i人事院月報 No.905オンボーディングの重要性 〜人事部門の果たすべき役割を中心に〜寄 稿いくプロセスのことを意味しています。学術の世界では、オハイオ州立大学のクレイン教授とイースタンケンタッキー大学のポリン准教授が、「新入社員の適応を促進する組織やエージェントによって従事される公式、非公式な訓練、プログラム、政策」とオンボーディングを定義しています。オンボーディングというと、研修がそれに該当すると思う人が多いかもしれませんが、新しく組織に参加してきた個人の円滑な適応をサポートするもの全てがオンボーディングということになります。クレイン教授とポリン准教授は、このオンボーディングに求められる要素として⑴情報を与えるインフォーム行動、⑵迎え入れるウェルカム行動、⑶導くガイド行動の三つの行動を示しています。一つ目の「インフォーム行動」は、新入社員に必要な情報や道具を提供すること、また新入社員の新しい役割や組織について円滑に活動していく方法を学ぶ機会を提供することが該当します。そして、このインフォーム行動は、①コミュニケーション、②リソースの提供、③トレーニングの三つに分けられています。多くが、「組織になじませる力」を身に付けようと力を入れ始めました。官公庁がその流れに乗り遅れることがあれば、優秀な人材を企業にとられ、人材獲得競争の敗者になってしまう危険性も高くなります。官公庁の魅力の低下や人材獲得競争の敗北は、我々日本国民の生活の質の低下にもつながる由々しき問題になりかねないのではないでしょうか。今こそ、官公庁も「組織になじませる力」を身に付けるときなのです。ませる力」が問われる社会問題があります。それが少子化の問題です。少子化は、日本企業の新卒採用活動に大きな問題を投げかけています。内閣府が二〇二二年に公表した「令和四年版高齢社会白書」によると、少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(一五〜六四歳)は一九九五年をピークに減少しており、二〇二一年には七四五〇万人だったものが、二〇五〇年には五二七五万人(二九・二%減)に減少すると見込まれています。生産年齢人口の減少が企業に及ぼす影響も大きく、会社の永続性につながる新卒採用者が乏しくなると、その争奪戦が繰り広げられ、そこで敗転職社会の到来以外にも、「組織になじれた企業は姿を消すことになるでしょう。さらに、うまく採用できたからといってそれで終わりではありません。次は会社に定着してもらうことが求められます。厚生労働省が、新規学卒就職者の就職後三年以内の離職状況について取りまとめた結果、令和二年度における新規学卒就職者の就職後三年以内の離職率は、新規高卒就職者で約四割、新規大卒就職者で約三割と七五三現象と言われる状況はいまだに続いているのが現状です。苦労の末に採用した新卒採用者に早期離職されては、採用コストの回収や技能伝承ができず、会社の永続性も損なわれてしまいます。そのような負の影響を生じさせないためにも、「組織になじませる力」が重要になるのです。ここまで論じてきた新しく組織に入ってきた個人を新しい環境になじませ、パフォーマンスを発揮させる「組織になじませる力」をオンボーディング(On-グとは、船や飛行機に乗っているという意味で、それを会社に例え、新卒採用者であれ、中途採用者であれ、会社という乗り物に新しく加わった個人を、同じ船(会社)の乗組員として、なじませ、一人前にしてboardng)と言います。オンボーディン05
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