国際課主任国際研究官金森貴嗣研究ノート米国トランプ政権の連邦政府職員に関する施策をめぐる状況について米国連邦政府の行政府(郵政公社を除大統領令を受けて、連邦政府職員の人事《政治任用の拡大》く)には約二二五万人の職員がいますが、そのうち政権交代に伴い異動する政治任用の職員は約四、〇〇〇人です。新政権が発足した一月二〇日、連邦政府職員政策の説明責任の回復に関する大統領令が発令され、政策立案・策定・支持形成等の職務に当たる官職に新たな分類を設けました。具体的には、従来は競争試験により任用される競争職と分類され職業公務員が就いていた官職を、任用における競争要件がない除外職へ分類を変えることで、その官職にいる職員の免職手続が容易となり、大統領に忠実な政治任用者を後任とすることができます。管理施策を所管する人事管理庁(OPM)は、新分類に該当する官職の一覧を四月二〇日までに提出するよう、各政府機関に指示しました。《多様性・平等・包摂(DEI)推進策の撤回》前政権では連邦政府機関におけるDEI推進策が実施されてきましたが、政府機関にDEI推進策の即時停止を命じる新しい大統領令が一月二〇日に発令されました。大統領令では、DEI推進は能力主義に反して差別と無駄な歳出を生むもので、全ての人を平等に取り扱い米国を偉大にするためだけに貴重な税源を使うべき、とされています。《上級管理職(SES)の任用手続の改定》説明責任の回復に関して一月二〇日に出された大統領覚書では、部下の職員を免職する大統領の権限は合衆国憲法第二条で大統領に付与された行政に関する権能の核心的部分であり、連邦政府の幹部職員である上級管理職(SES)は政府の重大な権限を行使するので大統領の意思に従って職務に従事しなければならず、行政部内における検討状況を許可なく開示する者には責任を取らせる、としています。その上で、各政府機関におけるSESの任用に関する手続に政治任用者がより関与するよう命じました。《リモートワークの停止》米国連邦政府では一九九〇年代からテレワークの推進に取り組んでおり、特にコロナ禍以降は各機関で広くテレワークが認められてきました。一月二○日、この政府機関でのリモートワークを停止し、職員をフルタイムで実際に出勤させるよう必要な措置を講じることを求める大統領覚書が出されました。これを受けたOPMの通達では、ほぼ制限なくテレワークを認めてきたことは行政サービスの低下や職員の管理や訓練を難しくしており、職員を完全に職場で勤務させることが効率性と説明責任を果たすために必要として、障害者や治療中の者など一部の例外を除き、現在テレワークを行っている職員を職場に完全に復帰させる目標日を定めるよう求めました。米国では、一月二〇日のトランプ大統領就任後、連邦政府職員に大きな影響を及ぼす施策がとられています。その中で主なものを御紹介します。2025 5月号 人事院月報 32
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