四人事院月報 No.909平均給与額計算支援ツール「ダブリューさん」の開発を振り返ってコラム 三 ダブリューさんの開発を通じて重要だと感じたこと今回、前例にない業務用ツールをゼロから作成するという貴重な経験をさせていただきましたが、この経験を通じて、前例にないことを実現するために重要だと感じたことが二点あります。それは、「①割り切ること」、「②疑い、挑戦すること」です。①について、ダブリューさんは、全ての平均給与額の計算を行えるわけではありません。Excelのレイアウトや技術的な問題からどうしても計算できない事例も一部あり、おそらく全体の九割程度の案件しかカバーできていません。しかし、ここで「九割しかカバーできないからツールとして意味がない」と考えるのではなく、「九割カバーできることに意味がある」と割り切り、計算の「支援」ツールとして各府省等に配付しました。物事を実現するためには時に「割り切り」が必要であると実感できました。②については、「現状できていないから実現ができない」と思考するのではなく、現状を疑い、チャレンジすることが非常に重要であると考えます。実際、平均給与額(国家公務員災害補償制度)は七〇年以上の歴史がありますが、これまで補償課においてはExcelツールの開発は実現してきませんでした。この点について、「これまで七〇年間できていなかったから無理だ」と捉えるのではなく、なぜできないのかという原因を突き詰め、できるのではないかと疑い、そして挑戦すれば、意外といろいろなことができるのではないかという気がしました。また、その挑戦を否定しない職場文化も重要です。その意味で、人事院が若手も「自由に異見を述べられる」風通しが良い職場だからこそ、開発が実現できたのではないでしょうか。おわりにダブリューさんは、国家公務員制度ナレッジベース(SEDO)から入手することが可能です。各府省等の御担当者の方はぜひ御利用ください。(きない・だいすけ)期間は約一か月足らずしかありませんでしたが、インターネットで関数を調べつつ、手探りでゼロから作っていきました。「ミスのないツールにする」ことでした。仮に、致命的な誤りのあるツールを一度各府省等に配付してしまうと、各府省等において平均給与額の計算に何百件ものミスが生じてしまう可能性があります。Excelの計算はミスをしないのですが、その関数を組む人間はいくらでもミスをしてしまいますので、試作版が完成したあと、それが問題なく機能するかを確認することは大変重要です。しかし、私一人で確認することには限界があったので、上司の皆様には様々なパターンの平均給与額をこのツールを使って計算してもらい、ミスなく機能しているかどうかを確かめていただきました。このように上司から多大な御協力を頂き、なんとかツールを作成することができました(また、上司には他にも「ダブリューさん」のマスコットキャラクター「ダブ龍」の作成を始め、様々な御支援を頂きました。採用二年目の職員の企画を頭ごなしに否定するどころか、多方面から助けていただき、とても有り難かったです。)開発に当たって最も大変だった点が、35
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