人事院月報 2025年5月号 No.909
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はじめに不祥事を原因として、また、不祥事が起こる兆候として、組織や個人が疲弊する状況を検事、弁護士として数多く見てきました。そのような事態に至らぬよう心掛けるべきことについて、これまでの経験から学んできたことをお話ししたいと思います。倫理保持に対する考え方職業倫理というと、縛られるもの、押し熊田彰英(くまだ 付けられるものといった印象を持つ方も多いと思います。なぜ倫理が必要なのか、大切なのかについて原点に立ち返りながら考えたいと思います。国家公務員は国民全体の奉仕者であり、国全体に関わる仕事、つまり国民生活を支えるための社会、経済、文化等全般に関わる職業です。国家、国民全体を視野に入れた規模感や使命感は、なかなか民間企業にはない職務です。多くの方々はこうした職務に対してやりがいや誇りを感じているのではないでしょうか。その職務を果たすために何が必要かといえば、国民目線で見て公正、公平であるかということであり、公正、公平であることが信頼を受ける源であろうと考えます。信頼がなければいかによい政策を実施しても国民の理解を得ることはできません。広く社会の信頼を得るために必要な要素が、本日のテーマとなっている倫理であると考えます。倫理はこのように根本的なものという捉え方をしていただきたいと思います。また、倫理は縛られるものであるという発想から、自分を守るものであるという意識に転換していただきたいと思います。倫理を根底に備えながら仕事をすれば、対象となる国民の理解や周囲の信頼を得ることあきひで)熊田総合法律事務所代表弁護士 一九九八年に検事任官し、大阪地検、最高検刑事部、東京地検特捜部、法務省刑事局、同大臣官房秘書課、在韓国日本大使館等で勤務。二〇一四年に弁護士登録し、企業・官公庁・自治体の危機管理・不祥事対応・不正調査等に従事している。人事院月報 No.909    人事行政報告国家公務員倫理審査会事務局23 国家公務員倫理審査会では、各府省の職員を対象として、不祥事を起こさない職場風土を確立するための取組やこれからの公務員の在り方について考えるWeb講演を令和6年12月6日に行うとともに、同講演の模様を同年12月から令和7年2月にかけて録画配信しました。 本講演では、講師の熊田総合法律事務所代表弁護士の熊田彰英先生より、「時代と国民に寄り添う国家公務員を目指して」と題して、御自身の貴重な御経験を踏まえてお話しいただきました。令和6年度 倫理に関するWeb講演時代と国民に寄り添う国家公務員を目指して

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