大半は男性で、女性活躍も遅れている。多くの同僚が家庭・子育てとの両立や男社会の壁にぶつかって職場を去った。将来性への不安や目的の分からない仕事、目的が曖昧なOJTなども相まって若手職員の離職が止まらない。 にある。生産年齢人口が減って若年労働者が希少となる中、このような働き方を続ければ優秀で意欲的な人材を集めるのは難しい。採用試験への受験者数は減り、かつて採用していた大学の学生には見向きもされなくなるなど、人材確保の面でも苦戦を強いられている(これ自体は様々な背景を持つ多様な人材確保につながっているという評価もある)。結果として、これらは退職者増と採用難退職者増と採用難はコインの表裏の関係紙ベースの働き方、年功序列、副業・兼業の難しさ、なくならないハラスメント、世間からの厳しい目…など公務もメディア業界も課題を挙げれば切りがない。大きな違いは、業界事情の厳しさから待遇改善の動きが鈍いことと、大半の職員があらかじめ定めた時間を働いたものとみなす裁量労働制で働いていることくらいだろうか。このような中で、弊社を含むいわゆる「JTC(旧来の体質が残った伝統的な日本企業)」にとって重要になるのが、公務員の働き方改革だ。人事院が参考にするような先駆的な人事労務システムを持つ企業は一握りで、多くは問題点を認識できても長年のしがらみから改善に至らない。そこでは公務員の働き方が〝標準モデル〟として機能している面がある。国や自治体の働き方から乖離すれば、周囲から時代遅れとみなされるリスクがあるためだ。実際にその効果もあってか、筆者が入社した頃に比べれば超過勤務時間は減り、休日の取得日数も増えている。地域手当のように国の区分を機械的に当てはめるものもあれば、新幹線通勤のように国家公務員で採用後、本格的に認められる手当もある。労働組合関係者によると、労使交渉で両立支援策や休暇制度の拡充を要求する際は、国や自治体の取組例を指摘すると実現しやすいと聞く。筆者の知る例では、頑なにテレワーク業務の範囲を限定していた企業が新型コロナウイルス禍で対象を広げた理由は、感染防止対策とともに「エッセンシャルワーカーである国や自治体が積極的に導入しているから」だった。今年の人事院勧告では、待遇改善や働きやすい労働環境の整備を更に進めるため、初任給を中心とした大幅賃上げのほかに、寒冷地手当の増額や通勤手当の上限額引き上げ、副業・兼業の見直しなど、民間企業にも波及しそうなテーマが数多く盛り込まれた。追随する形で自治体や企業でも関連の見直しが進むことだろう。それは我々メディア業界にも大いに影響を与えてくれると期待している。他力本願で恐縮だが、人事院の皆さまには引き続き、公務員のみならず民間企業のためにも労働条件・就労環境の改善を強力に推し進めてほしい。その時はぜひ、『公務員幸福物語』の原稿で応援したいと思っている。 (みずしま・ゆうすけ) 38

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