ですが、泡盛では米麹だけを使います。なので、他の焼酎に比べて泡盛は米麹由来の香りを感じやすいところがあると思います。――泡盛を担当する鑑定官ならではの苦労はありますか。[渡辺]色々なお酒に共通していることですが、香りや成分についてまだまだ原因物質が何なのか分からないことが多いです。その中でも泡盛は沖縄でしか造られていないので、研究がまだ進んでいない、という面もあります。日本酒やワインでは「甘口」「辛口」といった味の面から説明することができるのですが、泡盛は蒸留酒なので、蒸留で味の成分がなくなってしまいます。それでも様々に違いが出てくるのは、主に香りの成分によるものだと言われているのですが、どのように影響しているのかは、これからの研究で解明が期待されるところです。あとは、度数が高いということがあるので、鑑評会など審査のときは体への負担はあります。市販されているものは三〇度くらいなのですが、鑑評会には三年以上貯蔵させた古酒の部があり、この部では四〇度を超えたお酒が並びます。日によっては五〇点、一〇〇点審査するので、体調を整え宮古といった離島も含め四か所で行っています。――業務で扱うお酒にはどのようなものがあるでしょうか。[渡辺]アルコール一%以上の飲みものがお酒という定義があるので、そういったものを造る場合は全て我々が技術的な面を対応しています。沖縄でいうと、泡盛メーカーが四十数社あるので、数としては泡盛が多いです。最近では、クラフトビールが増えてきました。また、泡盛メーカーの中には多角化の一環でラムやジンを造り始めるところもありますし、全く新規に蒸留酒メーカーを立ち上げるケースもあります。――蔵を回る、臨場技術相談というのはどういう相談なのですか。[渡辺]メーカーの抱える課題などをお聞きした上で、実際に現場にお邪魔して、製造設備だったり、作業の流れだったりを聞きながら、改善点をディスカッションするものです。メーカーによって設備や動線が違うので、泡盛を造る工程は基本的に同じなのですが、例えば、同じ麹を作る工程であっても、メーカーごとに機械が違っていたりとか、サイズが違っていたりとか、そうすると同じようにはできません。お酒造りは温度と水分をコントロールすることが大事なので、実際の現場を見て、動線ややり方などを聞きながら、それぞれに合ったやり方というのを一緒に考えていく必要があります。――泡盛とはどのようなお酒でしょうか。[渡辺]法律上の定義では、米麹と水だけを原料に発酵させ、米麹には黒麹を使っており、単式蒸留機により蒸留したもの、となっています。清酒との大きな違いは蒸留をしていることで、清酒で流通が多いのはアルコール分一五度くらいですが、泡盛だと三〇度くらいあります。また、同じ蒸留酒である米焼酎との違いは、米焼酎は米麹と米を使い二段階で発酵させるのが一般的泡盛はどんなお酒?13人事院月報 No.905解明・成長・醸成―泡盛を解き明かし未来へつなぐ ~沖縄国税事務所 間税課 主任鑑定官を取材しました~インタビュー
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