環境省は、野生生物の種の保存を任務の一つとしており、佐渡自然保護官事務所では、野生絶滅したトキを再び日本の野生に戻すという事業に取り組んできました。トキを飼育施設で繁殖させ、平成二〇年から毎年佐渡島で放鳥しており、今では佐渡島に野生のトキが推定五〇〇羽以上生息しています。トキの野生復帰には、①環境教育や座談会等を通じて地域住民のトキに対する理解や協力を促す社会環境整備、②環境保全型農業やビオトープ(注)整備によりトキの餌場環境等を創出する生息環境整備、③科学的知見に基づくトキの飼育・放鳥の取組が重要です。そのため、トキの飼育・放鳥だけではなく、餌場となる場所の整備やトキに関する勉強会の開催など、トキと共生するための環境づくりについても、地元の自治体や地域の方々と一緒に取り組んでいます。また、これらの取組の効果を把握するため、トキの観察も毎日行っています。トキには、水田を荒らすということで害獣として駆除された歴史があるため、トキの放鳥を開始した頃は、地域の方々から水田への被害に対する懸念が出ていたと聞いています。当時の担当職員は、地域の方々にトキの野生復帰に向けた取組を理解していただくために、島中を回って地域住民の皆様と膝を突き合わせて話をしていたそうです。このような地道な取組を長年積み重ねた結果、今では地域の方々からはじめに、佐渡自然保護官事務所はどのような業務を行っ― ているのでしょうか。トキと共生するための環境づくりを実現するために工夫さ― れた点や苦労された点があれば教えてください。▲飼育しているトキを確認する様子人事院総裁賞「職域部門」受賞野生絶滅したトキについて、佐渡島内において推定個体数が500羽を超えるなど安定的に生息する状況を実現。地域の理解促進、生息環境の整備、科学的知見に基づく繁殖・放鳥等について、継続して丁寧な調整、対応に努め、日本の自然環境保全に大きく貢献したことが認められました。082025 5月号 人事院月報環境省 関東地方環境事務所佐渡自然保護官事務所トキの「絶滅」から「野生復帰」を実現し、生物多様性に大きく貢献
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