人事院月報 2024年12月号 No.904
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今後の展望倫理審査会では、倫理法等施行一〇年をの」へ〜従来、倫理法令違反を防止するための意識啓発としては、してはならないことの知識習得や違反した場合に制裁が科されるといった方向での意識付けを中心に取組を進めてきました。しかし、そもそも、国民からの信頼がなければ行政活動に対して国民の支持を得られるものではありませんので、倫理の保持は行政活動のベースとなるものです。国家公務員が高い倫理感を持って職務を遂行し、国民の信頼を確保することで、より善い行政の実施につながるという意味で、倫理保持の取組を、より価値の高いもの、身を守るための武器とするものと位置付けた取組を進めていきます。倫理法令上の規制に関する検討○ 前述のとおり、令和六年五月に、飲食に関する規制を中心に、倫理規制の運用の見直しを行ったところです。一方で、その他の論点についても各種要望がなされており、明確で説得力のあるルールを目指し、引き続き、倫理審査会として検討を行っていきます。八〇円を切り捨てて精算することを許容することとしました。なお、特定の相手方に繰り返し端数を負担させるなど国民の疑惑や不信を招かないよう、常識の範囲内で対応することとしています。その他、各府省からの要望を踏まえ、贈与等報告書への記載事項などについて取扱いを周知しました。機に、①職員の倫理意識のかん養、②倫理的な組織風土の構築、③倫理法等違反への厳正な対応の三つを課題に据え、様々な取組を進めてきました。これらの取組を進めてきた結果、直近三年以内に倫理研修を受講したという受講者の割合が、平成二一年は六一・九%だったものが、令和五年は九七・九%まで上昇し、近年安定的に高い割合で推移しているほか、倫理月間における各府省の取組も充実が図られています。また、引き続き組織ぐるみや重大事案など悪質な態様の違反が減少傾向にあり、倫理法令の運用が概ね定着しているという状況にあります。一方で、毎年一定数の違反が生じている実情があり、また、倫理規制により行政と民間企業との円滑な意見交換や情報収集に支障が生じているとの指摘もなされています。今後、より実効的な倫理保持の仕組みへ発展させていくため、これまでの三つの柱を維持しつつ、次のような課題に重点的に取り組んでいくこととしています。「単なる知識」から「具体的な場面を意識した知識」へ職員は倫理法令に関する基本的な知識を習得していますが、実際に事業者等が主催する会合に出席する際に確認すべき点として、相手方との利害関係の有無、無償参加の可否、記念品受領の可否、贈与等報告書の要否など様々な観点から具体的場面に対応したルールへの当てはめを行う必要があります。このような具体的な場面を意識した知識の習得を支援するための方策として、会合参加時のチェックツールの提供や、倫理法令違反となりうる具体的事例におけるリスク・問題等について理解を深めることを目的としたケーススタディ教材の作成・配布、利害関係者リストのサンプルの作成・周知などの取組を進め、また、その成果物を研修内容に反映するなど研修の強化も図っていきます。倫理保持に関する新たな価値観の設定・普及〜倫理を「身を守る武器とするも○5○人事院月報 No.904国家公務員倫理審査会の二五年と今後の展望特 集  09

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