人事院月報 2025年5月号 No.909
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はじめにドイツ連邦議会の質問制度は行政府を統制(監視)するための重要な手段ですが、政府としては、限られた期限の中で対応に苦慮する面もあるようです。(注1)ドイツの議会質問について、「議員からの包括的な情報請求に対して、連邦政府の機能・職務遂行能力の観点から、連邦政府は答弁の範囲、方法、時期について判断する憲法上限定された権利がある」(注2)とされています。これは何を意味するのでしょうか。連邦憲法裁判所の判例から読み解きたいと思います。議会の質問権と政府の答弁義務議会の政府に対する質問権連邦共和国基本法(憲法に相当。以下「基本法」とする。)に明文の規定はありませんが、国民の代表という議員の法的地位(基本法第三八条第一項二文)と民主主義原則(基本法第二〇条第二項二文)から導かれるとされ、連邦議会規則で具体的な手続を定めています。そして、民主主義原則に基づく政府の議会に対する責任として、(m2025 5月号 人事院月報 itzumutbarem政府には答弁する義務があるとされています。(注3)政府の側は、この義務を果たすために、持っている又は許容し得る労力・費用ての情報を提供することとされ、また、情報収集に当たっては、利用可能なあらゆる手段を用いることとされています。国民の側からすると、議会の質問と政府の答弁が公開されることにより、議会を介して政府を統制(行政を監視)することができ、また、質問制度を通じて得られる情報は、議会や政府の決定等について考える上での判断材料となり、政治的意思形成への参画が可能となります。(注4)連邦議会の質問制度次に、具体的な質問制度について見ていきます。ドイツ連邦議会の質問制度は口頭質問と書面質問に大別され、通告の有無や質問の内容、答弁の期限や提出ルールなどにより、それぞれ二〜三種類に分かれます。具体的には、口頭質問は、各議員が事前通告なしで時事的な問題について質問する対政府質問と、事前通告した上で政府に口頭での答弁を求める質問時間の二種類(注5)、Aufwand)で調べられる全について、ドイツ(ParlFragerecht)amen-tarisches研究ノート国際課主任国際研究官 越石 圭子26 ドイツ連邦議会議員・会派が政府に質問し、情報を得る権利と、政府の答弁する義務には限度があるとされています。連邦憲法裁判所の判例に基づく判断基準と保護されるべき政府の利益に着目しながら、質問制度をめぐる実態を探ります。ドイツ連邦議会の質問制度とその実態

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