人事院月報 2024年10月号 No.902
6/44

ようになった」という効力感が生まれるまでには平均六か月かかると言われています。そのため、必要以上に焦らないという心構えも必要です。一歩一歩、毎日の業務の中で「一つでもできるようになった、前に進んだ」ということに目を向け、改善できる行動があれば「明日から変えてみよう」という柔軟な対応ができると良いでしょう。そのために、受け入れる側の職場は、新規参入者のトライアンドエラーを認め・許されるような雰囲気を作ることで、適応をサポートすることができます。司や同僚との気軽なコミュニケーションができる環境だと、気持ちの負担が減ったという経験はありませんか。職場での人間関係は、メンタルヘルスを良好に保つための資源(リソース)なのです。新しく入った職員は、この資源を持たないので、心の不調やモチベーションが低下するリスクがあります。職場では、コミュニケーションの量と機会を確保し、信頼関係をつくることは必要不可欠です。会話が発生しやすい機会を意図的につくる、上司以外に気軽に相業務量が多い激務の職場であっても、上談できるメンターを付けることなどは職場でできる工夫です。新しく入った職員も、自ら積極的に上司や同僚に働きかけ、人脈と信頼関係を作る努力をすることで、ゆくゆく自分自身を助けてくれる関係性を作ることができます。新しい職員が「自分は役に立てているのだろうか」と不安に感じると、職場になじむスピードが遅くなり、心の負担も大きくなります。上司は、求められる役割と期待を明確に伝え、そのためのステップを早い段階で提示できるとよいでしょう。新しい職場での失敗・つまずきは、学びと成長のチャンスです。「失敗を許さない・させない」という雰囲気よりは、失敗できる環境の中で業務を経験させ、「間違えてしまった」という失敗の報告や「分からない」という援助希求を安心して行える場なのだと学習してもらうことは大事です。失敗を断罪されるような職場では、失敗をごまかすための努力に何時間もかけたり、分からないことを責められるような職場では、自己流で解決しようと何時間もかけたり、非効率な職場になってしまう危険があります。オンライン上での業務は画面越しで、相手の様子がつかみきれなかったり、信頼関係が構築しにくかったりと、新しく入った職員にはやりにくいことも多いかもしれません。特に、「分からないことがあっても気軽に聞けない」というのは新しく入った職員の大きなストレスになっています。上司や同僚と、「不明点があるときには、どのような方法(誰に、いつ、何を使って)で聞いたら良いか?」について、あらかじめ確認しておくことは大事です。また、「これで合っているのか分からなくて不安」ということは本人のストレスにもなりますが、「あの人はうまくできているのだろうか?」という心配は上司のストレスにもなるので、目で見えないテレワークの環境では、最初のうちは中途半端な状態であっても少しずつフィードバックを求めて確認、軌道修正できる機会を持つとよいでしょう。慣れない環境に適応する際には、思った以上に身体的・精神的に疲れるものです。アフター5を楽しむ余裕がなくなったり、上司や同僚のサポートのコツテレワークが多い職場での留意点心の不調のサイン04

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る