いつかは書評を本業にというつもりではいたのですが、忙しかったり、それこそ本が読めなかったりして、想像より早く辞めることにしました。副業をしていると睡眠時間を削らざるを得ないときもあったりするので、一旦整えて健康になりたいというのもありました。―三宅さんは御著書の中で、労働と読書の歴史を振り返りながら、読書が楽しめる世の中にするための提案をされていますね。執筆のきっかけを教えていただけますか。『ファスト教養』という本を執筆されたレジーさんと対談したときに、働いていると本を読めないですよね、という話を、映画『花束みたいな恋をした』の話に触れながらしていたら、そこに反響がありました。本が読めなくなることに悩んでいる人は多いのではないかと思いました。あまりない切り口でしたし、良いのではないかと思い、タイトルと内容を決めました。働いていると本も読めないぐらい忙しくなってしまう理由は何なのかというところを、明治から現代の、労働史と読書史を並べて考えることで、今の働き方を考えるという本になりました。なぜ働いていると本が読めなくなるのか『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆著(集英社新書)―本が読めない時代にもかかわらず、ベストセラーになりましたね。今まで、本を読みたくさせる本というのは、たくさん書かれていたと思います。今回の本は、本を読みたいという気持ちはあるのに、生活とか仕事があって読めない人に、読んでもらえているように思います。単純に読みたい気が起こらないという問題と、何か読みたいんだけど時間の制約上読めないというのは、問題として別なのではないかと思います。後者にアプローチする本というのがこれまであまりなかったのではないでしょうか。―御著書の中で「ノイズ」という概念が出てきますが、これはどのようなものですか。今、仕事をする上で自分がコントロールできる範囲のものとコントロールできない範囲のものを分けて考えるというのはメジャーなやり方だと思います。例えば、会社だったら、数字で測れるものを一旦KPIにして、数字で測れないものは、置いておくというような構造があるのではないでしょうか。そういう在り方が、会社だけではなくて、自分の生き方や生活にも及んで人事院月報 No.906三宅香帆さん ~もっと読書を楽しみませんか――働き方と読書について考える~インタビュー 03
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