質問権と政府答弁義務の範囲前述のように、議員・会派が政府に質問し、情報を得る権利に対し、政府には答弁する義務がありますが、この権利と義務には限度があり、連邦憲法裁判所の判例で、その限度・範囲を決定する判断基準と保護されるべき政府の利益が示されています。そして、この判断基準に照らして政府が情報提供を拒否するに当たっては、個々のケースにおける相反する利益の衡量、決定の実質的な正当化、拒否理由の後付けの不許可性の三つの要素が不可欠とされています。(注8)主な判断基準を列挙すると、以下のとおりです。①許容し得る労力・費用で情報を入手できるか否か。ただし、連邦政府はその根拠を具体的に示す必要があり、例えば、公文書の廃棄義務により当該文書が存在しないことへの言及だけでは、許容し得る労力・費用で情報を入手できないことの立証にはならないとされています。(注9)②議員の職と関係のある質問か否かという観点から、十分に重要な公益性のある質問であるか、質問が「行政の過剰統制ではなく、政治的統制」であるか。(注10)00がE2025 5月号 人事院月報 exekutiverigen-(Staatswoh(Kernbereich③連邦政府の責任の範囲の質問か否か。例えば、州政府の責任範囲に関する質問に対しては、連邦政府に答弁義務はありません。(注11)④行政府が責任を有する中核的な領域つまり、政府単独の所轄事項の決定について、情報を提供することによって第三者の共同統治につながる可能性という観点。ここから、政府統制の質問が及ぶのは、手続が完結した・決定された案件についてのみで、意思形成の途中段階の案件には及ばないとされています。(注12)⑤議会及び国民に対する連邦政府の説明責任は、連邦政府が基本法で定められたその任務を適切に遂行できることの保証を前提としていること。例えば、情報を提供することによって、連邦政府の外交・安全保障政策上の行為能力が損なわれる場合が、拒否できる例として考えられます。(注13)⑥秘密保持の要否、明らかになることによって連邦や州の安寧脅かされるか否か。ただし、二〇一七年に、国家の安寧には連邦議会も責任を有しているため、政府と議会の双方が職務verantwortung)に関する質問か否か。l)グラフ2口頭・書面質問件数の推移グラフ1大・小質問件数の推移11,677 大質問小質問3,629 3,299 3,953 797 63 65 54 15 35 25,671 20,141 12,789 11,069 14,012 6,057 5,150 2,515 2,703 3,119 12,00010,0008,0006,0004,0002,070 2,0001,382 1,813 98 156 101 30,000口頭質問25,000書面質問20,00016,661 14,905 15,00011,838 10,0004,160 3,540 5,0003,229 Das Datenhandbuch des Bundestages, 11.4 Oppositionelles Verhaltenを基に筆者作成 28
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